「共有物分割請求訴訟をしたい。注意点や手順、費用などを把握したい。」
「共有物分割請求訴訟の訴状が届いた。…どうなるの?」
このように考えていませんか?
このページでは、共有物分割請求訴訟について、プロが分かりやすくご案内します。
目次
共有物分割請求訴訟とは?
共有物分割請求訴訟とは、複数人で所有する不動産などを法的に分割し、共有状態を解消する手続きのことです。
共有不動産の分割方法について、共有者同士で話し合い(協議)がまとまらない場合に、共有者の一人(もしくは複数人)が原告となり、提起します。
裁判は1年程度で決着が付くことが多いです。
裁判の結果は、3つの分割方法のいずれかになる
裁判では、次の3つの分割方法が検討されます。
- 現物分割…不動産を物理的に分筆して単独名義にする
- 代償分割…1人の単独名義にして、他の共有者に代償金を支払う
- 換価分割(かんかぶんかつ)…売却して現金を分ける(任意売却 or 競売)
任意売却とは、共有者全員が同意して、一般市場で不動産を売却することです。
訴えられた被告は、裁判に出廷するか弁護士に代理で出廷してもらい、主張を伝えます。
裁判は1年程度で、和解か判決で決着が付くことが多いです。
和解でも判決でも換価分割になることが多い
3つの分割方法のうち、「換価分割」が採択されるケースが最も多いです。
他の方法が現実的ではないからです。
換価分割では、次のどちらかの方法で不動産を現金化し、持分割合に応じて分配します。
- 和解の場合…全員が同意して売却(任意売却)をする
- 判決の場合…裁判所が競売(けいばい)をする
任意売却と競売の違いは次の通りです。
-
和解による任意売却なら市場価格相当の金額で売却できますが、競売の場合は市場価格の50%~80%になります。
理由は、競売には買主にデメリット(内覧不可、瑕疵担保責任なしなど)があるからです。
例えば、6,000万円の実家の訴訟で、和解案で換価分割する場合、持分が3分の1なら、約2,000万円ほどの現金を手にすることになります。
ですが、判決で競売になった場合、受け取れる現金は約1,000万円~約1,600万円ほどになってしまいます。
※実際には売却費用などを差し引いた金額を受けとります
金銭的には和解の方がメリットが大きいですが、それでも、判決で競売になるケースはあります。
それだけ、共有者の関係性がこじれてしまっているということです。
参考)福本法律事務所「共有物分割請求の換価分割とは」
共有物分割訴訟を提起に至った5つのケース
- 共有者と揉めた
- 現金化したい
- 他の共有者と関係を断ちたい
- 共有者間での合意が難しい
- 協議ができない共有者がいる
それぞれご案内します。
【ケース①】共有者と揉めた
父が亡くなり、兄弟3人で実家の土地を相続したが、「誰が住むか」「いつ売却するか」で意見が対立。
感情的な争いに発展し、兄弟の関係が悪化し、解決の見通しが立たなくなった。
共有物分割請求訴訟を提起した結果、土地を売却し、代金を持分に応じて分配。
兄弟間の争いは、表面上、終息した。
感情的に対立し、話し合いが困難な場合は、裁判所に提起することをご検討ください。
【ケース②】現金化したい
3人の兄弟が実家を共有名義で相続した。
長男は「売却して現金化したい」「固定資産税とか払いたくない」と伝えたが、弟たちは「まだ住める家だから」と売却に反対した。
話し合いをしてもダメだったので、長男は訴訟を提起した。
その結果、不動産は競売にかけられ、売却代金は3人で持分に応じて分配された。
共有者が反対していると、単独の不動産としては、売却できません。
ただし、自分の持分だけなら自由に売却できます。
手付金をお渡しすることができますので、まずは一度、お気軽に査定をご依頼ください。
【ケース③】他の共有者と関係を断ちたい
夫婦で購入したマンションを離婚後も共有していた。
元夫と連絡を取るのが精神的に苦痛だったため、元妻は「現金化して関係を断ちたい」と希望し、弁護士を通じてやり取りをしたが、売却に応じなかった。
妻は訴訟を提起し、マンションは売却され、代金はそれぞれに分配された。
共有関係を無理に維持する必要はありません。
裁判で法的に完結させることができます。
