「共有者が固定資産税を払ってくれないんだけど…」
「この後どうなるの?どうすればいい?」
このように考えていませんか?
この記事では、共有者が固定資産税を払わない原因と対策を、分かりやすくご案内します。
目次
共有者と話す前に必読!共有名義の固定資産税の3つの基本
- 「全員で負担」が原則
- 固定資産税は持分割合に応じて課税される
- 納付書は代表者に届く
❶「全員で負担」が原則
共有者は連帯して納税する義務があることが、地方税法10条2項で規定されています。
-
共有物、共同使用物、共同事業、共同事業により生じた物件又は共同行為に対する地方団体の徴収金は、納税者が連帯して納付する義務を負う
例えば、兄弟3人で実家を相続し、それぞれ3分の1ずつの持分を持っている状況で固定資産税が年間18万円だった場合、1人あたり6万円ずつ負担するということです。
❷固定資産税は持分割合に応じて課税される
「共有者は持分に応じて管理費用を分担する」と民法253条で規定されているからです。
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各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う
例えば、固定資産税が20万円で兄は持分5分の3、弟が持分5分の2の場合、兄が12万円、弟が8万円分を負担するということです。
「固定資産税負担に関する合意書」を自作し、共有者全員の署名・押印をして、自治体にご提出ください。
こちらに「固定資産税負担に関する合意書」のひな型がございますので、必要な方はチェックしてみてください。
❸納付書が代表者に届く
代表者として選ばれるのは次のような人です。
- 登記事項証明書(登記簿謄本)の筆頭者
- 実際に物件に居住している人
- 過去に代表者として届出がされている人
例えば、4人で共有している場合に、登記事項証明書の筆頭者に納付書が送られ、まとめて支払った後、他の共有者から持分に応じた金額を後から徴収することが多いです。
この書類は自治体によって雛形や名称が異なりますので、窓口でご確認ください。
なお、多くの市区町村では次のように年4回の分割払いを設定しています。
- 4〜6月…第一期納付
- 7〜9月…第二期納付
- 12月末…第三期納付
- 翌年2月末…第四期納付
固定資産税は一括で支払うこともできます。
自治体によって納付期限に違いがありますので、納付書でご確認ください。
共有者が固定資産税を払わない7つの理由
- お金が無い(経済的に払えない)
- 故意に払わない
- 疎遠で連絡がつかない
- 共有者が認知症などで判断能力がない
- 共有者が行方不明で連絡が取れない
- 共有者が死亡し、相続関係が複雑化している
- 自分が共有者だと認識していない
それぞれご案内します。
【理由①】お金が無い(経済的に払えない)
病気やケガ、失業などで収入が減ったり生活が苦しくなると、支払いたくても支払えません。
例えば、兄弟で実家を相続し共有したものの、弟が勤務先の倒産で失業し、自分の生活費すら捻出できない状況では、固定資産税の負担が重いため支払えません。
【理由②】故意に払わない
故意に払わない場合、考えられる理由は次の通りです。
- 共有者間の仲が悪く、相手を困らせたい
- 利用していないので不満がある
- その他(嫉妬や劣等感などの感情がある)
例えば、相続した別荘を兄弟で共有しているが、弟は一度も利用していないため「使ってもいない不動産の税金を払う義務はない」と支払わないといったことです。
【理由③】疎遠で連絡がつかない
相続などで共有関係が発生した場合、共有者同士が疎遠になっていると、払ってくれないことがあります。
例えば、一度も会ったことが無く、不動産の利用もしていない共有者に、「税金を負担してほしい」と伝えたら、その後応答してくれなくなったというケースです。
対策は次の通りです。
- 住民票・戸籍の附票で現住所を確認する
- 内容証明郵便で連絡を試みる
内容証明郵便とは、「いつ、誰が、誰に、どんな内容の文書を送ったか」を日本郵便(郵便局)が公的に証明してくれる郵便サービスで、支払いを請求する時に使います。
自作できますが、ご不安なら弁護士にご相談ください。
これでも対応してくれない場合は、弁護士に相談し、法的手続きをすることをご検討ください。
【理由④】共有者が認知症などで判断能力がない
