共有持分の譲渡で必要な登記とは?手続きの4ステップや費用も解説!

「共有持分を譲渡するので登記の流れや費用を知りたい」
「登記しないとどうなる?」

このように考えていませんか?

このページでは、共有持分を譲渡した際の登記について、分かりやすくご案内しています。

この記事の作成者

専門相談員 戸田 良行Yoshiyuki Toda

【資格】宅地建物取引士
神奈川県出身。高校サッカーで全国大会進出を果たし、指導者の道に進む。その後、大手不動産会社で不動産のノウハウを蓄積する。諦めないことを信条に、お客様の希望を叶えるため日々奮闘中。

共有持分の譲渡と必要な登記


専門相談員
戸田(とだ)
ここでは、次の3つのことをご案内しています。
  1. 共有持分の譲渡とは
  2. 共有持分の譲渡で行う登記の種類
  3. 譲渡ではないが、登記が必要な行為

❶共有持分の譲渡とは

共有持分の譲渡とは、契約によって、自分の持分だけを他者に移転することです。

譲渡方法は次の3つです。

  • 売却…共有持分を売ってお金を受け取る(売買契約)
  • 贈与…無償で持分を渡す(贈与契約)
  • 財産分与…離婚時に夫婦間で持分を清算・分配する(財産分与契約)

譲渡の際、他の共有者の同意は不要です。

その理由は、民法第206条で自由に処分できると定められているからです。

第二百六条「所有権の内容」
    所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する

ただし、売却・贈与・財産分与いずれの場合も、契約の相手方の同意は必要です。


戸田
どの譲渡方法でも、他の共有者の同意は不要です。

なのですが、いずれも契約書を交わす必要があり、その契約相手の同意は必須ということです。

❷共有持分の譲渡で行う登記の種類

譲渡した後は「持分移転登記」を行います

持分移転登記が必要な理由は、民法第177条により、登記がなければ第三者に対して権利を主張できないと規定されているためです。

第百七十七条(不動産に関する物権の変動の対抗要件)

不動産に関する物権の得喪及び変更は、登記をしなければ、第三者に対抗することができない。


戸田
具体的なスクについては、共有持分の譲渡で登記せずに放置する4つのリスクでご案内しています。

通常の不動産を売却する場合は所有権移転登記を行います。

持分移転登記と所有権移転登記の違いは「移転範囲」にあります。

  • 持分移転登記…共有持分だけ移転する
  • 所有権移転登記…単独所有の不動産全体の所有権を移転する

2つの登記の違いについて、より詳しくはこちらの「共有持分の登記(持分移転登記)と所有権移転登記の違い」でご確認いただけます。

❸譲渡ではないが、登記が必要な行為

「共有持分の放棄」と「相続」、「代償分割(だいしょうぶんかつ)」は、譲渡ではありませんが、登記が必要です

譲渡ではないが登記が必要な行為
  1. 共有持分の放棄…自分の共有持分を無償で手放し、他の共有者のものにする行為
  2. 相続…亡くなった人(被相続人)の財産を相続人に承継する制度
  3. 代償分割…一人の相続人が他の相続人の持分を金銭を支払って取得する分割方法の一つ

譲渡では無い理由は、「契約をしない」からです。


戸田
それぞれの行為で必要な登記は次の通りです。
  1. 共有持分の放棄…持分移転登記
  2. 相続…所有権移転登記、もしくは持分移転登記(状況によって異なる)
  3. 代償分割(だいしょうぶんかつ)…所有権移転登記、もしくは持分移転登記(状況によって異なる)

共有持分の譲渡で登記が必要な3つのパターン

登記が必要な3つのパターン
  1. 共有持分を売却した
  2. 共有持分を贈与した
  3. 共有持分を財産分与した

詳しくご案内します。

【パターン①】共有持分を売却した

共有持分を買取業者などの第三者や他の共有者に売却した場合、速やかに持分移転登記を行う必要があります。


戸田
理由は、先ほどご案内した通り、民法第177条で「登記を備えていなければ第三者に対抗できない」と規定されているからです。
第百七十七条(不動産に関する物権の変動の対抗要件)

