「共有持分を売却すると税金はどのくらいかかるだろう?」
「売却したらどうやって申告したらいいのかな?」
このように考えていませんか。
この記事では共有持分を売却した時の税金の計算方法や確定申告の方法を、プロが分かりやすくご案内いたします。
目次
共有持分の売却したら発生する税金を計算する3つの手順
- 自分の持分の譲渡所得を計算する
- 特例が使える場合は譲渡所得を控除する
- 計算した譲渡所得に税率をかける
不動産を売却した時に利益が発生すると譲渡所得税がかかります。
譲渡所得の計算方法を順番にご案内いたします。
【手順①】自分の持分の譲渡所得を計算する
共有持分の譲渡所得の計算式は次の通りです。
- 譲渡所得の計算式=譲渡所得=譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)×持分割合
不動産の売却金額から購入した時の金額と売却時の諸費用を差し引きます。
具体的には次の通りです。
- 差引く取得費や譲渡費用
項目 | 内容 |
---|---|
不動産取得税 | 不動産を取得した際にかかる税 |
登録免許税 | 所有権移転のための税 |
印紙税 | 売買契約書に貼る印紙代 |
設備費 | 設備の設置費用 |
購入時仲介手数料 | 購入時に不動産会社に払う手数料 |
譲渡時仲介手数料 | 売却時に不動産会社に払う手数料 |
解体費用 | 建物を取り壊す費用 |
立退料 | 賃借人に退去してもらう費用 |
不動産取得税は不明の場合や5%以下の時は5%で計算できます。
固定資産税、都市計画税は保有期間中の税金のため譲渡費用の対象外です。
修繕費は資産価値を上げるためのリフォームの場合に認められます。
取得費は不動産を相続や譲渡で受け取った場合、相続した人が引き継ぐことができます。
【手順②】特例が使える場合は譲渡所得を控除する
- 譲渡所得控除の特例
特例 | 内容 |
---|---|
住宅用財産の3,000万円特別措置 | 自分が住んでいた不動産を売却した時に3,000万円を控除する |
空き家にかかる譲渡所得の特別措置 | 相続した空き家を売却した時に、3,000万円を控除する |
低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除 | 一定の未使用地を売却した時に特別控除100万円を控除する |
住居用の特例を使う条件は次の通りです。
- 特別な関係者以外へ売却すること
- 住むのをやめてから3年以内に売却すること
- 前年や前々年に特例を使っていないこと
- 次の不動産を買う時に住宅ローン控除を使わないこと
特別な関係者とは親子や夫婦、生計を同一にする親族のことです。
譲渡所得控除の特例を使う場合は必ず確定申告しなければいけません。
参考)国税庁「マイホームを売ったときの特例」「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
【手順③】計算した譲渡所得に税率をかける
- 譲渡所得の税率
期間 | 税率 | 内訳 |
---|---|---|
5年以下 | 39.63% | 所得税30%+住民税9%+復興特別所得税0.63% |
5年超 | 20.315% | 所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315% |
軽減税率 | 14.21% | 所得税10%+住民税4%+復興特別所得税0.21% |
軽減税率はマイホームに住んでいた年数が10年以上の場合に使えます。
軽減税率の特例を使うと、6,000万円以下の額について通常より税率が下がります。
例えば譲渡所得が9,000万円の場合、税率は6,000万円分が14.21%、3,000万円分が20.315%です。
軽減税率は住宅用財産の3,000万円特別措置以外の特例とは併用できません。
共有持分の売却で発生する税金のシミュレーション
手順に従って共有持分を売却した時の譲渡所得税のシミュレーションをします。
通常の売却の場合
- 条件
不動産全体の売却価格 4,000万円
取得費 2,000万円
譲渡費用 100万円
共有持分 2分の1
保有年数 3年
①自分の持分の譲渡所得を計算する
2,000万円 -(1,000万円+50万円)=950万円
②特例は適用できない
③計算した譲渡所得に税率をかける
950万円×39.63%=3,764,850円
譲渡所得税は3,764,850円です。
特例で譲渡所得が0になる場合
- 条件
不動産全体の売却価格 4,000万円
取得費 2,000万円
譲渡費用 100万円
共有持分 2分の1
保有年数 10年
備考 自宅の売却
①自分の持分の譲渡所得を計算する
2,000万円-(1,000万円+100万円)=950万円
②住宅用財産の3,000万円の特例を使う
950万円-3,000万円=-2,050万円
③計算した譲渡所得に税率をかける
ー2,050万円×14.21%=-2,913,050円
譲渡所得が0円以下なので、譲渡所得税は0円です。
居住用財産の3,000万円控除の特例と軽減税率の特例が適用できた
- 条件
不動産全体の売却価格 9,000万円
取得費 1,000万円
譲渡費用 100万円
共有持分 2分の1
保有年数 20年
備考 自宅の売却
①自分の持分の譲渡所得を計算する
4,500万円ー(500万円+50万円)=3,950万円
②住宅用財産の3,000万円の特例を使う
3,950万円-3,000万円=950万円
③計算した譲渡所得に税率をかける
950万円×14.21%=1,349,950円
譲渡所得税は1,349,950円です。
共有持分を売却して税金が出たら確定申告が必要
