「自分の共有持分の評価を知りたい」
「評価の相場を把握して買い叩かれないようにしたい」
このように考えていませんか?
この記事では、共有持分の評価を計算する方法をプロが分かりやすくご案内します。
目次
共有持分を評価する方法の全体像
共有持分を評価する方法とは、複数人で共有している不動産のうち、所有している共有持分の価格(評価額)を算出する方法のことです。
例えば、次のイラストのような場合、「6,000万円の不動産の2分の1の持分だから、3,000万円なのでは?」とお考えになる方が多いです。
ですが、実際にはこのような評価はされません。
その理由は、共有名義・持分の不動産が一般の不動産と違うからです。
- 共有持分の評価額 = ①不動産の実勢価格 x ②持分割合 x ③評価割合30%~50%
①の「不動産の実勢価格(じっせいかかく)」とは、市場で取引されている時価のことです。
実勢価格は、国土交通省の不動産情報ライブラリで調べられます。
②の「持分割合」とは、所有している持分のことです。
法務局で取得できる登記事項証明書の「権利部(甲区)(所有権に関する事項)」に記載されています。
③の「評価割合」とは、不動産会社が査定を行う際に使う基準のことです。
通常の不動産(単独名義で所有されている不動産)は評価割合100%ですが、共有名義・持分の不動産の評価割合は30%~50%です。
例えば、6,000万円の実家を兄弟2人の共有名義で相続して、持分が2分の1ずつの場合、評価は3,000万円ではなく、900~1,500万円になるということです。
このように安くなる理由は、次のような要素を踏まえて減額する必要があるからです。
- 持分割合(保有している割合)
- 他の共有者の人数
- 他の共有者との関係性や状況
他の共有者との関係性や状況とは、「他の共有者との関係性が悪い」「税金の滞納がある」「一人だけが住んでいる」「連絡が付かない」といったことです。
こういった内容に対応する手間や時間を踏まえて、割引されます。
30%~50%と幅がある理由は、買主によって査定のポイントが異なるからです。
より詳しくはこちらの「共有持分の評価が低い理由」でご案内しております。
共有持分の評価の6つの算出方法
- 実勢価格を使う ←最も使われる方法
- 土地にも建物にも固定資産税評価額を使う
- 土地に路線価、建物に固定資産税評価額を使う
- 土地に評価倍率、建物に固定資産税評価額を使う
- 土地に公示地価、建物に再建築費を使う
- 土地に基準地価、建物に再建築費を使う
それぞれ詳しくご案内します。
【方法①】実勢価格を使う
前述の通り、実勢価格(じっせいかかく)とは、不動産(土地と建物)が市場で実際に売買された価格のことで、市場価格、時価とも呼ばれます。
計算式は次の通りです。
- 共有持分の評価額 = 不動産の実勢価格 x 持分割合 x 評価割合30%~50%
算出手順は次の通りです。
- 不動産の実勢価格を把握する
- ①の実勢価格に持分割合と減価割合(30~50%)をかける
実勢価格は、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」でチェックできます。
次の内容を参考にします。
- 実勢価格の参考材料
建物 | 参考材料 |
---|---|
マンション | 同マンションの取引事例、特に成約事例 |
戸建 | 更地価格、建物金額(築年数・室内の状況など) |
リフォームしている場合は、その費用を概算して査定します。
父から相続したマンションを兄と2分の1ずつ所有していた。
弟は、自分の持分を売却しようと買取業者に査定を依頼した。
このマンションは過去に6,000万円の取引事例があった。
この事例やリフォーム歴を考慮して減価割合35%の1,050万円と評価された。
弟は「持分が2分の1だから3,000万円になるのでは?」と、業者に質問したが、共有不動産についての説明を受け、納得して売却した。
【方法②】土地にも建物にも固定資産税評価額を使う