不動産に関する物権の得喪及び変更は、登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

この登記を行わないと、二重譲渡のリスクがあります。

【ケース】二重譲渡で、知人だけが損をした

兄が自分の持分2分の1を知人の経営者に売却したが、登記をしていなかった

その後、兄が亡くなり、兄の分を弟が相続した。

弟は過去の経緯を知らなかったので、兄の持分を自分の名義に登記して、買取業者に売却した。

その後、知人の経営者が兄の持分の権利を主張したが、買取業者は法律を盾に受け付けなかった

知人は泣き寝入りをせず、弟への訴訟を検討しているが、弁護士に「勝ち目が薄い」と言われて落ち込んでいる

【パターン②】共有持分を贈与した

贈与でも登記が必要な理由は、売買と同様に第177条が適用されるため、意思表示だけでは第三者への対抗力がないからです。

この登記を行わないと、二重贈与のリスクがあります。

【ケース】二重贈与で兄が父を訴えた

父と母で均等に共有している実家があり、父が長男に「将来のために」と贈与契約をして持分を贈与した。

兄は登記費用がかかるため、父の忠告を無視して、登記をせずに放置した。

数年後、父は譲渡したことを忘れ、兄とお金のことで揉めて関係が悪化し、弟に同じ持分を贈与し、登記を完了した。

兄は「贈与契約をした」と父に対して損害賠償請求の裁判を起こした

【パターン③】共有持分を財産分与した

財産分与とは、離婚の際に夫婦が共同で形成した財産を清算・分配する手続きのことで、民法第768条で規定されています。

第七百六十八条「財産分与」
    協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。

この場合でも登記が必要な理由は、何度もご案内している民法第177条が、財産分与にも適用されるからです。

【ケース】元夫の持分が差し押さえられた

離婚の際、妻が夫の持分2分の1を財産分与として受け取った。

財産分与協議書は作成したが、費用の節約のために登記はしていなかった。

その後、夫が多額の借金をし、その返済が滞ったため、債権者に登記簿上まだ夫名義の持分を差押さえられた

妻には対抗手段が無く、住んでいた家を出ていくことになった。

共有持分の譲渡で登記せずに放置する4つのリスク

4つのリスク
  1. 第三者に権利を主張できない
  2. 不動産担保ローンを利用できない
  3. 相続が複雑化する
  4. 共有者間でトラブルになりやすい

詳しくご案内します。

【リスク①】第三者に権利を主張できない

理由は、民法第177条で、「不動産に関する物権の得喪と変更は登記をしなければ第三者に対抗できない」と定められているからです。

共有持分の譲渡で登記が必要な3つのパターンでは、売却、贈与、財産分与で、登記をしていないことでトラブルになったケースをご案内しました。


戸田
これは、共有持分の放棄でも同様です。

共有持分の放棄とは、共有している不動産について自分の持分の権利を手放すことで、、放棄された持分は他の共有者のものになると民法255条で規定されています。

放棄は譲渡ではありませんが、登記しなければ第三者にその権利を主張できません。

【ケース】放棄後、登記せず、買取業者と揉めた

兄弟で実家を相続した。

兄は遠方に住んでいたため「俺はいらないからお前にやるよ」に伝えた。

2年後、兄は放棄したことを忘れ、持分2分の1を買取業者に売却し、業者が登記を完了した。

弟が買取業者から交渉を受けたため、兄や業者と揉めたが、登記していないためどうにもならないことが分かり、結局、弟は業者に自分の持分も売却した。

【リスク②】不動産担保ローンを利用できない

理由は、金融機関が登記簿を基準に融資審査を行うからです。

登記をしていなければ、登記簿上の名義人はまだ旧所有者のままです。

金融機関は登記簿上の名義人しか融資対象として認めないため、実質的に持分を取得していても不動産担保ローンを利用できません。


戸田
あまり知られていませんが、登記をしていれば、持分だけでも不動産担保ローンを利用できます

【リスク③】相続が複雑化する

複雑化とは、手間と時間、費用がかかることです。

相続で手続きが複雑化する理由は、次の通りです。

  • 不動産登記では権利変動の過程を省略できないため、順番どおりに登記する必要がある
  • 譲渡後に登記せずに当事者が亡くなると、譲渡による持分移転登記と相続登記の2つの手続きが必要になる
  • 相続によって共有者が増える場合、手続きに関わる人数が増え、協力を得づらいことがある

その影響で相続人・共有者間で感情的な対立が起こることがあります。


戸田
具体的なトラブルのケースをご案内します。
【ケース】相続後の登記がとても面倒だった

父が長男に不動産の持分2分の1を贈与したが、父が急死したため登記はしていなかった。

本来なら「父から長男への譲渡による持分移転登記」だけで済んだはずが、次のように2段階の手続きが必要になった。

  • 「父から相続人全員への相続登記」を行う
  • 「相続人から長男への持分移転登記」を行う

相続人全員(母・長男・次男)の協力が必要だが、次男が「そんな話は聞いていない」と非協力的で手続きが進まず、手間と時間がかかった

【リスク④】共有者間でトラブルになりやすい

民法251条では、共有物の変更には、全員の同意を得る必要があると規定されています。

第二百五十一条「共有物の変更」
    各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。

登記していないとトラブルになる理由は、登記簿上の共有者と実際の持分所有者が一致していないと次のような状態になるからです。

  • 第三者(役所・金融機関・買主など)は旧所有者を共有者として扱う
  • 特定の行為で登記簿上の旧所有者の同意や協力が必要になる
  • 新しい所有者は登記がないため、第三者に対して権利を主張できない