認知症が進行すると契約行為や金銭管理ができなくなることが、民法3条の2で規定されています。
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法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする
例えば、母親と息子2人で実家を共有していたが、銀行が母親の認知症を知ったため、母親の預金口座から引き出すことができなくなるといったことがあります。
この場合は、成年後見人を選任する必要があります。
成年後見人とは、認知症などにより判断能力が不十分な人を法的に保護する人のことです。
成年後見人の選任は家庭裁判所に申し立てを行い、裁判所が審理した上で決定します。
家庭裁判所が「判断能力がない」と判断するのは、認知症以外には次の状態などがあります。
- 精神障害
- 脳機能障害
【理由⑤】共有者が行方不明で連絡が取れない
住所地を訪ねても不在で、家族や親族も居場所を知らない場合、固定資産税の請求や話し合いができません。
例えば、兄弟の共有名義で不動産を相続したが、弟が借金を抱えて突然失踪し、音信不通になるといったケースです。
この場合は弟の持分に相当する固定資産税は兄が立て替えて支払うことになります。
共有者が行方不明になったら、まずは次のことを行ってください。
- 警察に行方不明者届を出す
- 住民票・戸籍の附票で現住所を確認する
【理由⑥】共有者が死亡し、相続関係が複雑化している
相続が発生すると、亡くなった人の持分がさらにその相続人(配偶者や子供など)に細分化され、共有状態を知らない人が出てきます。
例えば、もともと「兄と弟」の2人共有だったのが、弟が亡くなり「兄と弟の妻と、弟の子供2人」の計4人の共有になり、さらに兄が亡くなり相続をする…、といった流れで、将来は、知らない人が出てきます。
この場合の対策は次の通りです。
- 自分の持分を売却する
- 遺産分割協議書で共有不動産売却する
- 共有物分割請求協議をする
共有物分割請求協議とは、共有状態を解消するために、共有者間で任意に話し合いを行い、共有不動産などをどのように分割するかを決める協議のことです。
協議が成立しない場合は、共有物分割請求訴訟を行うことがあります。

共有物分割請求訴訟とは、共有状態を解消するために、共有者が裁判所に対して共有不動産などの分割を求める法的手続きのことで、民法258条で規定されています。
共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる
詳しくは「共有物分割請求訴訟とは?」をご覧ください。
共有者が払わないとどうなる?
- 共有者全員に督促状が届く
- 滞納期間に応じて延滞金が発生する
- 滞納が続けば財産を差し押さえられる
詳しくご案内します。
❶共有者全員に督促状が届く
そのため、支払いや履行が遅れている相手に対して、期限内に支払うよう催促するための督促状が届きます。
例えば、長男が代表者として納付書を受け取ったものの支払いを忘れていると、納期限から20日以内に市区町村から督促状が発送されます。
これは、地方税法329条で規定されています。
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納期限までに市町村民税に係る地方団体の徴収金を完納しない場合においては、市町村の徴税吏員は、納期限後二十日以内に、督促状を発しなければならない
❷滞納期間に応じて延滞金が発生する
理由は、期限を過ぎた納税には追加の金利を課すことが、地方税法329条で規定されているからです。
-
納期限の翌日から納付の日までの期間の日数に応じ、年14.6%(納期限後1ヶ月以内は年7.3%)の割合を乗じて計算した延滞金を加算して納付しなければならない。(意訳)
延滞金は納期限の翌日から計算されます。
さらに次のように滞納期間で利率が変わります。
| 延滞日数 | 延滞金率 |
|---|---|
| 1ヶ月以内 | 年利2.4% |
| 1ヶ月以降 | 年利8.7% |
例えば、固定資産税20万円を3ヶ月滞納した場合、
- 最初の1ヶ月分は20万円×2.4%×30日÷365日で約400円
- 残りの2ヶ月分は20万円×8.7%×60日÷365日で約2,900円
合計で約3,300円の延滞金が上乗せされます。
この率は年度によって変動します。
また、延滞金が1,000円未満の場合は徴収されません。
