共有者が固定資産税を払わないとき、相続持ち家を守るためのポイント

親子や兄弟など複数人で名義を共有している不動産は、固定資産税の扱いが複雑になりがちです。仮に共有者の一部が払わない状況になると、代表者や他の共有者に思わぬ負担がのしかかることもあります。負担のトラブルを回避し、相続した大切な持ち家をしっかり守るための具体的なポイントを紹介します。

この記事の作成者

康原 工偉智Koichi Yasuhara

共有持分支援協会の代表相談員
大阪府出身。プロ野球選手を夢見て、名門PL学園から亜細亜大学に進学。度重なるケガでプロの夢を諦めるも、大手不動産会社に就職。持ち前のバイタリティで営業成績もトップクラスを誇る。共有持分を買取る投資家、不動産業者とのパイプも太い。

1.固定資産税の仕組みと共有者の負担

固定資産税は不動産を所有している人に課せられる税金で、共有者がいる場合は全員が連帯して責任を持つ点が特徴です。ここでは、固定資産税の基本と共有名義の背景、持分に応じた具体的な負担について見ていきます。

1-1.固定資産税の基本を知る

固定資産税は土地や建物といった不動産に課され、毎年評価額が見直される仕組みです。評価額が高いほど負担も大きくなり、自治体から送られてくる納税通知書に従って支払いを行います。現金払いだけでなく、口座振替など複数の支払方法が用意されているものの、納め忘れが発生すると遅延金が加算される場合があります。

納税義務は所有者にあり、一人ではなく複数名義で持っている場合は共有名義の全員が対象になる点が大きなポイントです。もし納税を怠った共有者がいても、自治体は誰か特定の代表者にまとめて支払いを請求できるため、連帯責任が生じる仕組みになっています。

評価の更新時期は自治体や物件の種類によって異なりますが、通常は3年ごとに評価替えが行われます。評価額が上がれば固定資産税も増えるため、将来的な費用負担を見通して事前に備えることが大切です。

1-2.共有名義の背景を理解する

共有名義となる原因としては、親子や兄弟で購入資金を出し合ったり、相続によって不動産を複数人で引き継いだりする場合が挙げられます。共有名義を選ぶメリットとしては、購入時や相続時に費用負担を分散できる点が大きいです。とはいえ、名義が複数にまたがるほど、納税の管理責任も分散するためトラブルが生じやすい傾向があります。

例えば、名義だけを分けたまま実際の管理や維持費の折半ルールを明確にしていないケースなどは要注意です。建物の修繕費や固定資産税の支払いについて誰がどれだけ出すのかという議論が生じ、決着しないまま滞納が発生することもあります。

共有名義にする際は、事前に持分割合や役割分担を話し合ったうえで書面化しておくと安心です。最初は負担割合がはっきりしていなくても、トラブルになりそうなときは専門家に相談してルールを固めておくことが望ましいです。

1-3.持分割合に応じた負担

法律上は、共有者それぞれの持分割合に基づいて固定資産税などの費用を負担するのが基本です。例えば親子三人で土地や建物を共有している場合は、親が1/2、子ども二人が1/4ずつといった具合で負担を割り振ります。ただし、実際の請求は代表者に対して一括で行われる仕組みがほとんどなので、実務では代表者が先払いをしてからほかの共有者に求償するケースが多いです。

求償するときは口約束だけでなく、立て替えた金額や日付などを記録しておくのが重要です。支払い能力に不安がある共有者がいる場合は、滞納リスクを見越して連名で分割払いの相談をするなど工夫をすると負担が軽減しやすくなります。

持分割合は登記に基づいて決まりますが、実際の負担感は居住状況や使用形態によって変わることもあります。自分がほとんど住んでいないのに負担を求められるといった不公平感を避けるためにも、こまめな話し合いと合意形成が欠かせません。

2.共有者が払わない場合のリスクと相続人の役割

共有者のうち誰かが固定資産税の納付をしないと、最終的には代表者やほかの共有者が連帯責任を負う可能性があります。リスクを最小限にするためには連帯納税義務の理解と、相続人の具体的な帰責範囲を把握しておくことが肝心です。

