「共有持分の売却に関する民法を知りたい」
「共有者の同意なしで持分を売却しても法律的には問題無い?」
このように考えていませんか?
この記事では、共有持分の売却に関する民法について、プロが分かりやすくご案内しています。
目次
共有持分の売却に関する5つの民法
- 共有持分だけを売却できる<民法206条>
- 不動産全体の売却には共有者全員の合意が必要<民法251条>
- 共有持分の売却後も立替金を請求できる<民法254条>
- 共有物分割請求訴訟を提起できる<民法256条、258条>
- 売却以外でも持分を処分できる<民法255条、369条、549条>
①共有持分だけを売却できる<民法206条>
共有持分とは、複数の人が共同で所有している不動産の各人が持つ所有権の割合のことです。
このうち、自分の所有している持分だけなら自由に売却できるということが、民法206条で規定されています。
-
所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
例えば、父が亡くなり、母と三人兄弟の共有名義で実家を相続した場合、長男が自分の持分6分の1だけを、家族に内緒で売却することができます。
②不動産全体の売却には共有者全員の合意が必要<民法251条>
共有名義の不動産の全体を売却する場合は、全員の同意が必要ということが、民法251条で規定されています。
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各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
例えば、3人で土地を共有している場合に、2人が売却に賛成しても1人が反対すれば、全体の売却はできないということです。
なお、251条の「変更」とは、次のようなことです。
- 売却
- 贈与
- 取り壊し
- 大規模なリフォーム
- 自分の共有持分の売却…各共有者が単独で実行できる
- 共有不動産全体の売却…共有者全員の合意が必須
③共有持分の売却後も立替金を請求できる<民法254条>
売却後も立替金を請求できるとは、過去に他の共有者の負担分を立替えたお金(固定資産税や修繕費など)については、請求できるということです。
- 以前の共有者
- 新しい共有者(買取業者など)
例えば、三人兄弟の共有名義で相続した戸建があり、長男が固定資産税やリフォーム代を立替えた後に、三男が持分を買取業者へ売却した場合、長男はその立替分を三男か買取業者に請求できるということです。
これは民法254条で規定されています。
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共有者の一人が共有物について他の共有者に対して有する債権は、その特定承継人に対しても行使することができる。
④共有物分割請求訴訟を提起できる<民法256条、258条>
共有物分割請求訴訟とは、共有者同士の協議では共有状態の解消ができない場合に、裁判所に分割方法を決めてもらう手続きのことです。
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共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる
-
各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる
まず共有者間での話し合いによる共有物分割請求を実施し、決裂した場合に裁判所への訴訟提起を行います。
分割の方法は次の3種類です。
- 現物分割…共有不動産を物理的に分けて各自の単独所有とする
- 代償分割…一人の共有者が不動産を取得し、他の共有者へ代償金を支払う
- 換価分割(かんかぶんかつ)…共有不動産を売却し、売却代金を持分比率で分配する
解決するまでに半年~かかります。
判決の結果は、競売による換価分割になることが多いです。
競売は通常の売却の30%~70%程度の価格になります。
例えば、評価額5,500万円の戸建が訴訟によって競売となると、本来の価格の1,650万円~3,850万円になるということです。
詳しくは、「共有物分割請求訴訟とは?3つの分割方法、流れ、費用、必要書類を解説」をご覧になってください。
⑤売却以外でも持分を処分できる<民法255条、369条、549条>
共有持分の処分とは、自分の持分の権利を変動させる行為のことです。
例えば、持分を売却すると持分の権利が変動して買主に移ります。
売却以外の処分方法は次の通りです。
| 処分方法 | 概要 | 根拠 |
|---|---|---|
| 贈与 | ・自分の持分を無償で第三者や他の共有者へ譲る ・受け取る相手の合意が必要になる |
民法549条 |
| 放棄 | 自分の持分を手放して、残りの共有者のものにする | 民法255条 |
| 不動産担保ローンの利用 | 自分の持分を担保として提供し、借入れを行う | 民法369条 |
贈与や放棄によって共有持分を受け取った人には、贈与税がかかる場合があります。
共有持分の放棄では、所有権移転登記が必要なので、完了させるには他の共有者の協力が必要です。
共有持分の売却に影響する「2023年の民法改正」の4つのポイント
- 共有物分割請求訴訟の要件が緩和され分割方法が明文化された
- 共有者が不明でもその持分の取得や売却ができる
- 持分を超えて利用した場合に対価を支払う
- 軽微な変更は過半数の同意で行える
順番にご案内いたします。
【ポイント①】共有物分割請求訴訟の要件が緩和され分割方法が明文化された
| 改正前 | 改正後 |
|---|---|
| 訴訟要件は「共有者同士の話し合いで合意できないとき」に限定 | ・民法258条により、協議に応じない共有者がいても訴訟できる ・分割方法の優先順位が明文化された |
先ほどもご案内したように分割方法は3種類あります。
その優先順位は次の通りです。
- 現物分割
- 代償分割
- 換価分割(任意売却、競売)
ほとんどのケースでは、現物分割や代償分割ではなく、競売による換価分割を行います。
競売による換価分割とは、裁判所が介入して強制的にオークション形式で売却し、その代金を分配することです。
競売について、より詳しくは、「共有持分が競売にかけられるとどうなる?」でご確認いただけます。
【ポイント②】共有者が不明でもその持分の取得や売却ができる
| 改正前 | 改正後 |
|---|---|
| 共有者の一人でも所在不明だと、事実上、共有不動産の処分や活用ができない | 民法262条の2と民法262条の3により、1年以上所在不明なら、裁判所の決定を経て不明者の持分を取得したり売却できる |
新設された制度は次の通りです。
| 制度 | 概要 |
|---|---|
| 所在等不明共有者持分取得制度 | 不明者の共有持分を他の共有者が取得できる(262条の2) |
| 所在等不明共有者持分譲渡の権限付与制度 | 不明者の持分を含めて第三者へ売却する権限を得られる(262条の3) |
改正前は、所在を確認できない人がいたら取得も売却もできませんでしたが、改正後はできるようになりました。
例えば、4人の共有者のうち1人が1年以上も行方不明の場合、残り3人の申立てにより裁判所が認めれば、不明者の持分の取得や第三者への売却ができるということです。
【ポイント③】持分を超えて利用した場合に対価を支払う
| 改正前 | 改正後 |
|---|---|
| 共有者の一人が実家に住み続けていても、他の共有者への対価の支払いに関する明確なルールが無かった | 民法249条2項により、「自己の持分を超える使用の対価を償還する義務」が明文化された |
本来、共有物の持分は自分の権利の範囲でしか使えません。
そのため、もし自分の持分以上の割合で利用して利益を得た場合は、他の共有者に対して、その分の価値を返す(償還する)義務があります。
例えば、三人兄弟で均等に共有している実家があり、次男だけ住んでいる場合、3分の2分の使用対価(賃料相当額)を他の二人に支払う義務があるということです。
仮に、その家に住む家賃の相場が15万円なら、5万円を長男と三男に渡すことになります。
【ポイント④】軽微な変更は過半数の同意で行える
| 改正前 | 改正後 |
|---|---|
| 屋根の修繕や外壁の塗装といった軽微な変更でも、共有者全員の同意が必要だった | 民法251条により、「形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」については、共有持分の過半数の同意で実施できる |
軽微な変更の具体例は次の通りです。
- 雨漏り修理
- 破損した窓ガラスやサッシの交換
- 屋根や外壁の修繕
- 設備(水道管、給湯器、エアコンなど)の修理・交換
共有持分の売却後のトラブルと対策
- 売却する人と他の共有者
- 売却する人と買取業者
- 他の共有者と買取業者
それぞれご案内していきます。
①売却する人と他の共有者のトラブル