❸滞納が続けば財産を差し押さえられる
理由は、督促状送付から10日を経過しても納付がない場合、自治体は財産を差し押さえなければならないと地方税法第331条で規定されているからです。
-
滞納者が督促状を受けて10日を経過しても完納しない場合、市町村の徴税吏員は、当該市町村民税に係る地方団体の徴収金につき、滞納者の財産を差し押えなければならない。(意訳)
差し押さえの対象の財産は次の通りです。
- 銀行預金
- 給与
- 自動車
- 貴金属
- 電化製品
- 不動産
- 有価証券
- 売掛金
- 生命保険契約など
例えば、銀行口座の一部が差し押さえられたり、共有不動産そのものに差押登記が入ったりすることもあります。
共有者が固定資産税を払わないときの4つの対処法
- 話し合いで支払いルールと負担割合を決める
- 立替分を請求する
- 支払督促・少額訴訟など法的手続きで回収する
- 共有者が死亡した場合は相続人に請求する
詳しくご案内します。
【対処法①】話し合いで支払いルールと負担割合を決める
共有名義に関するトラブルの原因の多くは意思疎通不足です。
定期的にルールについて話し合うことをご検討ください。
ルールとは例えば、「代表者が納付書をLINEで共有する」「5月末までに各持分に応じた額を代表者の口座に振り込む」といったことです。
【対処法②】立替分を請求する
代表者が立て替えて支払いを行った場合、他の債務者に対して負担分を請求できると、民法第253条で規定されています。
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●各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
●共有者が一年以内に前項の義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる。
例えば、4人で共有する不動産の固定資産税40万円のうち、1人が支払わなかった10万円分をあなたが立て替えた場合、電話やメールなどで請求できるということです。
【対処法③】支払督促の法的手続きで回収する
支払督促とは、裁判所を通じて相手に支払いを求めることができる法的な手続きのことです。
支払督促は通常の裁判よりも費用が安く、書類審査だけで行うことができます。
支払督促費用の手数料は次の通りです。
| 請求金額 | 手数料 |
|---|---|
| 100万円以下 | 10万円ごとに500円 |
| 100〜500万円以下 | 20万円ごとに500円 |
| 500〜1,000万円以下 | 50万円ごとに1,000円 |
| 1,000〜10億円以下 | 100万円ごとに1,500円 |
| 10〜50億円以下 | 500万円ごとに5,000円 |
| 50億円以上 | 1,000万円ごとに5,000円 |
例えば、請求金額が10万円の場合は、裁判所に支払う金額は500円です。
別途郵送費(数千円)がかかります。
- 申立てをする
- 裁判所の審査
- 支払督促の発付
- 相手方に2週間の異議申立期間
- 異議がなければ、仮執行宣言を申し立てる
- 裁判所が仮執行宣言付支払督促を発付
相手が異議を出さず、仮執行宣言を得た場合、給与や預金の差し押さえを強制執行することができます。
この場合、勤務先や銀行が直接あなたに支払いますが、相手の勤務先や銀行口座を事前に特定しておく必要があります。
不明な場合は、別途「財産開示手続き」を申し立てて調査することになります。
【対処法④】認知症・行方不明・死亡の場合は法的制度を利用する
本人に判断能力がない場合、契約や支払いの合意が成立しなません。
そのため、次のような法的制度を活用することになります。
| 共有者の状況 | 利用する制度 |
|---|---|
| 認知症 | 成年後見人制度 |
| 行方不明 | 不在者財産管理人 |
| 死亡 | 遺産分割調停または相続財産清算人を選任 |
例えば、母親が認知症で施設に入所している場合、家庭裁判所に成年後見開始の申立てを行い、後見人が選任されたら、後見人が母親の財産から固定資産税を支払えるように手配をします。
「固定資産税を払わないというトラブル」を根本的に解決する5つの方法
- 自分の持分を第三者に売却する
- 自分の持分を他の共有者に売買する
- 全員で合意して第三者に一括売却する
- 自分の持分を他の共有者に譲渡する
