共有名義の不動産を売却するときは、複数の持分をまとめて移転するために手続きや税金の仕組みが複雑になりがちです。スムーズに進めるには、必要な税知識と売却のステップを理解することが大切です。さらに、共有名義のメリットやデメリットを知りながら、不動産会社の選び方を押さえると失敗を防ぐことにつながります。
共有者間での話し合いや専門家への相談をうまく活用して、スムーズかつ公平に手続きを進められるように、ここで紹介するポイントをぜひ参考にしてみてください。
共有名義の不動産売却に関わる税金
共有名義の不動産を売却すると、譲渡所得税や印紙税など、さまざまな税金が関係します。どれも大切なポイントなので、理屈をおさえてから手続きに臨むとスムーズです。
印紙税のポイント
不動産を売買するときに取り交わす契約書には、印紙を貼って納める「印紙税」がかかります。売買金額に応じて印紙税の額が変わる仕組みで、例えば売買価格が高額になるほど印紙税も上がります。令和9年3月末までの間は一定の軽減措置があるため、場合によっては通常よりも安い金額で済むこともあります。
契約書を作成する際、売買金額がいくらか、そして軽減税率の対象になるかどうかをチェックすることが大切です。共有名義不動産の売買であっても、印紙税の取り扱いは通常の不動産契約とほぼ同じです。印紙税は実際に契約書に貼って納付するため、事前に用意しておかないと契約日に慌てることになりかねません。
登録免許税と抵当権抹消
不動産の名義変更や共有持分の移転登記には「登録免許税」が必要です。登録免許税は法律で定められており、所有権移転のときには、不動産の固定資産評価額や課税標準をもとに計算されます。また、売却でローンを完済するなら「抵当権抹消登記」が必要になることがあります。抵当権抹消登記は不動産1つにつき1,000円程度で済むとされています。
共有名義の不動産を売却するときは、共有者全員の了承を得てから必要な登記を進める流れです。どの範囲まで共有者が費用を出し合うかは、あらかじめ話し合って決めておくのがおすすめです。折半にするケースもあれば、特定の共有者が多めに負担するといった取り決めをする場合もあります。
譲渡所得税と住民税
不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、課税対象となるのが「譲渡所得税」と「住民税」です。譲渡所得は売却金額から取得費や譲渡費用などを差し引いて求めます。たとえば、不動産を購入したときの代金や仲介手数料、リフォーム費用などを取得費に含めることができます。もし取得費がわからなければ売買価格の5%を取得費として計算する方法も認められています。
また、売却時にかかった仲介手数料や建物解体費用などは「譲渡費用」に含める場合があります。細かい判断が必要なので、国税庁の情報や税理士への相談を活用すると安心です。
長期・短期の税率の違い
譲渡所得税・住民税は、不動産の所有期間が5年を超えているかどうかで税率が変わります。売却する年の1月1日時点で5年を超えていれば「長期譲渡所得」として、税率は約20.315%(所得税と住民税を合わせた合計目安)です。一方、5年以下なら「短期譲渡所得」として約39.63%となり、倍近い税負担になることがあります。
もし、わずかな期間で5年を超える場合、可能であれば売却時期を調整して長期譲渡所得扱いにすることで大幅に税金を減らせるケースもあります。とはいえ、実際には市場のタイミングや共有者の意向もあるため、一概に「待つべき」とは言えませんが、選択肢として頭に入れておくとよいでしょう。
特別控除の考え方
マイホームとして使っていた不動産を売却する場合、最大3,000万円の特別控除を受けられることがあります。これは居住用財産の3,000万円控除と呼ばれ、所有期間に関係なく適用可能です。ただし、居住用要件を満たすかどうかが大切なので、単に共有名義だからといって自動で適用されるわけではありません。
この特例は、共有者それぞれが条件を満たせば各自で利用できます。たとえば夫婦で共有していたマイホームを売却する際、夫と妻それぞれが3,000万円控除を受けられる可能性があります。ただし、土地だけを売るケースや長期間住んでいなかったケースなど、細かい条件を見極める必要があります。
共有名義不動産の売却手順
共有名義の不動産を売るときは、単なる個人名義の物件よりも手続きが増えることがあります。共有者同士の合意形成や必要書類の準備のほか、いくつか押さえておきたい流れを確認しておくと安心です。