戸田
そのため、次のようなトラブルが起こる可能性があります。

  • 旧所有者に固定資産税の納税通知書の通知が届く
  • 売却やリフォームができない
  • 旧所有者の債権者が未登記の持分を差し押さえる
  • 二重譲渡、二重贈与による訴訟が起こる

共有持分の譲渡で必要な登記の4つのSTEPと必要書類、費用

登記の4つのSTEP
  1. 共有持分譲渡の契約をする
  2. 登記に必要な書類を準備する
  3. 法務局へ登記申請をする
  4. 登記完了の書類を受け取る

ご案内します。

【STEP①】共有持分譲渡の契約をする


戸田
譲渡の種類で必要な書類が異なります。
譲渡の種類 作成する書類
売却 不動産売買契約書
贈与 贈与契約書
財産分与 財産分与協議書(離婚協議書)

これらが必要な理由は、不動産登記法第61条により、不動産登記では、権利がどのような原因で移転したのかを証明する書類(登記原因証明情報)が必要になるためです。

第六十一条「登記原因証明情報の提供」
    権利に関する登記を申請する場合には、申請人は、その申請情報と併せて登記原因を証する情報を提供しなければならない。

譲渡には、他の共有者の同意は不要ですが、契約には契約者との同意が必要です。

かかる時間と費用は次の通りです。

  • 費用…印紙税(200円~数万円程度)
  • 時間…合意→契約書の作成・押印まで数日~数週間が目安

【STEP②】登記に必要な書類を準備する


戸田
登記申請に必要な書類は次の通りです。
書類 用途 取得先
登記申請書 申請のメイン書類 自分で作成または司法書士
登記識別情報(登記済証) 譲渡人が現所有者であることの証明 過去の登記時に交付
登記原因証明情報 登記原因の証明 STEP①で用意
印鑑証明書(譲渡人) 実印の真正性を証明 市区町村窓口
住民票(譲受人) 新所有者の住所・氏名の証明 市区町村窓口
固定資産評価証明書 登録免許税の計算根拠 市区町村窓口
本人確認書類 申請者の身元確認 運転免許証など
委任状 必要な場合(遠方に住んでいるなど)に人に任せる 自作(司法書士のひな形を使用)

印鑑証明書は発行から 3か月以内のものが必要です。

自分で用意する場合は、期限切れにならないよう、STEP③の申請直前に取得なさってください。

かかる時間と費用は次の通りです。

  • 費用…必要書類の交付手数料(各数百円)
  • 時間…書類一式の準備に数日~1週間程度

専門家に依頼する場合は、3万円~の報酬で司法書士に依頼することになります。


戸田
委任状については、「共有名義の不動産売却で必要な委任状」でご案内していますので、自作される場合はご一読ください。

【STEP③】法務局へ登記申請をする

書類が揃ったら、不動産の所在地を管轄する法務局に申請します。

申請方法は 3種類あります。

方法 特徴
窓口持参 その場で書類不備を確認してもらえる
郵送申請 遠方でも対応可能
オンライン申請 時間・場所を問わず申請できる

かかる時間と費用は次の通りです。

  • 費用…登録免許税、司法書士への報酬(3~10万円)
  • 時間…書類に不備がなければ、申請から登記完了まで1~2週間が目安

登録免許税の算出方法は次の通りです。

  • 持分の固定資産評価額 × 税率

固定資産評価額は、市区町村窓口で取得した「固定資産評価証明書」で確認できます。

税率は売買・贈与・財産分与で2%です。

例えば、固定資産評価額2,000万円の物件の持分2分の1を売買した場合、課税価格は2,000万円 × 1/2 = 1,000万円で、登録免許税は 1,000万円 × 2% = 20万円です。