- 自分の持分を放棄する
それぞれご案内します。
❶自分の持分を第三者に売却する
自分の持分だけを売却することができることが、民法206条で規定されています。
-
所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
自分の持分だけであれば、他の共有者の同意、連絡などが無くても自由に売却できます。
こうすれば固定資産税の負担から解放されます。
ただし、一般の不動産会社では断られることが多いです。
また、悪徳・悪質な業者が増えてきています。
❷自分の持分を他の共有者に売買する
例えば、あなたの持分が1,000万円相当の場合、他の共有者に市場価格で買い取ってもらうということです。
持分が無くなるため、固定資産税の支払い義務から解放されます。
相手と交渉できる間柄で、相手に十分な資金がある場合は実施できます。
❸全員で合意して第三者に一括売却する
不動産全体を売却する場合は業者よりも高額で売れます。
例えば、評価額3,000万円の不動産を兄弟3人で共有している場合、全員の合意で売却すれば仲介手数料や諸費用を差し引いても2,800万円程度で売れる可能性があります。
この場合、持分が3分の1なら、約933万円を得られます。
❹自分の持分を贈与する
贈与とは、自分の財産を無償で相手に与えることです。
金銭のやり取りを必要とせず、契約をすれば持分移転できます。
売却と違って現金は手に入りませんが、手続きが簡単です。
❺自分の持分を放棄する
民法により持分を放棄すれば、その持分は他の共有者に帰属すると民法第255条で規定されています。
例えば、3人で均等に共有している不動産があり、あなたが持分3分の1を放棄すると残りの2人の持分が3分の1から2分の1になります。
ただし、登記をしないと完了しませんし、贈与とみなされて、共有者は贈与税を課税される可能性があります。
共有名義の相談ができる業者5社
- 共有持分支援協会
- 大正ハウジング
- 中央プロパティ
- クランピーリアルエステート
- AlbaLink(アルバリンク)
それぞれご案内していきます。
共有持分支援協会

共有持分を専門とする団体です。
仲介での高額売却と最短2日で現金化に対応しています。
弁護士や司法書士と連携しています。
| 買取方法 | 仲介、買取 |
|---|---|
| 高値売却 | 〇 |
| 売却日数 | 最短2日 |
| 専門家の在籍 | 弁護士・司法書士・税理士 |
| 対応エリア | 全国 |
| その他 | 手付金(最短翌日)・持分の一部買取、持分のリースバック |
大正ハウジング

共有持分を専門にした買取業者です。
20年以上の実績を持ち、弁護士と連携しています。
センチュリー21の加盟店です。
| 買取方法 | 買取 |
|---|---|
| 高値売却 | △ |
| 売却日数 | 最短1週間~ |
| 専門家の在籍 | 弁護士 |
| 対応エリア | 全国 |
| その他 | 無し |
中央プロパティ

共有持分の仲介に対応している不動産会社です。
弁護士と提携しています。
センチュリー21加盟店です。
| 買取方法 | 仲介 |
|---|---|
| 高値売却 | 〇 |
| 売却日数 | 最短5日 |
| 専門家の在籍 | 弁護士・司法書士・税理士 |
| 対応エリア | 全国 |
| その他 | AI×鑑定士のダブル査定 |
クランピーリアルエステート

訳あり物件の買取をしている会社です。
相談実績は年間約3,000件です。
弁護士と連携しています。
| 買取方法 | 買取 |
|---|---|
| 高値売却 | △ |
| 売却日数 | 最短2日 |
| 専門家の在籍 | 弁護士・司法書士・税理士 |
| 対応エリア | 全国 |
| その他 | 現況のまま買取に対応 |
AlbaLink(アルバリンク)

訳あり物件の買取をしている会社です。
法律事務所と連携しています。
全国対応です。
| 買取方法 | 買取 |
|---|---|
| 高値売却 | △ |
| 売却日数 | 最短2日 |
| 専門家の在籍 | 弁護士・司法書士 |
| 対応エリア | 全国 |
| その他 | 東京プロマーケット市場に上場 |
まとめ
共有持分の固定資産税を共有者が支払わない場合、どのようにするかをご案内しました。
あなたの状況に合わせて、ベストなご選択をなさってください。