共有者間での協議
まずは、売却を考えている旨を他の共有者にも伝え、その意向をすり合わせます。共有名義の場合、すべての共有者の承諾なしに第三者へ売却するのは難しく、後からトラブルに発展することもあります。もし共有者の一部が売却に反対しているなら、持分のみを売りたいと考えることもあるかもしれませんが、実務上は買い手を見つけるのが大変です。
話し合いで合意できそうにないときは、専門家を交えた調停など法的手段に移行するケースもあります。スムーズに協議を進めるには、売却後にそれぞれどのくらいの金額を得られるか、譲渡所得税の納付をどうするかなど、具体的な条件を共有者全員でイメージしておくことが大切です。
市場調査と不動産査定
共有者間で売却の方向性が固まったら、次に不動産の査定を依頼します。信頼できる不動産会社を見つけて査定をお願いし、市場相場と比較しながら「最低限いくらで売りたいのか」を検討しましょう。なお、複数社に査定を依頼するときは、各社の評価額だけでなく、販売戦略や対応なども合わせて確認するとよいです。
共有名義であることを不動産会社に伝えておけば、売買契約書の作成時や決済時に必要な書類や段取りをサポートしてくれるケースが多いです。また、共有者全員の印鑑証明書や身分証明書など、人数分の書類を用意する必要がある点にも注意しましょう。
売買契約の締結
気に入った買主が見つかったら、売買条件を最終的にすり合わせます。たとえば引き渡し時期や手付金の扱い、契約解除の条件などは、事前に細かく決めておくとトラブルを予防できます。契約書を取り交わす際、印紙税が必要になる点を忘れないようにしましょう。
売買契約は、共有者すべてが自分の意思で署名捺印する必要があります。例えば兄弟で共有している場合、居住地がバラバラだと一堂に会して手続きを行うのは難しいかもしれません。その際は郵送などによる署名捺印の手段を検討するとスムーズです。
決済と移転登記
決済日は売却代金を受け取り、所有権移転登記の手続きまで行う重要なタイミングです。決済の方法としては銀行振込が一般的ですが、金額によっては買主が現金を用意するケースもあります。いずれにせよ、共有者全員がお金を受け取り、登記を済ませるまでがワンセットと考えましょう。
移転登記の費用や手続きは、通常は売主・買主の取り決めや慣習によります。売主側が負担するケースもあれば、折半にすることもあります。抵当権が残っている場合は先に抹消手続きをし、完了を確認したうえで買主へ引き渡します。
共有名義のメリット
不動産を個人で所有するのではなく、家族や親族など複数名で共有するメリットもいくつかあります。特に購入段階で資金を分担するケースは多く、その後の維持管理コスト面でも負担を抑えられる利点があります。
購入時の資金負担を分散できる
一人では高額な資金を用意するのが難しくても、共有者を増やすことで負担を分散できます。たとえば夫婦で共有名義にすると、それぞれがローンを組む形も検討できます。収入合算でより大きな物件を視野に入れられるのが魅力です。
ただし、持分が増えるほど印紙税や登録免許税などの手続き費用が増える可能性もあるため、「どのように名義を分けるのか」を慎重に検討することが望ましいです。長期的にどれだけ自分が使う予定があるか、家族構成や将来の相続なども踏まえて決めると安心です。
維持管理のコストを分け合える
不動産を所有すれば、固定資産税や修繕費、管理費などのコストがかかります。共有者間で費用を割り勘にすれば、一人ひとりの支出を抑えられます。特に大規模修繕やリフォームをするときに負担を軽減できるため、現金の手元資金が少ない方にはメリットといえます。
ただし、建物の補修に対する意見が合わない場合もあるため、共有者同士で管理ルールを明確にしておくとよいでしょう。誰が修繕の指揮を担当するのか、費用が嵩んだときにどう分担するのかを決めておけばトラブルを減らせます。
相続対策としての活用
親が所有する不動産を子ども名義で共有にしておけば、将来的な相続時に名義変更の手間をある程度減らせることがあります。遺言書がない状態で相続が発生すると、遺産分割協議が長引くケースも少なくありません。あらかじめ持分を決めておけば、分割の指標になりやすいです。
ただ、共有はあくまでも「複数人で一つの不動産を持つ」という仕組みなので、相続時に新たな共有者が加わる可能性もあります。結果的に共有関係が複雑になる恐れもあるため、専門家の助言を受けながら進めることをおすすめします。