固定資産税評価額とは、固定資産税や都市計画税の課税基準となる価格のことです。
固定資産税評価額は次の方法で確認できます。
- 納税通知書
- 固定資産課税台帳の閲覧
- 固定資産評価証明書
毎年4~5月頃に送付される固定資産税の納税通知書で、土地と建物の評価額、持分の割合を確認できます。
計算方法は次の通りです。
- 共有持分の評価額 =((土地固定資産税評価額 × 持分割合) + (建物固定資産税評価額 × 持分割合)) × 評価割合30%~50%
色々調べた結果、次のことが分かった。
- 土地の固定資産税評価額:4,000万円
- 建物の固定資産税評価額:1,200万円
- 持分割合2分の1
- 評価割合:40%
上記の内容を計算式に当てはめたところ、評価額は1,040万円だった。
- 共有持分の評価額 =((4,000万円 × 2分の1)+(1,200万円 × 2分の1))×40%=1,040万円
【方法③】土地に路線価、建物に固定資産税評価額を使う
路線価とは、国税庁が発表する相続税や贈与税の算定基準となる価格のことです。
路線価は国税庁の「路線価図・評価倍率表」で確認できます。
載っていない場合は、全国地価マップをご利用ください。
路線価を使った計算式は次の通りです。
- 共有持分の評価額 = ((路線価 × 土地面積 × 持分割合) + (建物固定資産税評価額 × 持分割合)) × 評価割合30%~50%
色々調べた結果、次のことが分かった。
- 路線価:30万円/㎡
- 土地面積:100㎡
- 建物の固定資産税評価額:1,200万円
- 持分割合:2分の1
- 評価割合:40%
上記の内容を計算式に当てはめたところ、評価額は840万円だった。
- 共有持分の評価額=((30万円 × 100㎡ × 2分の1) + (1,200万円 × 2分の1)) × 40% = 840万円
【方法④】土地に評価倍率、建物に固定資産税評価額を使う
評価倍率とは、路線価が定められていない地域(倍率地域)の固定資産税評価額に一定の倍率をかけて、税務上の評価額を算出するための倍率のことです。
評価倍率の地域かどうかは、固定資産税の税額が書かれている書類で確認できます。
- 共有持分の評価額 = ((土地固定資産税評価額 × 評価倍率 × 持分割合) + (建物固定資産税評価額 × 持分割合)) × 評価割合30%~50%
評価倍率は、国税庁の「路線価図・評価倍率表」で調べられます。
評価したい共有不動産が倍率地域にある。色々調べた結果、次のことが分かった。
- 土地の固定資産税評価額:4,000万円
- 評価倍率:1.1倍
- 建物の固定資産税評価額:1,200万円
- 持分割合2分の1
- 評価割合:40%
上記の内容を計算式に当てはめたところ、評価額は1,120万円だった。
- 共有持分の評価額 =((4,000万円 × 1.1 × 2分の1)+(1,200万円 × 2分の1))×40% = 1,120万円
【方法⑤】土地に公示地価、建物に再建築費を使う
公示地価とは、国交省が発表する不動産取引や公共事業の基準となる土地価格のことです。
国土交通省の地価公示のページで調べられます。
「標準地の1平方メートル当たりの価格(円)」をご覧ください。
建物には、再建築費を使います。
再建築費とは、同じ建物を今新しく建て直すのに必要な費用のことです。
- 共有持分の評価額 = ((公示地価 ×土地面積 × 持分割合) + (再建築費 × 残存価値率 × 持分割合)) × 評価割合(30%~50%)
再建築費と残存価値率は、次のように計算します。
- 再建築費 = 建築単価(円/㎡) × 延床面積(㎡)
- 残存価値率 = 1 − (築年数 ÷ 法定耐用年数)
建築単価とは、建物を1㎡または1坪あたりで建てるのにかかる費用のことで、建物によって決まっています。
- 構造別の建築単価
建物構造 | 建築単価(目安)円/㎡ | 備考 |
---|---|---|
木造住宅 | 15〜25万円 | 一戸建て住宅の一般的な範囲 |
鉄骨造(S造) | 20〜30万円 | 中高層住宅・事務所などに多い |