【ケース④】共有者間での合意が難しい
相続で取得したアパートがあり、兄は「売却したい」が、弟は「継続したい」と対立した。
収益の分配や固定資産税や維持費の負担も含めて、何度も電話やメールなどでやり取りしたが、折り合いがつかなかった。
兄が共有物分割請求訴訟を提起した。
結果、裁判所の判断によりアパートが売却され、代金は持分に応じて分配された。
裁判の結果には強制性がありますので、収益や負担が不平等を解消できます。
【ケース⑤】協議ができない共有者がいる
相続で取得した市街地の不動産を兄弟3人で共有していた。
次男は10年前から海外に住んでおり、連絡が取れない状態が続いていた。
売却の話が持ち上がったが、次男の同意が必要なため協議が成立せず、管理費や税金を他の兄弟で負担していた。
色々と手を尽くしたが海外にいる弟に連絡が取れなかったので、兄が訴訟を提起。
半年後、判決結果に沿って売却代金を持分に応じて分配した。
次男の分は法務局に供託し、将来、次男と連絡が取れるようになった時に、受け取れるようにした。
連絡が取れない共有者がいても、訴訟を提起できます。
共有物分割訴訟による3つの判決パターン
- 現物分割
- 代償分割
- 換価分割
それぞれご案内します。
【パターン①】現物分割
現物分割とは、不動産を物理的に分けて、単独名義で所有する方法のことです。
メリットは次の通りです。
- 共有関係を確実に解消できる
- 所有権を明確にできる
デメリットは次の通りです。
- 費用や時間がかかる
- 不動産の価値が下がることがある
- 相手が応じない場合がある
相手が応じない(拒否した)場合は、換価分割になることが多いです。
一戸建ての建物、面積が小さい土地など、物理的に分割できない場合は、現物分割にはなりません。
【パターン②】代償分割
代償分割とは、一人が物件を取得し、他の共有者に代償金を払う方法のことです。
メリットは次の通りです。
- 住み続けられる
- 不動産の価値を最大限に活かせる
- 不動産の利用や管理をしやすい
デメリットは次の通りです。
- 代償金を準備する必要がある
- 代償金の算定で揉めることがある
代償金の準備が最大のネックです。
例えば、6,000万円実家があり、持分4分の1の場合、残りの4分の3(約4,500万円)を、他の共有者に支払う必要があります。
相手が応じない(拒否した)場合は、やはり換価分割になることが多いです。
【パターン③】換価分割
換価分割とは、不動産を第三者に売却し、その代金を持分に応じて分ける方法のことです。
他の方法が難しい場合に採択されます。
メリットは次の通りです。
- 現金が手に入る
- 金銭の分配に不公平感が無い
デメリットは次の通りです。
- 競売の場合、安い金額にしかならない
- 住めなくなる
- 売れるまでに時間がかかることがある
- 売却すると、手続きや費用、税金などが発生する
和解の場合は任意売却、判決の場合は競売になります。
任意売却すると市場価格で売却できますが、競売すると売却価格は市場価格の50%~80%になってしまいます。
任意売却する場合は、全員の同意が必要ですが、顔を合わせて話をする必要はありません。
それでも関係性がこじれにこじれて、競売になるケースがあります。
裁判は1年ほど続くことが多いので、その間、ずっと精神的なストレスがかかってしまいます。
なお、自分の分を売却することは、いつでも自由にできます。
他の共有者の同意などは一切不要です。
共有物分割請求訴訟の5つのメリット
- 不動産を現金化できる
- 相手に拒否権は無い
- 共有状態を強制的に解消できる
- 公正な判決なので納得感が高い
- 将来のトラブルを予防できる
詳しくご案内します。
【メリット①】不動産を現金化できる
現金化とは、共有不動産を売って代金を分け合うことです。
現物分割でも、代償分割でも、売却することで、現金化できます。
現金は自由に使えますし、相続人が複数いても分配しやすいです。
実家の土地を兄弟3人で共有していたが、長男は「売却して、子どもの学費と自宅のリフォーム費用に充てたい」と考えていた。
だが、他の兄弟は売却に消極的で、協議をしたが平行線だった。
そこで、長男は訴訟を提起した。
