兄弟が共有名義で相続するメリット・デメリット&トラブル事例を解説!

「兄弟が共有名義で相続するメリットデメリットは?」
「兄弟で共有すると、トラブルになる?」

このように考えていませんか?

この記事では、兄弟が共有名義で相続した場合のメリット・デメリットを、プロが分かりやすくご案内しています。

この記事の作成者

専門相談員 康原 工偉智Koichi Yasuhara

共有持分支援協会の代表相談員
大阪府出身。プロ野球選手を夢見て、名門PL学園から亜細亜大学に進学。度重なるケガでプロの夢を諦めるも、大手不動産会社に就職。持ち前のバイタリティで営業成績もトップクラスを誇る。共有持分を買取る投資家、不動産業者とのパイプも太い。

兄弟が共有名義で相続する4つのメリット

まず「兄弟が共有名義で相続する」とは、親の不動産を、複数の兄弟(姉妹)で共有名義で相続することです。

例えば、親が亡くなり、2人の子どもが実家を共有名義で相続するといったことです。


専門相談員
康原(やすはら)
そのメリットは次の通りです。
4つのメリット
  1. 公平な遺産分割ができる
  2. 不動産の維持費・管理費を分担できる
  3. 収益物件の場合は利益を分配できる
  4. 売却時に特別控除を受けられる可能性がある

それぞれご案内します。

【メリット①】公平な遺産分割ができる

不動産は物理的に分けることができません。

ですが、その所有権を「持分」という形で平等に分割することができます。

例えば、兄と弟の2人が4,000万円の価値がある実家を相続する場合、それぞれが2分の1ずつの持分(2,000万円相当)を所有するといったことです。


康原
相続で不平・不満が出ないように、他の財産と不動産の持分割合で調整することができます。

【メリット②】不動産の維持費・管理費を分担できる

固定資産税や修繕費用といった不動産の維持費は、持分割合に応じて共有者が負担することが、民法253条の1項目で規定されています。

第二百五十三条「共有物に関する負担」
    各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う

例えば、年間16万円の固定資産税がかかる物件を2人で共有していれば、1人あたりの負担は8万円で済みます。

連帯納付義務があるということです。


康原
実際には、代表者1名に市町村から固定資産税の納付書が届きます。

【メリット③】収益物件の場合は利益を分配できる

収益物件から得られる家賃収入も、持分に応じて分配することが、民法249条の2項で規定されています。

第二百四十九条「共有物の使用」の第二項
    共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。

例えば、兄弟3人が均等の持分(3分の1ずつ)で共有している賃貸アパートがあり、賃貸収入が月30万円なら、それぞれ毎月10万円の収入を得られるということです。

【メリット④】売却時に節税できる可能性がある

特定の要件を満たせば、売却時に共有者全員が「居住用財産の3,000万円特別控除」を利用できます。

兄弟2人がその家に住んでいるなら、それぞれ3,000万円まで非課税になる可能性が高いです。

例えば、兄弟が2分の1ずつの持分で相続した共有名義の戸建を6,000万円で売却した場合、譲渡所得税はかからないということです。

譲渡所属税の税率は20.315% か 39.63%と高いので、控除は適用したいところです。


康原
ただし、特例の適用には、「2人とも住んでいること」以外にも、細かな要件がありますので、事前に税理士へご相談ください。

兄弟が共有名義で相続する3つのデメリット

3つのデメリット
  1. 管理や処分が自由にできない
  2. 兄弟間で意見が対立しやすい
  3. 片方が亡くなると権利関係が複雑になる

それぞれご案内します。

【デメリット①】管理や処分が自由にできない

共有名義の不動産の変更行為や管理行為には、共有者の同意が必要です。

「変更行為」には共有者全員の同意、「管理行為」には持分の過半数の同意が必要と、民法で規定されています。

行為(該当の民法) 必要な同意
変更(民法251条 売却、建物の建替、取り壊し、抵当権の設定など 共有者全員の同意
管理(民法252条 修繕、賃貸化など 持分の過半数の同意
保存(民法252条の5項 緊急の補修、簡単な掃除 単独でできる

