共有名義の家賃を独り占めされた時の3つの対策と注意点を徹底解説

「家賃収入が入っているはずなのに、自分には一切振り込まれない」
「通帳を見せてほしいと頼んでも、はぐらかされてしまう」

と悩んでいませんか?

このページでは、共有名義の家賃を独占された場合の対策について、プロが分かりやすくご案内します。

このページのポイント
  1. 家賃は原則として持分割合に応じて受け取る権利がある
  2. 分配されなかった家賃は、あなたが取り戻す方法がある
  3. 対策は①話し合う、②持分を売却する、③弁護士に依頼するの3通り

この記事の作成者

専門相談員 康原 工偉智Koichi Yasuhara

共有持分支援協会の代表相談員
大阪府出身。プロ野球選手を夢見て、名門PL学園から亜細亜大学に進学。度重なるケガでプロの夢を諦めるも、大手不動産会社に就職。持ち前のバイタリティで営業成績もトップクラスを誇る。共有持分を買取る投資家、不動産業者とのパイプも太い。

共有名義の家賃、独占されている理由

根本的な理由は、共有者間の仲が悪く、信頼関係がないからです。


専門相談員
康原(やすはら)
円満な間柄であれば、独占という状況自体が起きにくいです。

関係がこじれていると次のような状態になります。

  • 共有者の1人が暴走する
  • 運用のルールが無い

暴走とは、他の共有者に相談せず、一人の判断が家賃を独占したり、不当に低い金額を分配していたりすることです。


康原
問い詰めるとはぐらかされたり、先延ばしにされたり、連絡が取れなくなったりすることがあります。

問題がない共有者の間では、次のようなルールが設けられ、キチンと運用されています。

  • 誰が家賃を受け取るか
  • いつどの頻度で分配するか
  • 固定資産税や経費をどう精算するか
  • 通帳や契約書をどう共有するか

共有者は共有不動産の家賃を持分に応じて受け取る権利がある

共有不動産を第三者に貸して得た家賃は、共有者間に別段の合意がない限り、原則として各共有者に持分割合に応じて帰属します。

民法249条で「各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる」と規定されています。

第二百四十九条「共有物の使用」

各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。

また、民法206条は所有者に使用・収益・処分の権利を認めています。

第二百六条「所有権の内容」

所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。

家賃を受け取った共有者が、必要経費を精算せず、他の共有者に帰属する分まで保持している場合は、持分相当額の返還義務が生じる可能性があります。


康原
管理費、修繕費、固定資産税などを差し引く合意があるケースもあるため、一律に「違法」とは言い切れません。

まずは実際の収支を確認することが大切です。

家賃の管理方法は、民法252条で「共有者の持分価格の過半数で決める」と規定されています。

第二百五十二条「共有物の管理」

共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。

管理者は、修繕の手配や一定の賃貸借契約など、共有物の管理に関する事実行為・法律行為を行える場合があります。

ただし、管理者であることだけを理由に、家賃を自分のものにできるわけではありません。

共有名義の家賃についての2つの注意点

2つの注意点
  1. 滞納された家賃の請求には時効がある
  2. 家賃を受け取っていないのに確定申告をする必要がある

それぞれ詳しくご案内します。

滞納された家賃の請求には時効がある

時間が経過すると、古い家賃から順番に時効を迎えます。

請求や交渉をしないまま放置すれば、5年を過ぎた月分から順に回収できなくなりますので、早めにご確認ください。

家賃を請求する権利は、民法166条で次のように規定されています。

第百六十六条「債権等の消滅時効」

債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

請求できることを知った時から5年、または請求できる時から10年、いずれか早い方で時効となります。

先ほどもご案内したように、毎月発生する家賃については、原則として各月分ごとに時効が進行します。

民法150条では、配達証明付き内容証明郵便などで支払いを催告すると、その時から6か月間、時効の完成が猶予されると規定されています。

第百五十条「催告による時効の完成猶予」

催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

ただし、時効がリセットされるわけではなく、猶予期間中に再度催告しても、さらに6か月延長されることはありません。


康原
ですので、猶予されている6か月以内に、訴訟などの手続きを検討する必要があります。

②家賃を受け取っていないのに確定申告をする必要がある

他の共有者が家賃をすべて受け取っていても、税務上は持分割合に応じた不動産所得があなたにあると判断される場合があります。

特に相続した賃貸不動産が未分割の場合は、特定の相続人が家賃を管理していても、原則として各相続人が法定相続分に応じて申告します。

家賃を受け取っていないことを理由に申告しないままでいると、申告漏れになるリスクがあります。


康原
家賃を受け取れていない場合でも確定申告が必要になることがあります。

税理士や税務署に確認してください。

共有名義の家賃を独り占めされた時の対策は3つあります。

  1. 話し合う
  2. 自分の持分を売却する
  3. 弁護士に依頼する

詳しくご案内します。

【対策①】共有者同士で話し合いをする

相手と連絡が取れる場合は、まず話し合いを検討してください。

最初に収支の情報を共有する必要があります。

  • 賃貸借契約書
  • 入居者別の家賃額
  • 入金履歴
  • 管理会社の収支報告書
  • 固定資産税・火災保険料・修繕費・管理委託料の領収書
  • 空室期間や滞納額の記録

そのうえで、実際に受け取った家賃から適正な経費を差し引き、持分割合に応じた精算額を計算してください。

固定資産税や修繕費など、共有者全員が本来負担すべき費用については、民法253条で「各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う」と規定されています。