2-1.連帯納税義務のポイント

固定資産税は原則として、共有者全員が連帯して納める義務を負います。つまり1人が支払わない場合でも、自治体は代理で支払ってくれる別の共有者に一括請求が可能です。これにより、真面目に支払っている人まで思わぬ追加負担を背負いかねないのが大きなリスクといえます。

この制度は自治体の徴収コストを抑える狙いもあるため、共有名義を安易に選択すると後々トラブルになりがちです。連帯納税義務がある以上、「自分の分だけ払っておけば大丈夫」という単純な話にはならない点を意識する必要があります。

場合によっては代理で納めた金額を求償できる仕組みがありますが、日頃の関係トラブルが大きいほど費用の取り立てがスムーズに進まないことも多いです。法律上の権利を行使しても実際にお金が回収できる保証はないため、日ごろからの協力体制づくりが大切です。

2-2.滞納の影響とペナルティ

納付期限を過ぎても固定資産税が支払われないと、ペナルティとして延滞金が加算される可能性があります。さらに長期間放置すると、最悪の場合は不動産の差し押さえや競売といった手段が取られることもあります。共有者の誰かが滞納していると、想定外のタイミングで大切な不動産を失うリスクさえあるのです。

また延滞金が発生すると、負担する総額がどんどん膨れ上がります。相続を契機として共有名義になった場合など、他人事だと思っていると取り返しのつかない状態になるかもしれません。早めの段階で滞納者との話し合いを行い、代表者が立て替えをして求償するなどの対応策を講じるほうが損失を小さくできます。

滞納情報は自治体のデータベースに記録されるため、後日に売却や名義変更などの手続きを進める際にもマイナス要素となりかねません。手放す予定がなかったとしても、資産価値を守るためにも計画的に支払っておく必要があります。

2-3.法定相続の順位と帰責

相続が発生した場合、法定相続人は配偶者と子どもが第一順位となり、そこに親や兄弟姉妹が続くのが一般的な仕組みです。新たに相続人となった人は自動的に共有者となるため、固定資産税の負担義務を受け継ぐことになります。知らないうちに名義だけ共有になり、後から「払わない」という姿勢を示されるケースもあり、親族間のトラブルへ発展しがちです。

相続手続きを進める段階で財産や負債を整理し、固定資産税を含む支払義務を明確にしておくとリスクを減らせます。相続放棄という選択肢も存在しますが、その判断には期限があるため、早めの情報収集が重要です。

相続の際には、故人が生前に支払っていなかった分の固定資産税も含めて清算しなければならない場合があります。名義変更は時間がかかることも多いので、放置せずに役所などに確認しておくと混乱を回避できます。

3.代表者が覚えておきたい固定資産税の対処法

共有名義では、自治体から代表者が納税通知書を受け取るケースが一般的です。代表者に選ばれた場合、ほかの共有者の滞納リスクや求償の段取りを把握しておけば、スムーズに手続きを進めやすくなります。

3-1.代表者の選定と役所からの通知

共有者同士の話し合いによって代表者を定めることが多いですが、選定されずにいると役所が自動的に代表者を指定することがあります。多くは持分が大きい人や所在地の近くに住んでいる人が代表者になる傾向です。代表者に指定されると、納税通知書が直接本人に送られてくる点に注意が必要です。

代表者の役割は納税通知書を受け取るだけではなく、各共有者が支払うべき金額を割り出し、必要に応じて立て替え納付を行うことにまで及ぶケースもあります。とはいえ、代表者がすべての費用を自分の負担でまかなう義務はありません。あくまでまとめ役として機能する点を理解しておくとよいでしょう。

納税通知書が届いたら早めに内容を確認し、金額や納付期限を共有者全員に周知します。通知書を放置すると延滞金が加算される恐れがあるため、代表者として積極的にアクションを起こす必要があります。