1年後、換価分割によって土地が売却され、持分に応じて代金を分配。
長男は学費と住宅費に充てた。
【メリット②】相手に拒否権は無い
民法第256条により、共有者はいつでも共有物の分割を請求できます。
共有者が「分割したくない」と言っても、法的に拒否することができず、手続きは確実に進みます。
兄弟3人で相続した実家がある。
次男は早期に持分を売却したかったが、長男の反対にあっていた。
仲が悪く、話し合いをしても険悪になるばかりだった。
そこで次男は訴訟を提起した。
長男は「手放したくない!」と反対してきたが、拒否できないため、裁判所の判断で不動産を競売した。
【メリット③】共有状態を強制的に解消できる
共有状態の解消とは、複数人で共有している状態を、単独所有にしたり、売却して代金を分配したりすることです。
他の共有者が同意しなくても、法的に、強制的に解消できます。
夫婦が離婚後も、マンションを共有名義で、持分2分の1ずつ所有していた。
元妻は「売却して清算したい」と希望したが、元夫は「住み続けたい」と反対した。
元妻が訴訟を提起した結果、裁判所が換価分割の判決を下した。
マンションは売却され、代金を半分ずつ分配し、共有関係が終了した。
【メリット④】合理的で公平なので納得感が高い
裁判所は客観的な情報(不動産の評価や持分)にもとづいて、合理的に公平に分割します。
そのため、納得感が高く、その後に争いが起きづらいです。
長女と2人兄弟で相続した共有名義のアパートがあった。
資産整理をしたかった長女は「今がいいタイミングなので売却したい」と希望したが、兄弟は「賃貸収入が無くなる」と反対した。
話し合いがまともにできず、兄弟が状況を理解していないようなので、姉は訴訟を提起した。
裁判で、兄弟が考えていた以上の価格で売却できることが分かり、手続きはスムーズに進んだ。
その後、3人の仲は回復し、以前のように交流している。
【メリット⑤】将来のトラブルを予防できる
将来のトラブルとは、利用方法や費用の負担などを起点にした対立などのことです。
例えば、次のようなことです。
- 住むのか売るのか貸すのかで揉める
- 固定資産税や修繕費の分担で揉める
- 共有者が多すぎて解決できずに揉める
裁判で強制的に解消しておくことで、トラブルを防ぐことができます。
複数の相続を経たことで、名義が整理されていない不動産があった。
登記上はすでに亡くなった先祖の名前のままで、実際の権利者は誰なのかが不明だった。
売却しようにも、不動産会社が「対応できない」と断ってきた。
共有者同士の話し合いができず、利用方法や管理費や固定資産税の負担で揉めた。
共有者の1人が「負動産を残したくない」と決心して、訴訟を提起。
1年後に解決した。
共有物分割請求訴訟の5つのデメリット
- 費用がかかる
- 時間がかかる
- 人間関係が悪化する可能性がある
- 思い通りに分けられないことがある
- 売却で資産価値が下がる場合がある
詳しくご案内します。
【デメリット①】費用がかかる
- 費用の例と目安
費用の例 | 目安 |
---|---|
印紙代 | 数千円〜数万円程度 |
郵便切手代などの実費 | 数千円かかる |
登記事項証明書取得費用 | 600円/枚 |
戸籍謄本 | 450円/枚 |
図面の取得費 |
|
弁護士費用 |
|
共有物分割請求訴訟には、裁判のための費用や弁護士費用などが発生します。
調停や和解が長引いたり、回数が増えたりすると、追加費用が発生することがあります。
【デメリット②】時間がかかる
- 時間の目安
内容 | かかる時間 |
---|---|
任意交渉のみで解決 | 1〜3ヶ月程度 |
地方裁判所の調停 | 3〜6ヶ月が一般的 |
地方裁判所での訴訟 | 6ヶ月〜1年以上かかることもある |
解決までには相応の時間がかかります。
次のような理由で、1年以上かかることがあります。
- 共有者が複数いる場合、全員との連絡・日程調整に時間がかかる
- 鑑定や現地調査が必要で数ヶ月延びる
【デメリット③】関係が悪化する可能性がある
そもそも、訟訟をするということは、前提として過去に対立があり、いざこざがあったということです。
裁判では、「原告」と「被告」という「敵対関係」になります。