戸田
土地1.5%、建物0.3%といった軽減税率が適用されることがあります。

正確な税額については、司法書士や管轄の法務局にご確認ください。

【STEP④】登記完了の書類を受け取る

登記が完了すると、2種類の重要書類が交付されます。

  • 登記完了証…登記が完了したことの証明書
  • 登記識別情報通知…新所有者の「権利証」に相当する重要書類

登記識別情報通知は、1度しか発行されず、再発行は一切できません。

紛失した場合は「事前通知制度」や「資格者代理人による本人確認情報提供制度」で対応しますが、手続きが煩雑になります。

譲渡後に、売却したり、不動産担保ローンを借りたりする際の登記で必要になりますので、大切に保管しておいてください。

かかる時間と費用は次の通りです。

  • 費用…郵送で受け取る場合は返信用の切手代500円前後
  • 時間…登記識別情報通知の受け取り期限は登記完了から3か月以内

登記の前に!【不動産別】共有持分の譲渡の注意点

共有持分の譲渡をする際の注意点は、次の不動産ごとで異なります。

  • 居住用不動産の場合
  • 農地の場合
  • 区分マンションの場合
  • 土地を借りている戸建ての場合
  • 土地の場合

登記の前にご確認ください。

居住用不動産の場合

居住用不動産の持分を譲渡する際は、ローンの残債と税制優遇の 2点を必ずご確認ください。

① 住宅ローン残債の確認

住宅ローンが残っている場合、住宅ローンを貸し出している金融機関の承諾なしに持分を譲渡できません

理由は「勝手に名義を変えてはいけない」という特約がローン契約に含まれているからです。

この特約があるのは、万が一返済が滞った際の差し押さえや競売が難しくなり、住宅ローンを貸した金融機関が、資金を回収できなくなるリスクが高くなるからです。

例えば、持分が買取業者などの第三者に渡った物件は、利用しづらいため、競売にかけてもとても買い手がつきづらいです。


戸田
住宅ローンの残高が家の売却価格より高い場合は、譲渡は難しいとお考えください。

② 税制優遇(譲渡所得税の特例)の確認

税制優遇の確認が必要な理由は、居住用不動産を売却した場合、一定の要件を満たせば税制上の特例が受けられるからです。

特例 内容
3,000万円特別控除 譲渡所得から最大3,000万円を控除できる
軽減税率の特例 所有期間10年超の場合、譲渡所得税・住民税の税率が軽減される
買換え特例 マイホームを売却した場合、一定条件下で課税を繰り延べられる

共有持分の場合でも、共有者それぞれが3,000万円控除を使える場合があります。


戸田
より詳しくは税理士にご相談ください。

農地の場合

農地の持分を譲渡する際は、農地法に基づく許可が必要です。

許可が必要な理由は、農地の権利移転(売買・贈与など)に農業委員会または都道府県知事の許可が必要と農地法第3条で規定されているからです。

許可を受けずに権利移転をしても法律上無効ですし、許可申請の審査には時間がかかります


戸田
事前に司法書士・行政書士にご相談ください。

区分マンションの場合

区分マンションの持分を譲渡する際は、管理組合への通知が必要です。

理由は次の通りです。

  • 管理費・修繕積立金の請求先を変更するため
  • 区分所有者名簿(管理規約に基づく名簿)を更新するため
  • 管理組合の運営(総会の招集・議決権行使)に関わるため

このような理由から、多くのマンション管理規約では、所有権移転時の通知義務が定められています。

通知を怠ると、次のような問題が起こることがあります。

  • 旧所有者に管理費の請求が続く
  • 管理組合からの連絡が新所有者に届かない
  • 総会で議決権者として扱われない

土地を借りている戸建ての場合

土地を借りている戸建てとは、借地権付き建物のことです。

土地を借りている戸建ての持分を譲渡する際は、地主の許可(借地権譲渡の承諾)が必要です。

理由は、建物を譲渡すると、それに付随する「土地を借りる権利(借地権)」もセットで譲渡することになるからです。

法的な根拠は、賃借権の無断譲渡は禁止という民法第612条です。

地主の承諾なく借地権を譲渡すると、土地の賃貸借契約を解除される可能性があります


戸田
なお、地主が承諾しない場合は、裁判所に許可を申し立てることができます。

土地の場合

土地の持分を譲渡する際は、隣地との境界を事前にご確認ください。

理由は、譲渡後のトラブルを防ぐためです。

境界が不明確な場合、譲渡後に次のようなトラブルが発生することがあります。

  • 「家の屋根がはみ出している」「塀の所有権が違う」と隣家からクレームが来る
  • 隣人が測量の立ち会いを拒否して、土地の売却が進まない
  • 譲渡を受けた共有者が売却したり、融資を受けたりできない

境界を確認し、不明確な点や問題がある場合は、測量(費用目安:30万円〜)を行って、境界確定図を作成しておくことをご検討ください。

まとめ

共有持分の譲渡と必要な登記、登記が必要なパターン、放置するリスクをご案内しました。

登記をせずにいることは、トラブルの種ですので、必ず行ってください。

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