第二百五十三条「共有物に関する負担」

各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。

話し合いに応じない場合は、内容証明郵便で正式に請求内容を通知してください。

後日、調停や訴訟に進んだ際に「いつ、どんな内容で請求したか」を示す証拠にすることができます。


康原
トラブルになっている時点で、相手との関係はすでに悪化していることがほとんどです。

話し合いだけで解決しない場合は、次の対策もご検討ください。

【対策②】自分の共有持分を売却する

相手との関係を続けたくない場合は、あなたが所有している共有持分の売却をご検討ください。

  • 共有持分(きょうゆうもちぶん)…一つの不動産を複数人で所有するとき、各人が持つ所有の割合のこと

売却前に発生している家賃の返還請求権については、持分売却とは別に請求を検討できます。

メリットは次の通りです。

  • 他の共有者と交渉せずに済む
  • 共有関係から抜けられる

持分だけの売却であれば、他の共有者の同意は必要ありません。

根拠は民法206条です。

デメリットは次の通りです。

  • 市場価格より安い
  • 今後の家賃収入は得られなくなる

共有持分の買取価格が、単独所有と仮定した持分相当額の30〜50%程度です。

物件の立地、持分割合、占有者、抵当権、共有者との関係などにって、%が決まります。

【計算例】

不動産全体の評価額9,000万円、持分2分の1の場合、単純な持分相当額は4,500万円です。

仮に、その30〜50%で評価された場合、買取価格の目安は1,350万円〜2,250万円になります。


康原
賃貸アパートなどの場合は、収益還元法で算出された査定額を参考にすることもあります。
収益還元法(しゅうえきかんげんほう)とは?
    賃貸アパートなどの不動産が将来生み出す収益をもとに不動産の価格を算出する手法のことで、算出の式は次の通りです。

    ■不動産価格 = 年間純収益 ÷ 還元利回り

    還元利回りとは、立地や築年数、周辺の取引事例をもとに判断される年間の収益率のことです。

    例えば、家賃7.5万円の部屋が10戸あるアパートの場合、年間の家賃収入は900万円ですが、管理費や修繕費、固定資産税などの費用を引くと年間純収益は675万円です。

    還元利回りが10%なら不動産の評価額は6,750万円で、持分が2分の1なら3,375万円です。

    持分の買取業者は、この評価額を参考に、共有者の状況などを踏まえて買取金額を提示します。

持分を売却すれば権利がなくなりますので、今後の家賃収入は得られなくなります。


康原
継続的な家賃収入がある物件を手放すのはもったいないです。

ただ、多くの人は、関係修復よりも関係を断つことを希望されます。

【対策③】共有持分に強い弁護士に依頼する

弁護士に依頼して、不当利得返還請求をする方法です。

用語解説:不当利得返還請求

法律上の正当な理由がないのに、他人の損失によって利益を得ている人に対し、その利益を返すよう求める権利のことです。

該当する法律は民法703条です。

第七百三条「不当利得の返還義務」

法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

弁護士の探し方は複数あります。

相続の際にお世話になった司法書士に相談し、そこから弁護士を紹介してもらう方もいます。

共有名義のトラブルに対応できる弁護士を、自分で探して依頼する方も増えています。


康原
最近は共有持分でトラブルになるケースが増えており、対応できる弁護士も増えてきています。

当協会でも専門性の高い弁護士をご案内することができます。

この方法のメリットは次の通りです。

  • 証拠収集の支援を受けられる
  • 法的手続きを代行してもらえる

手元に通帳や契約書がなくても、請求できる可能性はあります。

管理会社や入居者からの情報で立証するケースもあります。

弁護士は、相手方、管理会社、入居者などへの照会や、弁護士会照会、訴訟上の証拠収集手続きなどを、あなたの状況に応じて検討します。

用語解説:弁護士会照会(べんごしかいしょうかい)

弁護士法23条の2に基づき、弁護士が所属する弁護士会を通じて、金融機関や会社などに対して必要な情報の開示を求められる制度のことです。


康原
ただし、照会先が必ず開示に応じるとは限りません。

最終的には持分、家賃額、入金状況、必要経費などを証拠によって明らかにする必要があります。

入居者や管理会社に賃貸借契約や家賃額について照会することはできますが、個人からの請求には応じてもらえない場合があります。

この方法のデメリットは次の通りです。

  • 弁護士費用がかかる
  • 解決まで時間がかかる場合がある

弁護士に依頼した場合、まず相手方との交渉を行います。

流れは次の通りです。

  • 弁護士から請求書を送る
  • 相手方と交渉する
  • 民事調停を申し立てる
  • 支払督促を申し立てる
  • 直接、民事訴訟を提起する

調停とは、裁判所の調停委員を交えて、あなたと相手との話し合いを進めることです。


康原
相手が家賃の受領自体を否定している場合や、時効が迫っている場合などは、民事調停を経ずに訴訟を提起することもあります。

訴訟の途中で和解することもあります。


康原
将来分の家賃について、継続的な給付を命じる判決が認められない場合もあります。

「依頼すれば今後の家賃収入も確保できる」とは言い切れません。

今後の家賃については、次のようなルール作りをしたうえで、継続的な運用をする必要があります。

  • 管理方法や振込先を共有者間で決める
  • 管理会社から収支報告を受ける仕組みを作る

まとめ

対策は3つあります。

相手と連絡が取れる場合は、まず話し合いを検討してください。

話し合いでは進展しない場合は、次の2つの方法をご検討ください。

  • 今後は共有者と関わりたくない⇒共有持分だけを売却する
  • 今後も家賃収入が欲しい⇒弁護士に相談する