相続した共有名義の家は本当に売却できない? 反対意見やトラブルを乗り越える方法を徹底解説

相続した家を兄弟や親族と共有している場合、売却の話が簡単には進まないことがあります。全員が賛成ならばスムーズに進むものの、意見の対立によってストップしてしまうケースも少なくありません。共有名義ならではの注意点と対処法を知ることで、売却できない状況をうまく解消するきっかけをつかみやすくなります。

この記事の作成者

康原 工偉智Koichi Yasuhara

共有持分支援協会の代表相談員
大阪府出身。プロ野球選手を夢見て、名門PL学園から亜細亜大学に進学。度重なるケガでプロの夢を諦めるも、大手不動産会社に就職。持ち前のバイタリティで営業成績もトップクラスを誇る。共有持分を買取る投資家、不動産業者とのパイプも太い。

1.共有名義で売却できないときの主な理由

共有名義の不動産を売るには特有の制約があります。主な理由を確認することで、どのような障害があるのかを把握しやすくなります。

1-1.共有者全員の合意が必要な背景

共有名義の家を売却する際は、共有者のうち誰か一人の独断で動かすことはできません。法律上、全員が「手放しても良い」という意思表示をしなければならないからです。もし一人でも反対すれば、売却の話は前に進みにくくなります。たとえば感情的な理由で「思い出の詰まった家を手放したくない」と言われると、その時点で売却を断念せざるを得ない状況に陥ることもあります。

また、売却価格や時期について意見が合わないケースも見受けられます。相続のタイミングで話し合いがスムーズに進まず、共有者同士のわだかまりが長期化することもあります。特に家への思い入れが強い人がいる場合は早めのコミュニケーションが重要です。

1-2.持分の制限と売却手続きの難しさ

共有名義の不動産には、各人が持つ「持分」が設定されています。たとえば3人で均等に相続していれば、それぞれが3分の1ずつの持分を保有することになります。持分だけを売却すること自体は理論上可能ですが、現実には受け入れ先が少ないのが実情です。購入した側としても、残りの共有者との関係や物件の利用が不明確になりやすいため、わざわざリスクを負ってまで買いたいと思う人が限られます。

そのため持分のみを買い取ってくれる第三者が見つかりにくく、「売りたいけど買い手がつかない」というケースに陥ることが多いです。さらに、手続きを進める場合も売買契約の内容や登記変更の準備など、通常よりいくつも手順が増えるため、予想外に大変だと感じる方が多いです。

1-3.第三者の持分購入が活用しづらい理由

持分の売却を検討するときに、第三者に買ってもらえば円滑に進むのではと考える方もいます。しかし現実には、第三者にとって居住や賃貸活用ができない物件を買うメリットは少ないです。共有名義の状態が継続する以上、家のリフォームや管理の決定には他の共有者の同意が欠かせず、投資目的や自己使用目的のどちらにしても使い勝手が悪いと判断されることが多いです。

さらに、不動産会社でも持分のみの取扱いは敬遠する傾向があります。物件全体を売却する場合と比べて市場価値が低くなりがちですし、現場の営業活動もしづらい面があるからです。そのため、共有名義の家を売却したいなら全員が「家をまとめて売る」方向に合意することが最善策といえます。

2.共有名義の売却ができない状況でも得られるメリット

共有名義だと売れないと諦めがちですが、実は合意を得られればさまざまな恩恵が期待できます。どのようなメリットがあるのかを見てみましょう。

2-1.適正価格で売却しやすい利点

共有者がそろって「物件全体を売りたい」という方針になれば、通常の不動産流通ルートで売却活動を行えます。その結果、市場における相場価格での売却が期待できるのが大きなメリットです。持分のみの売却は買い手がつかず、やむを得ず値下げするケースが多いのですが、物件全体であれば需要層が広がります。マンションや一戸建てなど、住居用物件としてまともに売り出せるため、買主が見つかりやすくなる傾向も強いです。

たとえば相続直後は「とりあえず誰かに買い取ってほしい」と思っていても、相殺価格で手放してしまうのはもったいないこともあります。複数の不動産仲介会社に相談しながら、適正な売り出し価格を設定することで、結果的に高値で売るチャンスが生まれやすくなります。

2-2.相続人間で公平に分配できる魅力

共有名義の家をまとめて売ると、得られた売却益は各人の持分割合に応じて分配できます。たとえば長男が5割、次男が3割、三男が2割という場合であれば、その比率でお金を受け取るというかたちです。家を現金化しないまま「住む・住まない」の問題がくすぶるよりも、資産を明確に区分できる点が大きな強みといえます。