この間柄では起こるのは次のようなトラブルです。
| トラブル例 | 概要 |
|---|---|
| 関係性が悪化する | 事前相談なしに持分を売却したことで信頼関係が破綻する |
| 売却した人にクレームが来る | ・共有者間で立てていた計画を実行できなくなった ・新たな共有者から営業を受けた(悪質・悪徳な業者だった) |
これらのトラブルが発生する原因は、他の共有者への事前説明や配慮が不十分だからです。
- 売却の前に必ず他の共有者へ相談する
- 売却後の影響や利用ルールを事前に共有する
- 必要であれば専門家を交えて合意形成を図る
②売却する人と買取業者のトラブル

この間柄では起こるのは次のようなトラブルです。
| トラブル例 | 概要 |
|---|---|
| しつこい営業を受ける | 買取業者によっては強引な営業をすることがある |
| 売却後に業者と揉める | 相場より極端に安い価格で買い叩かれ、後で「不当に安かった」と争うことになる |
| 追加費用を請求される | 「買取後に修繕箇所が見つかった」などと、費用を支払うよう求められることがある |
これらのトラブルが起こる原因は、悪徳、悪質な業者に依頼してしまったからです。
共有持分を扱う買取業者の中には、悪質な業者がまれにいます。
- 複数の業者から見積もりを取り比較する
- 弁護士と手刑している業者を選ぶ
- 契約書について司法書士などに相談する
③他の共有者と買取業者のトラブル