RC造マンション | 25〜50万円以上 | マンション・高耐久建物向け |
木造の戸建の場合、建築単価(目安)円/㎡を15〜25万円で計算します。
法定耐用年数とは、建物が経済的に使用できると見なされる期間(減価償却の基準となる使用可能期間)のことで、国が資産の種類・構造・用途ごとに定めています。
- 法定耐用年数の目安
築年数 | 木造 | 鉄骨造 | RC造 |
---|---|---|---|
~10年 | 70~80% | 80~85% | 85~90% |
20年 | 40~50% | 55~65% | 65~75% |
30年 | 20~30% | 35~45% | 50~60% |
40年以上 | 0~20% | 20~30% | 30~40% |
リフォームや耐震補強をしている場合は、+5~10%補正することがあります。
築13年ぐらいの木造戸建だった。色々調べた結果、次のことが分かった。
- 公示地価:40万円/㎡
- 土地面積:120㎡
- 再建築費:3,000万円
- 残存価値率:0.4
- 持分割合:2分の1
- 評価割合40%の場合
上記の内容を計算式に当てはめたところ、評価額は1,200万円だった。
- 共有持分の評価額=((40万円 × 120㎡ × 2分の1) + (3,000万円 × 0.4 × 0.5)) × 40% = 1,200万円
【方法⑥】土地に基準地価、建物に再建築費を使う
基準地価とは、都道府県が発表する土地価格のことです。
公示地価がない場合の代替指標として使います。
基準地価は、国土交通省の不動産情報ライブラリや各都道府県の公式サイトで調べられます。
こちらは、令和6年東京都の基準地価格です。
↓↓
- 共有持分の評価額 =((基準地価 × 土地面積 × 持分割合)+(再建築費 × 残存価値率 × 持分割合)) × 評価割合(30%~50%)
どの計算方法でも、評価割合30%~50%をかけます。
共有持分の評価が低い3つの理由
- 活用しづらい
- トラブルが起きやすい
- 買い手が少ない
それぞれ詳しくご案内します。
【理由①】活用しづらい
共有持分の所有者が持っているのは所有権の一部だけです。
活用するには、他の人の同意が必要です。
- 共有不動産の活用
活用方法 | 内容 | 例 | 共有者の同意 |
---|---|---|---|
管理 | 利用する行為 | 第三者への賃貸 | 過半数の同意が必要 |
変更(小) | 著しい変化を伴わない行為 | 間取りを変えないリフォーム | 過半数の同意が必要 |
変更(大) | 形または性質に変化を与える行為 | 共有物全体の売却、大規模な修繕 | 全員の同意が必要 |
共有者が増えるほど不動産を活用するのに時間がかかります。
そのため共有持分を取得した買取業者は、全体の所有権を得るために、他の共有者の持分も購入して単独名義にし、リフォームをして再販するなどの活用をします。
【理由②】トラブルが起きやすい
共有持分はお金と人間関係が絡むためトラブルになりやすいです。
①持分の売り手と買取業者、②持分の売り手と他の共有者、③買取業者と他の共有者の間で、トラブルになることがあります。
トラブルとは、例えば、次のようなことです。
- 税金や費用の負担で揉める
- 使用方法で揉める
- 売却時期で揉める
- 裁判を提起される
時に裁判になるなど、買い手にとってリスクがあります。
活用するまでの時間や手間、訴訟のリスクなどを考慮する必要があるため、その分、評価は下がります。
【理由③】買い手が少ない
ここまでにご案内した通り、共有持分の活用には制限やリスクがあるため、普通の不動産より市場での需要が低いです。
次のような不動産会社では、査定を依頼しても断られることがほとんどです。
- 大手の不動産会社
- 一般的な不動産会社
- 地場の不動産会社
買取に対応できる業者が少なく、価格競争が起きづらいため、単独名義の不動産と比べて価格は安くなります。
共有持分の評価を依頼するなら買取業者?仲介業者?