勝ち負け争うため、ときに相手の落ち度や不当な言動を証拠として提出することがあります。
間に弁護士が入ったとしても、関係性は悪化しやすいです。
【デメリット④】思い通りに分けられないことがある
裁判の結果、自分の希望通りに不動産を取得できなかったり、想定していた金額にならなかったりすることがあります。
できるだけ納得感のある結果になるように、次のようにしてみてください。
- 弁護士に相談し戦略を練る
- 経済的合理性を軸に交渉する
共有名義、持分の不動産に強い弁護士を探してください。
【デメリット⑤】売却で資産価値が下がる場合がある
裁判所の結果、競売になると、市場価格の50%~80%ほどの価格で売却することになります。
理由は、買い手に次のようなリスクがあるからです。
- 内覧できない(現況引渡しが原則)
- 瑕疵があっても保証が無い
- 占有者が退去しない可能性がある
例えば、実勢価格3,000万円の戸建が、競売で約2,000万円(約33%)で落札された場合、共有者全員が約33%の損をすることになります。
共有物分割請求訴訟の手続きと全体の流れ、費用や期間の目安
- 事前に共有者間で協議を行う
- 弁護士に相談する
- 共有者間で調停を行う
- 訴状を提出する
- 相手方へ訴状を送達する
- 裁判所で口頭弁論を行う
- 裁判所の和解勧告を検討する
- 和解 or 判決で終了する
訴訟の前に、共有物の分割について協議をします。
協議で落としどころを見つけられなかった場合、共有者が原告となり、他の共有者を提訴します。
訴訟は和解か判決で決着します。
かかる費用は次の通りです。
- 費用の例と目安
費用の例 | 目安 |
---|---|
印紙代 | 数千円〜数万円程度 |
郵便切手代などの実費 | 数千円かかる |
登記事項証明書取得費用 | 600円/枚 |
戸籍謄本 | 450円/枚 |
図面の取得費 | 公図(地図)、地積測量図、建物図面・各階平面図…各500円前後/枚 不動産鑑定(必要な場合) 10万〜 |
弁護士費用 | 着手金…20〜50万円 報酬金…経済的利益の10〜15%程度 交通費など…実費 |
時間の目安は次の通りです。
- 時間の目安
内容 | かかる時間 |
---|---|
任意交渉のみで解決 | 1〜3ヶ月程度 |
地方裁判所の調停 | 3〜6ヶ月が一般的 |
地方裁判所での訴訟 | 6ヶ月〜1年以上かかることもある |
ここからは、手続きについて詳しくご案内します。
【手続き①】事前に共有者間で協議を行う
申し立て前に、次の内容を協議します。
- 物件を誰が取得するか
- 現物で分けられるかどうか
- 売却の場合は、価格や売却方法
- 代償金の場合、支払能力の有無
- 費用や税金の負担割合
話し合いは文書や電話、立会人を交えた面談など形式は問いませんが、証拠として必ず記録を残しておいてください。
協議がまとまれば、円満に共有状態を解消できます。
協議の時点で弁護士に相談する人は多いです。
【手続き②】弁護士に相談する
協議が成立しなかった場合は、弁護士にご相談ください。
相談内容は次の通りです。
- 共有状態の解消方法
- 調停や訴訟の進め方
- 必要な書類
- 費用の目安
- 期間の目安
- 想定されるリスク
- 交渉の戦略
共有状態の解消とは、現物分割・代償分割・換価分割のことです。
弁護士の見つけ方は次の通りです。
- 無料相談を活用する
- 共有名義、持分、不動産に強い弁護士を探す
- 家族、親族、友人、知人などに紹介してもらう
初回相談無料の事務所を活用して、複数の弁護士を比較してください。
【手続き③】共有者間で調停を行う
調停とは、裁判官と調停委員が当事者間の話し合いを仲介し、紛争の自主的な解決を促すための制度のことです。
ただし、この訴訟では調停前置は不要なため、共有者間で協議が不調に終われば、調停をせずに、すぐに訴訟を提起することできます。
調停をする場合の手順は次の通りです。
- 裁判所に「共有物分割調停申立書」を提出する
- 共有者全員の情報(不動産の登記事項証明書など)を準備する
- 調停期日に共有者が順番に呼び出される
- 調停委員を交えて希望内容や妥協点を整理する
- 合意に至れば調停調書が作成される