3-2.求償権の活用と手続き

固定資産税を代表者が立て替えた場合、ほかの共有者に対して支払った分を請求できる権利が求償権です。求償権は立て替えた時点から5年が経過すると時効が成立して請求できなくなるため、早めの請求と話し合いが重要になります。特に金銭トラブルは親族間でも深刻化しやすいので、感情的にならず粘り強く調整することが求められます。

求償を行う際は、決まった手続きがあるわけではありませんが、証拠として立て替えた金額や振込明細などを保管しておくとスムーズです。可能であれば書面を作成し、全員のサインや印鑑をもらっておくと後日のトラブルを防げます。

もし相手方がお金を払わないという態度を崩さない場合は、内容証明郵便を送るなどして正式な請求を行う手段もあります。ただし、法的手段を取れば親族関係が悪化する可能性も高いため、最初は話し合いによる解決を目指す方が得策です。

3-3.相続放棄を検討するケース

大きな借金を抱えている不動産を相続する場合や、固定資産税の支払いが難しい状況にある場合は、相続放棄を検討することも一つの手段です。相続放棄をすると、対象の不動産に関しては一切の権利と義務を放棄するため、固定資産税も含めて支払う必要がなくなります。

ただし、相続放棄は家庭裁判所への申請が必要であり、相続の開始を知った日から3か月以内に手続きをするのが原則です。期限を過ぎると放棄が認められない場合が多いので、相続が発生したらまずは遺産の内容をしっかり把握しておくことが大切になります。

相続放棄を行うと他の相続人の負担が増える可能性が高いため、一方的に放棄するだけでなく周囲と協議するのが望ましいです。法的に可能であっても、親族間の信頼関係を損なわないような進め方が求められます。

4.相続持ち家と共有者への対応を考える実用的な視点

不動産を相続すると、固定資産税だけでなく遺品整理や手続きの負担が発生します。共有者が多いほど各種の手配も複雑化しがちなので、効率的に進めるためのポイントを知っておくと安心です。

4-1.遺品整理を円滑に進める方法

相続する持ち家には、故人が残した家具や貴重品が数多く残されている可能性があります。遺品整理は親族が協力し合って進めるのが一般的ですが、人手不足や精神的な負担から滞ることも少なくありません。まずは「貴重品」「形見」「リサイクル」「処分」といった分類を行い、シールや付箋で区別して分かりやすくするのが基本です。

遺品整理を放置すると、相続登記や不動産の売却を進めにくくなるだけでなく、ゴミ屋敷化などの問題を引き起こす恐れもあります。実家が遠方にあって足を運べない場合や物理的に作業が難しい場合は、専門の遺品整理業者に部分的に依頼するのも有効です。

一方、複数人の共有者がいる場合は、それぞれの思い出や気持ちに配慮しながら作業を進めることが求められます。手早く片付けたい人と、整理に時間をかけたい人の意見が対立することもあるため、最初に全体のスケジュールを共有しながら役割分担を決めるとスムーズです。

4-2.デジタル遺品の確認と処理

スマートフォンやパソコン、オンラインサービスのアカウントなどに残されているデータを「デジタル遺品」と呼ぶことがあります。写真や文書、金融機関の口座情報が含まれる場合があるため、相続人が知らないまま放置すると重要な手続きが進まない恐れがあります。

たとえばネット銀行の口座や証券口座が故人の名義で残っていると、相続税や固定資産税以外の税金が絡む問題が表面化することもあります。アクセスパスワードやIDがわからなければすぐに情報を確認できないため、遺品整理の際は忘れずにデジタル機器のチェックを行いましょう。

ただし、他人のデータを勝手に閲覧・変更すると法律に抵触するケースも考えられます。手続きを追う中で不明点が出てきたら法務やITに詳しい専門家へ相談し、合法的な手順で整理することが大切です。