この間柄では起こるのは次のようなトラブルです。
| トラブル例 | 概要 |
|---|---|
| しつこい営業を受ける | 買取業者によっては強引な営業をすることがある |
| 敷地内に勝手に入られた | 買取業者によっては違法すれすれの交渉をすることがある |
| 家賃相当額を請求された | 買取業者によっては合法的に心理的な圧力をかけてくることがある |
| 訴訟された | 共有物分割請求訴訟を提起された |
買取業者の強引な営業によって嫌な思いをした他の共有者は、売主に抗議をしてくることがあります。
これらのトラブルが起こる原因は、売主が悪徳、悪質な業者に依頼してしまったからです。
専門性の高い不動産の売却先を選ぶ8つのポイント
| ポイント | 確認すべき内容 |
|---|---|
| ① 専門性 | 共有持分を専門的に扱っているか、買取の実績が豊富か |
| ② 信頼性 | 宅地建物取引士の在籍、弁護士との提携、口コミ・評価は良いのか |
| ③ 担当者の対応 | 価格提示や契約説明の分かりやすさや連絡の早さはどうか |
| ④ 買取スピード | 査定から契約、現金化までにかかる期間はどれぐらいか |
| ⑤ 契約条件 | 手数料の有無や契約で定められる免責範囲を伝えてくるか |
| ⑥ 対応エリア | 物件の場所が業者の対応地域に含まれているか |
| ⑦ アフターフォロー | 売却後の登記変更や税金関連の相談に応じてもらえるか |
| ⑧ プライバシー保護 | 個人情報や売却内容を適切に管理していることを明記しているか |
買取に対応しているのは、訳あり不動産の買取業者か、共有持分を専門にしている業者です。
弁護士と提携している共有持分の専門業者は、悪質・悪質な業者の確率は低いです。
・早く売却して現金化したいなら買取業者
・できるだけ高く売りたいなら仲介業者
をお選びください。
買取業者は自社で買取るので最短数日~で現金化できます。
売却価格の相場は、不動産の市場価格×持分割合×30~50%です。
例えば、 6,000万円の一戸建で持分が2分の1の場合、3,000万円ではなく、900〜1,500万円になるということです。
仲介業者はこの範囲でできるだけ高い金額を提示する買主を探してくれます。
持分の売却に対応している5社
- 共有持分支援協会
- 大正ハウジング
- 中央プロパティ
- トップショット
- ライズ
詳しくご案内します。
共有持分支援協会

共有持分が専門で、仲介と買取に対応している社団法人です。
共有持分に強い福本弁護士と提携しています。
買取は最短2日〜です。
手付金制度があり、最短翌日に渡しています。
一部だけの売却やリースバックにも対応しております。
社団法人の立場で親身に丁寧に対応しています。
利用料は無料です。
| 買取方法 | 仲介、買取 |
|---|---|
| 売却日数 | 最短2日 |
| 専門家の在籍 | 弁護士・司法書士・税理士 |
| 対応エリア | 全国 |
| その他 | 手付金(最短翌日)・持分の一部買取、持分のリースバック |
大正ハウジング

共有持分の買取を専門で行っている不動産会社です。
弁護士事務所と提携しています。
センチュリー21の加盟店です。
| 買取方法 | 買取 |
|---|---|
| 売却日数 | 最短1週間 |
| 専門家の在籍 | 弁護士 |
| 対応エリア | 全国 |
中央プロパティ

共有持分専門の仲介業者です。
弁護士事務所と提携しています。
査定から契約まで最短1週間〜です。
仲介手数料などが無料です。
センチュリー21の加盟店です。
| 買取方法 | 仲介 |
|---|---|
| 売却日数 | 最短5日 |
| 専門家の在籍 | 弁護士・司法書士・税理士 |
| 対応エリア | 全国 |
| その他 | AI×鑑定士のダブル査定 |
トップショット

共有持分専門の買取業者です。
1,000万件以上の不動産データに基づいたAIによる自動査定サービスを提供しています。
| 買取方法 | 買取 |
|---|---|
| 売却日数 | 不明 |
| 専門家の在籍 | 不明 |
| 対応エリア | 全国 |
ライズ

共有持分専門の買取業者です。
弁護士と提携をしています。
3日~30日以内に現金化をしています。
相談は無料、買取実績は1,000件以上です。
| 買取方法 | 買取 |
|---|---|
| 売却日数 | 最短3日 |
| 専門家の在籍 | 弁護士・司法書士 |
| 対応エリア | 一都三県 |
| その他 | 電話対応は21時まで |
まとめ
関連する民法を把握した上で、共有持分の売却をお進めください。
弁護士と提携している持分専門の業者なら、民法などを熟知していますので、安心して相談できます。