- 買取業者と仲介業者の違い
内容 | 買取業者 | 仲介業者 |
---|---|---|
売却価格 | 仲介より安い | 実勢価格の30%~50% |
売却スピード | 数日~数週間 | 数日~数週間 ※買取より時間がかかることが多い |
手数料 | なし | 仲介手数料が発生 |
買主 | 買取業者 | 買取業者、投資家、大家など |
交渉の手間 | 基本的にかからないが、業者によっては価格や条件の交渉有り | 基本的にはかからないが、業者によっては価格や条件の交渉有り |
評価基準 | 業者ごとに違う | 業者ごとに違う |
まず、大前提として、共有持分に対応している業者に依頼してください。
訳あり物件の会社や共有不動産の専門会社がありますが、できれば共有不動産を専門としている会社をお探しください。
その上で、高く売却したい場合は仲介業者に依頼してください。
早く現金化したい場合は買取業者に依頼してください。
ただし、中には安く買い叩こうとする悪質・悪徳な業者がいます。
自分で計算した金額より査定額が低い場合は、理由を必ず聞いてください。
共有持分の評価に対応している5社
- 共有持分支援協会
- 中央プロパティー
- 大正ハウジング
- クランピーリアルエステート
- アルバリンク
それぞれ詳しくご案内します。
共有持分支援協会
共有持分を専門に取り扱う社団法人です。
独自のネットワークを持つ仲介システムで、高額売却を実現しています。
早く現金化したい方には、最短2日での買取を行っています。
その際、最短翌日に手付金を先に渡しています。
持分の一部売却やリースバックにも対応できるほど、専門性が高いです。
社団法人の立場で、親身に丁寧に対応しています。
所在地は東京都千代田区丸の内です。
買取方法 | 仲介、買取 |
---|---|
高値売却 | 〇 |
売却日数 | 2日 |
専門家の在籍 | 弁護士・司法書士・税理士 |
対応エリア | 全国 |
その他 | 手付金(最短翌日)・持分の一部買取、持分のリースバック |
中央プロパティー
共有持分専門の仲介業者です。
独自の入札制度で高値での売却をサポートしています。
弁護士が無料で面談に同席するサービスを提供しています。
創業は2011年で、所在地は東京都千代田区丸の内です。
買取方法 | 仲介 |
---|---|
高値売却 | 〇 |
売却日数 | 5日 |
専門家の在籍 | 弁護士・司法書士・税理士 |
対応エリア | 全国 |
その他 | AI×鑑定士のダブル査定 |
大正ハウジング
共有持分専門の買取業者です。
弁護士事務所と提携しています。
センチュリー21加盟店です。
創業は1995年で、所在地は東京都北区昭和町です。
- ポイント
買取方法 | 買取 |
---|---|
高値売却 | △ |
早期売却 | 最短1週間~ |
専門家の在籍 | 弁護士 |
対応エリア | 全国 |
その他 | 無し |
クランピーリアルエステート
共有持分を含む訳あり物件専門の買取業者です。
相談対応の実績は年間3,000件を超えています。
弁護士・司法書士と提携してサポートする体制があります。
自社買取を前提とした高額の買取を行っています。
創業は2018年で、所在地は東京都中央区築地です。
買取方法 | 買取 |
---|---|
高値売却 | △ |
売却日数 | 2日 |
専門家の在籍 | 弁護士・司法書士・税理士 |
対応エリア | 全国 |
その他 | 現況のまま買取に対応 |
アルバリンク
共有持分を含む訳あり物件に特化した買取業者です。
累計100件超の共有持分の取り扱い実績があります。
創業は2011年で、所在地は東京都江東区木場です。
買取方法 | 買取 |
---|---|
高値売却 | △ |
売却日数 | 数日 |
専門家の在籍 | 弁護士・司法書士 |
対応エリア | 全国 |
その他 | 東京プロマーケット市場に上場 |
まとめ
共有持分の評価額の算出方法をご案内いたしました。
自分で算出した評価額はあくまで参考値です。
正確な金額を知りたい場合は業者に査定を依頼してください。