4-3.専門業者を利用する際の注意点

相続した持ち家が遠方にあり、遺品や不用品の処分が困難なときは、遺品整理専門業者や不用品回収サービスを利用する方法があります。作業範囲や料金体系は業者ごとに異なるため、事前に見積を複数社から取り、トータルでの費用や対応内容を比較すると失敗しにくいです。

不動産の片付けと同時にハウスクリーニングやリフォームを検討する場合も、専門業者の方が効率的に進められます。ただし、優良事業者だけでなく悪質な業者も存在するため、口コミや評判をよく調べることをおすすめします。

依頼する際には、出張費用や夜間作業などの追加料金が発生しないかを明確に確認することがポイントです。想定外の費用が発生すると共有者間での費用負担が揉める原因になるため、契約前に細かい部分まで取り決めておきましょう。

5.共有者が払わないときに有効な手続きの進め方

共有者の中に固定資産税を支払わない人がいる場合、代表者やほかの共有者がどのような手続きを踏むべきかを明確にする必要があります。スムーズに協力体制を築くための方法やトラブルを防ぐ工夫を押さえておくと安心です。

5-1.改めて確認したい期限と時効

固定資産税は通常、年度の最初に納税通知書が送付され、4回程度の期別に分けて支払うケースが多いです。納付期日を過ぎると延滞金が生じ、さらに長期間滞納すると不動産差し押さえに至る恐れもあります。求償権の時効が5年であることも含め、早期対応がリスク回避に有効です。

固定資産税の納期限は年度や自治体によって異なる場合があるため、共有者全員でカレンダーに記載するなどの共有を欠かさないようにしましょう。仮に一括で支払う際も、誰がいつどのように負担するのかを明確に決めておくと後々のトラブルを回避しやすくなります。

最終的に支払いが滞ったときは、役所から督促状や催告書が届くこともあります。この段階で協議を始めるとすでに延滞金が発生している可能性が高いため、遅くとも納期限直前には誰がどれだけ出すかを決めておくのが理想的です。

5-2.共有者間の合意形成を促す工夫

状況を改善するうえで大切なのは、当事者全員が納得できる合意を目指すことです。共有者が多い場合、それぞれの生活状況や経済事情が異なります。そこで、話し合いを円滑に進めるためにファシリテーターを立てる方法もあります。立場の近い親族や第三者の弁護士などが調整役になると、当事者同士の感情的な対立を避けやすくなります。

合意形成のポイントは、単に金額を分担するだけでなく、今後の運用方針や不動産をどう扱っていくかにまで踏み込むことです。現状、市場に出して売却したほうがいいのか、あるいは修繕して賃貸に回すのかといった将来設計も含めて早めに検討すると便利です。

もし話し合いだけでは解決が難しいと感じたら、専門家を交える選択肢を前向きに検討してもよいでしょう。一度こじれた関係を修復するのは難しいため、初期段階で公正な立場の人に入ってもらうほうがスムーズにまとまる傾向もあります。

5-3.書面化でトラブルを回避する

共有者同士で合意に至ったら、その内容はできる限り書面化しておきましょう。たとえば「負担割合の合意書」や「将来の管理費・税金に関する覚書」などを作成し、全員の署名・捺印をもらいます。書面化しておけば後から「聞いていない」などのトラブルを防げるだけでなく、正式に証拠として残すことで安心感も高まります。

書面にまとめる段階で不明点があれば、弁護士や司法書士などに相談して内容をチェックしてもらうとさらに確実です。費用はかかりますが、計画性のないまま放置して延滞金や裁判沙汰になってしまうリスクと比べれば小さな投資といえます。

書面では納税方法やタイミング、共有者が増えたり減ったりした場合の取り扱いなど、将来的な変更に備えた条項を入れておくと安心です。口頭の約束は忘れられがちですが、文章に残せば争いに発展する可能性がぐっと下がります。

6.まとめ

共有者が固定資産税を払わない問題を回避するには、納税の仕組みや相続のルールを正しく理解し、早めにトラブルを予防することが鍵になります。負担の割合や今後の物件の扱いを明確にして、円滑な共有管理を目指してみてください。