例えば、三人兄弟で共有している不動産の全体を売却する場合は、「変更」行為に該当しますので、3人全員の同意が必要です。

1人でも反対すれば、売却手続きは進められません


康原
ただし、自分の持分だけならば売却することができます。

詳しくは「共有持分は売却できる?できない?」でご確認ください。

【デメリット②】兄弟間で意見が対立しやすい

共有している不動産の活用についての考え方が、兄弟間で異なる場合、対立することがあります。

例えば、兄は「すぐに現金化したい」、弟は「住み続けたい」という場合、利害が一致しないため対立します。


康原
このようなケースでは、話合いをすればするほど、関係が悪化することが多いです。

【デメリット③】片方が亡くなると権利関係が複雑になる

兄弟のどちらかが亡くなると、その人の持分が配偶者や子どもに相続されます。

例えば、兄弟2人が2分の1ずつ共有していた実家がある状態で兄が亡くなったら、兄の配偶者と子供2人に細分化され、合計4人の共有になります。

売却などの変更行為には全員の同意が必要ですし、修繕するには持分の半分以上が必要です。


康原
関わる人間が増えるほど、やり取りに時間がかかりますし、揉めやすくなります

兄弟が共有名義で相続した時のトラブル事例

トラブル事例
  1. 不動産の活用で揉める
  2. 維持費の支払いで関係が悪化する
  3. 自分の家族もトラブルに巻き込まれる

それぞれご案内します。

【トラブル①】不動産の活用で揉める

理由は不動産の売却や活用を巡って意見が衝突し、意見がまとまらないからです。

例えば、兄、弟、妹で実家を共有名義で相続した際、兄は「売却したい」が弟は「賃貸したい」、妹が「住み続けたい」といった場合は、不動産の処分が進みません。

話せば話すほど、感情的な対立し、溝が深まってしまいます。

【トラブル②】維持費の支払いで関係が悪化する

理由は、負担の偏りから不公平感が生じやすいからです。

共有者の1人が経済的な事情などで支払いをしない場合は、他の共有者が立て替えざるを得なくなります。

例えば、兄と弟で共有する不動産の固定資産税14万円があるのに、弟が持分相当の7万円を支払わず、兄が立て替え続けると、関係が悪化していきます

【トラブル③】自分の家族もトラブルに巻き込まれる

将来、関わる人間が増えると、次のようなことで揉めることがあります。

  • 面識のない親族と交渉する
  • 利用してない不動産の固定資産税や修繕費を負担する
  • 売却や修繕、賃貸などができない
【ケース】自分の家族もトラブルに巻き込まれる
    兄弟2人が実家を持分2分の1ずつの共有名義で相続した。

    その10年後、弟が亡くなり、その妻と子ども3人が相続した結果、共有者が5人に増えた。

    兄も高齢で判断能力が低下し、その子どもたちが代わりに対応することになった。

    全員の意見調整や書類のやり取りに追われ、
    「親の問題なのに、なぜ対応しないといけないのか」
    「使ってないのに税金払えって言ってるんだけど…」
    「あの対応の仕方は無いのでは?」

    などと、不満が出るようになった。

相続前に共有名義を回避する4つの方法

4つの回避方法
  1. 親に遺言書を作成してもらう
  2. 兄弟間で事前に合意書を作成しておく
  3. 家族信託を活用する
  4. 生前贈与する

詳しくご案内します。

【方法①】親に遺言書を作成してもらう

遺言書で不動産の取得者を明確に指定しておけば、相続発生後に相続人同士で協議する必要がなくなり、共有名義での相続を回避できます。

例えば「実家の不動産は長男に、その代償として次男には預貯金から3,000万円を渡す」と記載すれば、共有状態を回避できます。


康原
次男に現金を渡すのは、相続による公平性を保つためです。

これを代償分割(だいしょうぶんかつ)といいます。

【方法②】兄弟間で事前に合意書を作成しておく

家族全員が冷静に話し合える関係性があれば、それぞれの希望や事情を共有した上で文書化しておくと、後で覆しづらいです。

例えば「実家は長男が相続して、代わり次男には預貯金を多めに配分する」といった方針を文書化しておけば、相続時にスムーズに手続きが進みます。

ただし、この合意書自体に法的拘束力はありませんので、より確実なものにするには遺言書の作成をご検討ください。


康原
弁護士や司法書士などの専門家に相談することをご検討ください。

【方法③】家族信託を活用する

家族信託とは、委託者(親)が受託者(兄 or 弟)に不動産等の管理・処分権限を託し、受益者(親や他の家族)が利益を受け取る仕組みのことです。

不動産の管理権限をあらかじめ決められるため、相続時に共有状態を避けやすいです。

例えば、親が「自分が亡くなった後も長男が不動産を管理し、最終的には孫に引き継ぐ」と信託契約で定めておけば、親が亡くなった際に他の相続人(弟 or 兄など)と共有名義にせずに不動産を引き継げます。