不動産を複数筆で相続するよりも、売却益を持分に応じて分割したほうが後々のトラブルを防ぎやすくなります。たとえ将来的に使う予定があまりなくても、共有状態のままにすることで思わぬ負担が発生するケースがあるからです。全員が納得の上で区切りをつければ、心理的なストレスも軽減されやすいです。

2-3.現金化のスピードと将来のトラブル回避

売却が完結すれば、共有者それぞれが資金を自由に使えるようになります。とりわけ相続人が複数いる場合、それぞれの生活スタイルや将来設計に合わせてお金を活用できるのは大きなメリットです。誰かが単独で住み続けるケースでは、ほかの共有者が固定資産税の負担を強いられるなど、不公平感が生まれやすいリスクもはらんでいます。

合意を取り付けられずに数年〜数十年と放置されてしまうと、家の老朽化が進んで資産価値も下がり、「結局もっと早く売っておけばよかった」という声が上がることもあります。売り時を逃さないという意味でも、共有名義で売却できないままズルズルと延長しないことが肝心です。

3.共有名義の家を売却できない際の注意点

共有名義の家を市場に出すときには、事前にチェックすべきポイントがいくつも存在します。見落としを防ぐための注意点をまとめます。

3-1.境界確定のための調査と書類収集

売却を検討する前に、土地の境界をはっきりさせておく必要があります。敷地の面積があいまいだと、買主への説明義務を果たせず、契約トラブルに発展する可能性が高いです。主な方法としては、公図や登記簿を確認し、現地測量を行い、隣接地の所有者と境界を示す立会いを実施して、必要に応じて境界標を設置する流れが一般的です。

境界が確定しないまま売却すると、将来的に「建物を増築しようとしたらお隣さんからクレームが入った」などの問題を引き起こしかねません。土地の広さや形状を正しく示すことは、不動産の価値評価にも直結する大切な要素です。売り手と買い手の双方が安心して取引できるよう、境界を明確にしておくことが欠かせません

3-2.土地家屋調査士に相談するときの要点

境界確定や測量、登記手続きのサポートを行う専門家として、土地家屋調査士がいます。国が定めた試験に合格し、登録を受けているため、専門的な知識を持って境界確定業務を進めてくれます。調査士に依頼すると、測量図の作成や隣地所有者との話し合いへの同席などを行い、トラブルを未然に防ぐのに役立ちます。

調査士の費用は、土地の広さや形状、立会いの回数によって異なるため、あらかじめ見積もりをとって確認すると安心です。境界について不透明な部分があるまま売却に進むより、プロの力を借りて事前にクリアにしておくほうが、結果的には時間と労力の節約につながりやすいです。

3-3.共有物分割請求で裁判所を活用する場合

共有者のうち一部が売却に応じず、協議が平行線をたどるときは、共有物分割請求という法的手段があります。これは民法の規定に基づき、裁判所を通じて強制的に共有状態を解消する手続きです。調停や訴訟によって、共有不動産を「競売にかける」「持分を買い取る」などの方法が決定される場合もあり、売却できない状況を解消する糸口になることがあります。

ただし裁判所を介するとなると、手続きにかかる期間や費用が増える可能性も高まります。互いの主張が対立しすぎて合意が難しい場合の最終手段として位置づけられることが多いです。「一歩も譲る気がない」ほど関係がこじれているなら、早めに弁護士への相談も検討しましょう。

3-4.税金の申告と持分割合への配慮

不動産を売却すると、譲渡所得に対して所得税や住民税が課される可能性があります。共有名義の場合、それぞれの持分に応じて譲渡益を申告するのが原則です。もし誰か一人に多めの金額が配分されてしまうと、贈与とみなされるリスクもあるため注意が必要です。

とりわけ親子間や兄弟間のやり取りで、「折半ではなく少し上乗せしてあげる」といったケースが見受けられます。善意のつもりでも、税のルール上は想定外の扱いになりかねません。円満に解決したつもりが思わぬ追徴課税を受けることのないよう、税理士などの専門家を活用して正しい手続きにのっとりましょう。