確定申告の方法と申告しなかった場合の罰則をそれぞれご案内いたします。
確定申告の手順、必要書類、書き方
確定申告に必要な書類は次の通りです。
- 確定申告の必要書類
書類 | 入手方法 |
---|---|
確定申告書 | 税務署・国税庁ホームページ |
売買契約書の写し | 契約時 |
仲介手数料の領収書 | 不動産会社 |
登記事項証明書 | 法務局 |
取得時の売買契約書の写し | 契約時 |
譲渡所得の内訳書 | 税務署・国税庁ホームページ |
本人確認書類 | マイナンバー・免許証 |
確定申告書の作成方法は次の通りです。
- 譲渡所得の内訳書の作成
- 確定申告書の作成
最初に譲渡所得の内訳書を作成します。
内訳書に記載する項目は次の通りです。
- 内訳書の記載項目
面 | 記載項目 |
---|---|
一面 | 住所・氏名・電話番号・職業 |
二面 | 不動産の所在地・売買契約日・売却価格・引渡日・共有者の情報・買主の情報 |
三面 | 取得時の価格・取得費・譲渡費用・譲渡所得金額 特例を使う場合は適用特例の情報 |
売却価格・取得費・譲渡費用は自分の持分の価格を記載します。
次に確定申告書を作成します。
確定申告書に記載する項目は次の通りです。
- 確定申告書の記載項目
表 | 記載項目 |
---|---|
第一表 | 譲渡所得金額 納税額 |
第二表 | 譲渡所得に関する記載項目はなし |
第三表 | 売却価格 譲渡所得金額 不動産の所在地 必要経費(取得費・譲渡費用) |
作成した確定申告の提出方法は次の通りです。
- 税務署窓口
- 郵送
- e-taxで電子申告
確定申告の期間は毎年2月16日から3月15日までです。
必ず期限までに申告してください。
確定申告をしなかった場合の罰則
確定申告しなかった場合、次の加算税がかかります。
- 罰則
種類 | 内容 | 加算税率 |
---|---|---|
過少申告加算税 | 申告すべき額より低い額を申告した場合の税 | 50万円以下 本来納める税額と当初申告額の差額の10% |
50万円超 本来納める税額と当初申告額の差額の15% |
||
無申告加算税 | 申告期限までに申告しなかった場合の税 | 50万円以 下納める税額の15% |
50万円超300万円以下 納める税額の20% |
||
300万円超 納める税額の30% |
||
延滞税 | 納付期限を過ぎてしまった場合の税 | 2カ月以内 年7.3%または「延滞税特例基準割合+1%」のうち低い方 |
2カ月超 年14.6%または「延滞税特例基準割合+7.3%」のうち低い方 |
||
重加算税 | 故意に無申告したまたは虚偽の申告をした場合の税 | 無申告 納める税額の40% |
過少申告 納める税額の35% |
特例基準割合とは前年の銀行の新規の短期貸出約定平均金利のことです。
延滞税は「納付税額×延滞税率×日数÷365日」で計算します。
共有持分を贈与や放棄した時の税金
共有持分の贈与とは自分の持分を無償で他の人に渡すことです。
共有持分の放棄とは自分の持分を放棄して、一方的にその持分を他の共有者の共有物にすることです。
贈与や相続の放棄をした場合、共有持分を取得した人に贈与税と不動産取得税がかかります。
贈与税の計算方法は次の通りです。
- 贈与税額=(贈与された持分の価値-110万円)×税率-控除
贈与税の税率と控除額は次の通りです。
- 贈与税の税率
課税価格 | 一般贈与財産 | 特例贈与財産 |
---|---|---|
200万円以下 | 税率 10% 控除 0円 | 税率 10% 控除 0円 |
300万円以下 | 税率 15% 控除 10万円 | 税率 15% 控除 10万円 |
400万円以下 | 税率 20% 控除 25万円 | 税率 15% 控除 10万円 |
600万円以下 | 税率 30% 控除 65万円 | 税率 20% 控除 30万円 |
1,000万円以下 | 税率 40% 控除 125万円 | 税率 30% 控除 90万円 |
1,500万円以下 | 税率 45% 控除 175万円 | 税率 40% 控除 190万円 |
3,000万円以下 | 税率 50% 控除 250万円 | 税率 45% 控除 265万円 |
4,500万円以下 | 税率 55% 控除 400万円 | 税率 50% 控除 415万円 |
4,500万円超 | 税率 55% 控除 400万円 | 税率 55% 控除 640万円 |
特例贈与財産とは、直系尊属(父母・祖父母)から18歳以上の子や孫に贈与する財産のことです。
例えば、親の土地に子供が家を建てるために贈与する場合、通常より税率が優遇されます。
参考)国税庁「贈与税の計算と税率」
共有持分の売却で発生する税金も相談できる売却先5社
共有持分支援協会
共有持分の問題を解決する専門機関です。
税理士をはじめ各分野の専門家が税務面のサポートを行います。
中央プロパティー
共有持分専門の仲介業者です。
税務の専門知識と実践的なアドバイスで、複雑な税金問題のサポートを行います。
ベリーベスト不動産
共有持分専門の買取業者です。
ベリーベストグループの税理士と連携した万全なサポート体制が整っています。
クランピーリアルエステート
共有持分を含む訳あり物件専門の買取業者です。
全国の税理士と提携しており、税務面のサポートを行っています。
アルバリンク
共有持分を含む訳あり物件専門の買取業者です。
税理士との連携で譲渡所得の申告や節税相談に一括で対応しています。
まとめ
共有持分の売却でかかる税金の計算方法や確定申告の方法についてご案内いたしました。
この記事を参考に譲渡所得税を計算して適切に納税をしてください。