調停は、訴訟に比べると精神的・金銭的な負担が少ないです。
調停で解決できれば、これ以上の関係性の悪化を避けられます。
【手続き④】訴状を提出する
不動産の所在地を管轄する裁判所に、訴状を提出すると訴訟が始まります。
次の手順で提出してください。
- 訴状を2部(裁判所提出用と被告送達用)作成する
- 不動産の登記事項証明書や必要書類を準備しする
- ①と②を裁判所の受付窓口に直接提出する(郵送でも可)
訴額(そがく)という、持分などに応じた請求する金銭的価値の総額を、訴状に明示します。
訴状の作成や証拠書類の準備には法的な知識が必須です。
弁護士のサポートを受けながら進めます。
【手続き⑤】相手方へ訴状を送達(そうたつ)する
訴状を送達し、相手に届いたら、裁判が始まります。
送達の手順は次の通りです。
- 裁判所に訴状の内容を確認してもらう
- 裁判所が相手方へ訴状を特別送達郵便で郵送する
特別送達郵便とは、ポスト投函ではなく、本人または家族が直接受け取る形式の郵便のことです。
相手が受け取りを拒否したり、行方不明だったりした場合は、「付郵便送達」や「公示送達」といった別の手続きをします。
【手続き⑥】裁判所で口頭弁論を行う
口頭弁論とは、裁判所で原告と被告がそれぞれの主張を述べ、証拠を提出しながら、裁判官の前で争点を整理していく手続きのことです。
具体的には次のようなことが行われます
- 原告が訴状に基づき請求内容を説明する
- 被告が答弁書で反論や意見を述べる
- 裁判官が主張内容の確認や事実の整理を行う
- 証拠書類や資料が提出される
- 必要に応じて次回期日が設定される
一度で終わることは少なく、複数回にわたって継続的に行われます。
主張や証拠の出し方の伝え方は、結論に影響します。
ですので、弁護士とよく話し合ってください。
【手続き⑦】裁判所の和解勧告を検討する
和解とは、当事者間の争いを終わらせるために、当事者が主張を一部譲り合って、合意することです。
検討し、和解に合意したら、その内容が「和解調書」に記載されます。
確定判決と同じ法的効力がありますので、速やかにその内容に沿って、不動産の移転登記や売却手続き、代償金の支払いなどを行います。
換価分割で任意売却をすることが多いです。
任意売却とは、裁判所の判決や強制競売によらず、共有者全員の同意のもとで不動産を一般市場で売却することです。
【手続き⑧】和解または判決で終了する
訴訟の最後は、和解か判決で終結します。
裁判所の判断や合意内容をもとに手続きが確定します。
換価分割で競売(けいばい)をすることが多いです。
競売とは、裁判所が不動産を売却する方法のことです。
買主にリスクがあるため、一般的な価格よりも50%~80%ほど安い価格になってしまいます。
もし判決内容に不服がある場合は、2週間以内に、控訴(上級裁判所に再審理を求める手続き)をする必要があります。
また、相手が義務を果たさない場合は、強制執行で財産差し押さえされます。
どんな結果になったとしても、速やかに正しく手続きできるように、司法書士や弁護士を利用してください。
共有物分割請求訴訟に必要な書類
- 共有物分割請求訴訟の訴状と写し
- 不動産登記事項証明書と公図・地積測量図
- 契約書や遺言書などの資料
- 税関係書類
- 本人確認書類
詳しくご案内します。
共有物分割請求訴訟の訴状と写し
訴状とは、裁判を起こすための正式な文書です。
共有物分割請求訴訟では、次の内容を記載します。
- 物件の内容(所在地・種類など)
- 共有者全員の氏名
- 各共有者の持分割合
- 希望の分割方法(現物分割・代償分割・換価分割など)
訴状は裁判所用・被告送達用の他に、自分用の控えを作成してください。
裁判所や公式サイトなど書式を取り寄せて、自分で作成することができます。
ただし、記載内容に不備があると受理されないことがありますので、不安がある場合は、弁護士にご依頼ください。
不動産登記事項証明書と公図・地積測量図
裁判所が不動産の内容を把握し、分割方法の判断をするために必要です。
不動産の内容とは、共有物件の所有者や持分、土地の形状・面積などのことです。
- 具体的な書類
書類 | 概要 |
---|---|