4.共有名義の家売却時のトラブルを解決する方法

売却したい人がいても、どうしても反対意見が出ることはあります。そのような状況をフォローしながら、円滑に手続きを進める方法を選ぶポイントをまとめます。

4-1.反対意見に配慮した話し合いのポイント

共有名義の家に対して「売りたい派」と「売りたくない派」に分かれると、感情的な対立が生まれがちです。まずは反対側がなぜ売却に難色を示しているのか、事情を丁寧に聞き取り、解決策を一緒に模索する姿勢が重要となります。たとえば思い出へのこだわりが大きい場合、形見の品や写真などを整理して気持ちの整理を促す工夫も考えられます。

公平感を保つためには、第三者を交えた話し合いが有効です。家族や親族の意見だけでは主観的になりやすいため、専門家や信頼できる友人などに同席してもらうことで、冷静な意見交換がしやすくなります。言い分をしっかり聞いたうえで譲歩や条件を探る柔軟さがカギです。

4-2.不動産仲介業者を選定するときの基準

共有者が全員で売却に同意していても、仲介業者選びでつまずくケースがあります。不動産会社には得意とするエリアや物件種別があるため、売却予定の物件にマッチした業者かどうかをチェックしましょう。相談時には、これまでの実績や査定の根拠を聞くと、不安を払拭しやすくなります。

また、高値で売り出す戦略を取るのか、早期に現金化を目指すのかといった方向性を共有者間で明確にしたうえで、その方針に合う業者を選ぶことが大切です。複数社の査定を比較すると、相場を客観的に把握できるので、納得度の高い結果につながります。

4-3.法的サポートの依頼でスムーズに進める工夫

持分の配分や登記の変更など、書類対応が複雑になりがちな場面では、司法書士や弁護士などにサポートを依頼すると安心です。特に、共有者が多い場合は合意形成も手続きも煩雑になりがちなので、ほどよいタイミングで専門家の知見を取り入れましょう。

訴訟や調停は負担が大きいものの、共有物分割請求などの手続きを視野に入れることで、売却できない状態を打開できる可能性があります。実際には事前の話し合いで解決するのが望ましいですが、法的なプロセスも理解しておくといざというときに役立ちます。

5.共有名義売却できない局面を左右する境界確定の重要性

共有名義の不動産を円滑に売るには、家の内部事情だけでなく、土地の位置や面積を明確にすることも欠かせません。境界確定がもたらす効果と、その手順を整理します。

5-1.隣地との立会いと合意形成の手順

境界を確定する際には、隣地所有者を交えて実地で境界標を確認し、念書などの書面を作成する作業が必要になります。現地で双方が合意すれば、その境界をもとに図面を作成し、法務局へ提出する流れが一般的です。もし境界があいまいなままだと、「建物やフェンスが隣の敷地に越境しているのでは」というトラブルの火種になりかねません。

立会いのアポイントを取る段階からスムーズに進めるためには、日程調整や書類の準備を早めに行うことが大切です。共有名義の家では誰が担当して隣地所有者と連絡をとるのか決めておくと、混乱を防ぎやすくなります。

5-2.公図や地積測量図の読み解き方

正確な境界を把握するには、法務局で保管されている公図や地積測量図などの確認を行います。公図は土地の位置関係を示す地図であり、地積測量図はその土地の面積や境界線を示した詳細資料です。ただし、古い地積測量図は現況と合わない場合や、計測精度が低い場合もあるため、実地での測量を併せて行うことが望ましいです。

測量結果と地積測量図が整合しないときは、追加調査や再測量が必要になります。場合によっては隣地との協議が長引くこともあるため、早めに専門家を交えて対応を進めると結果的に手間やコストを抑えられるケースが多いです。

5-3.相続や分筆で境界が必要となる具体例

共有名義の土地を分割して相続するケースや、一部を売却して残りに家を建てるケースなど、境界があいまいなまま進めると揉める原因になります。特に相続人が多い場合、それぞれが「この区画が自分の持分に当たる」と主張しはじめると、どこからどこまでが誰の領域なのか整理するだけでも大変です。

境界確定を終えたあとで分筆(ひとつの土地を複数に分けて登記する手続き)を行うと、書類上も物理的にも区切りがはっきりするため、共有状態によるトラブルを抑えやすくなります。売却を視野に入れるなら、まずは測量と境界の明確化を優先するとスムーズです。

6.まとめ

共有名義で売却できない状況には、同意取得や境界確定などさまざまなハードルがありますが、適切な手順を踏めば解消しやすくなります。全員が納得できる道筋を選びつつ、必要に応じて専門家へ相談すると円滑に進みやすくなります。早めの行動でトラブルを回避し、売却への第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。