共有名義のデメリット
共有名義にはメリットだけでなく、売却や管理の面でいくつかのデメリット・リスクも存在します。特に複数人で意思決定を行わなければならない場面が多く、意見が分かれると大きな問題に発展することがあります。
売却・管理の意思統一が大変
いざ不動産を売りたいと考えても、共有者全員が賛成していないと手続きを進めにくいのが現実です。一部の持分だけ売却することは法律上可能ですが、第三者から見て利用価値の低い物件になりかねず、想定どおりの金額で売れないことが多いです。
また、管理に関する意思統一も一苦労です。たとえば賃貸に出すかどうか、修繕をいつ実施するかなどを共有者間で決める必要があり、意見の食い違いが大きいと決定が遅れます。家庭の状況が違うと優先順位も変わるため、こまめなコミュニケーションが欠かせません。
トラブル時の法的手続きの煩雑さ
共有者の中で意見が対立した場合などには、法的手続きを取らざるを得ないケースがあります。調停や訴訟に発展すると、手間やコストがかかるだけでなく、関係性が悪化しがちです。共有状態の不動産は「自分だけで自由に処分することができない」という制約があるため、どうしても話し合いが行き詰まりやすいです。
もし共有名義を解消する手段を探すのであれば、「持分を他の共有者に買い取ってもらう」「共有物分割請求をする」などの選択肢がありますが、いずれも簡単とは言えません。法的アドバイスが必要になる場面も多いので、早めの相談がベターです。
単独での抵当権設定や売却は難しい
複数名が持分を持っていると、たとえば自分の持分にだけ抵当権を設定して融資を受けたいと考えても、なかなか金融機関側は応じにくいです。万が一返済が滞ったとしても、全体物件から優先的に回収できない可能性が高いからです。
また、どのように担保評価をするかも難しく、融資先としてはリスクが大きいと判断されます。最初からローンを利用する見込みなら、それぞれの資金負担割合や名義の構成をしっかり計画しないと、後々資金調達で困るかもしれません。
不動産会社の選び方
共有名義の不動産を売却する場合、不動産会社の選び方がとても重要です。共有名義に精通しているかどうかで、売却までの進め方やサポート体制が大きく変わります。
共有名義の売却実績を確認
不動産会社選びでは、まず共有名義物件の売却実績があるかどうかをチェックしてみてください。共有者が複数いる場合、通常よりも調整が必要となる場面が多いため、経験豊富な会社だと手続きに慣れています。
実績が豊富な会社は、必要書類の準備や共有者間の連携、買主との価格交渉などをスムーズにこなすノウハウが期待できるでしょう。実績は公式サイトや担当営業へのヒアリングによって確認できます。
査定と仲介費用のチェック
複数社に査定を依頼し、各社の査定額だけでなく仲介手数料やその他の費用体系を比較するのも大切です。仲介手数料の上限は法律で定められているものの、会社によってはオプション費用が加算される場合もあります。
共有名義であっても一般的な仲介形式をとることが多いですが、大手や地域密着型の会社など特徴はさまざまです。共同名義の売却では複数人が契約に関与しやすいので、費用負担の内訳をしっかり説明してくれる会社だと安心感があります。
サポート体制やアフターフォロー
共有者が遠方に住んでいるケースでは、郵送やオンラインミーティングなどのサポートを整えている不動産会社が心強いです。契約書類の取り交わしから決済当日の段取りまで、細かくフォローしてくれる体制があるかどうか確認してみてください。
また、売却後に問題が生じた場合のアフターフォロー体制も重要です。売却を考えている段階から将来のリスクを意識し、わからないところを積極的に質問しやすい雰囲気かどうかも会社選びのポイントと言えます。
まとめ
共有名義の不動産を売却するときは、譲渡所得税や印紙税など多くの税金への理解と手続きが必要になります。所有期間が5年を超えるかどうかや、特別控除の利用可否などが税負担を大きく左右するため、早めに情報収集を進めると安心です。共有者同士で合意を得ることが前提となるため、売却に際してはしっかりとした話し合いと協力が求められます。
さらに、メリットとデメリットを理解しつつ、不動産会社の実績・費用・サポート体制をよく確認して選ぶとスムーズに進みやすくなります。共有名義ならではの難しさがある反面、事前に準備と知識を整えることで、納得のいく売却につなげることができるでしょう。