康原
弁護士や司法書士などの専門家にご相談ください。

【方法④】生前贈与する

生前贈与とは、親が生きているうちに不動産を特定の相続人(兄 or 弟)に無償で与えることです。

相続前に所有権を移転させることで、他の相続人(弟 or 兄)と共有名義になることを避けられます。

例えば、親が「実家は長男に住み続けてほしい」と考え、生前に長男へ単独名義で不動産を贈与するといったことです。


康原
この場合、注意点が2つあります。
  • 贈与税が発生する
  • 遺留分への配慮をする

遺留分とは、法律で保障された「最低限もらえる相続分」のことで、原則として法定相続分の半分です。

例えば、父が生前に長男へ3,000万円の自宅を贈与したら、次男の法定相続分は1,500万円ですので、遺留分として現金で750万円を次男に渡すといったことをします。

相続後に共有名義を解消する7つの方法

7つの解消方法
  1. 兄弟全員で合意して不動産を売却する
  2. 自分の持分を第三者に売却する
  3. 兄弟で持分を売買する
  4. 共有物分割協議で話し合う
  5. 土地だけの場合は分筆する
  6. 自分の持分を譲渡する
  7. 自分の持分を放棄する

それぞれご案内します。

①兄弟全員で合意して不動産を売却する

共有者全員が合意すれば、共有名義のまま売却できます。

例えば、不動産会社を通じて5,000万円で売却できた場合、持分が2分の1ずつなら、兄弟がそれぞれ2,500万円を手にすることができます。

②自分の持分を第三者に売却する

自分の持分だけなら、他の共有者の同意なしに自由に売却できることが、民法206条で規定されています。

第二百六条「所有権の内容」
    所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。

共有持分専門の買取業者を探して売却すれば、最短数日で現金化できます。

買取業者の目的は、利益最大化のために、全ての持分を買取って、リフォームをして売却することですので、残りの共有者(兄 or 弟)は「持分を売ってください」という営業を受けます。


康原
詳しくは「共有持分の買取業者の目的はなんですか?」でご確認ください。

③兄弟で持分を売買する

兄弟間で持分を売買すれば、不動産を買い取った1人の単独名義になります。

単独名義になれば、リフォームや売却など判断を単独でできます。

ただし、買い取る側にまとまった資金が必要です。

④共有物分割協議で話し合う

共有物分割協議とは、複数人で所有している共有物(不動産など)の共有状態を解消して、それぞれの持分に応じて分割する方法を話し合って決める手続きのことです。

民法256条などに規定されています。

分割方法は3つあります。

  • 現物分割…土地を物理的に分ける(分筆する)
  • 代償分割…1人が不動産を取得し、他の共有者に代償金を支払う
  • 換価分割(かんかぶんかつ)…不動産を売却し、売却代金を持分に応じて分ける

兄弟のうちどちらかが住み続ける場合は、代償分割で単独名義にすることを検討することになりますが、相応の費用が必要です。

話合いが成立しない場合は、共有物分割請求訴訟をします。

裁判所に分割方法を決定してもらい、その判決に沿って分割をします。


康原
より詳しくはこちらの「共有物分割請求訴訟とは?」でご確認いただけます。

⑤土地だけの場合は分筆する

分筆とは、一つの土地を複数の土地に分割することです。

分筆後の土地は単独名義ですので、各自が自分の土地を自由に管理・処分できるようになります。

例えば、200坪の共有土地を兄弟2人で共有している場合、100坪ずつの2つの土地に分筆し、それぞれが単独で所有するといったことです。

⑥自分の持分を譲渡する

自分の持分を無償で他の兄弟に譲ることで、共有名義を解消できます。

例えば「不動産に興味がない」「兄弟に任せたい」と考えている場合、無償で譲渡すれば、自分は共有関係から完全に離れられます。

ただし、贈与税は受け取る側が支払います

⑦自分の持分を放棄する

共有者が持分を放棄した場合、その持分は、他の共有者の持分割合に応じて帰属すると、民法255条で定められていまです。

第二百五十五条「持分の放棄及び共有者の死亡」
    共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。

例えば、兄と弟で2分の1ずつ共有している不動産がある状態で、弟が持分を放棄すれば、弟の持分は全て兄に帰属し兄の単独名義となります。

持分の放棄をすることで、人間関係や費用負担などから解放されますが、何の対価も得られません


康原
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まとめ

兄弟が共有名義で相続することには、メリットやデメリットがあります。

それを踏まえてどうするかをご検討ください。

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共有持分が専門の社団法人
親身に対応いたしております

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