不動産登記事項証明書 | 所在地・地番・所有者・持分・抵当権などの権利関係を記載
費用は600円〜700円 |
公図 | 土地の大まかな位置関係を示す図面 |
地積測量図 | 土地の正確な面積・形状・境界線などを示す図面
取得費は1通450〜500円 |
これらはすべて法務局や、法務局のオンラインサービスなどで取得できます。
契約書や遺言書などの資料
共有物分割請求訴訟では、当該不動産が「共有状態である」ことを明確に示す書類を証拠として提出します。
裁判所はこれらの書類をもとに、分割の可否や方法を検討します。
- 具体的な書類
書類 | かんたんな解説 | 取得方法・費用 |
---|---|---|
契約書 | 共同購入時の売買契約書や持分割合の合意書 | 当事者が保管/原則無料 |
遺言書 | 不動産の共有を指定した遺言書(検認済のもの) | 家庭裁判所で検認/無料 |
公正証書遺言 | 公証人が作成した遺言書 | 公証役場で取得/1通1,000〜1,500円程度 |
税関係書類
固定資産評価証明書や納税通知書などのことです。
裁判所が、不動産の価値を金銭的に評価したり、分割するための判断材料にしたりします。
- 具体的な書類
書類 | かんたんな解説 | 取得方法・費用 |
---|---|---|
固定資産評価証明書 | 不動産の公的評価額を示す証明書 | 市区町村役場(資産税課)
1通300〜400円 |
納税通知書 | 毎年の固定資産税額を記載した通知書 | 毎年5月頃に送付
再発行は窓口申請・無料 |
本人確認書類一式
住民票や戸籍謄本、委任状などのことです。
裁判所が次のことを確認するために必要です。
- 当事者が正当な共有者である
- 代理人が適切に手続きを行っている
- 具体的な書類
書類 | かんたんな解説 | 取得方法・費用の目安 |
---|---|---|
住民票 | 現在の居住地と氏名の確認用 | 市区町村役場
1通300円程度 |
戸籍謄本 | 相続人や家族関係を証明する | 本籍地の市区町村役場
1通450円程度 |
委任状 | 代理人に手続きを任せる際に必要 | 書式は法務局やネットで入手
作成自体は無料 |
共有者が複数いる場合、それぞれの確認書類が必要になることがあります。
共有物分割請求訴訟を受けた(被告になった)場合の対処の手順
- 訴状の内容などを確認する
- 共有不動産に強い弁護士を探す
- 弁護士と対策を考える
- 和解案を検討する
- 判決に対応する
訴訟を起こされたら、次の書類が届きます。
- 訴状…相手の言い分、分割方法
- 呼出状…裁判所に出廷する日程
- 答弁書…自分の意見を裁判所へ提出する用紙
- 証拠の写し…相手が提出している契約書や登記簿など
これまでに、共有物分割請求の協議を通じて、相手の言い分を把握していると思いますし、弁護士も見つけて対策を考えていると思います。
「訴状の内容が、これまでの協議と同じかどうか」を確認し、書類を持参して弁護士と相談してください。
裁判での論点は、「次の3つの分割のうちどれにするか?」です。
- 現物分割…不動産を物理的に分筆して単独名義にする
- 代償分割…1人の単独名義にして、他の共有者に代償金を支払う
- 換価分割…売却して現金を分ける(競売 or 任意売却)
このうち多いのは、③の換価分割による売却です。
和解できれば任意売却で、市場価格(時価、実勢価格)で売ることができます。
ですが、判決になると競売をすることになり、ます。
競売とは裁判所が介入して不動産などを強制的に売却することで、売却額は約50〜80%安い金額になります。
-
拒否できません。
理由は、共有関係を不当に長引かせないためです。
民法第256条により定められています。
-
欠席できますが、何もしないと不利な判決結果になることがあります。
理由は、原告の主張の通りに判決が下される可能性が高いからです。
そうならないよう、弁護士に代理で出廷してもらい、あなたの意見や状況を裁判所にお伝えください。
共有物分割請求訴訟のまとめ
共有物分割請求訴訟は、共有状態を法的に解消する手段です。
原告となって訴訟する場合も、被告となって対応する場合も、費用や期間を把握し、専門家へご相談ください。