「共有持分を放棄すると、どうなるの?」
「”共有持分の放棄は早いもの勝ち”って見たことあるけど、どういうこと?」
このように考えていませんか?
このページでは、共有持分の放棄について、プロが詳しくご案内します。
目次
共有持分の放棄とは?注意点や相続放棄との違いを解説
共有持分放棄とは、共有名義の不動産における自分の持分を放棄し、一方的にその持分を他の共有者の所有物にする(無償で帰属させる)ことです。
「共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する」
放棄するのに、他の共有者の同意は不要です。
放棄するだけなら費用はかかりませんが、手続きには費用がかかります。
【注意!】放棄しても義務は残る
ただし、所有権移転登記の手続きをしないと、納税などの義務からは逃れられません。
後で税金や修繕費の支払いなどで揉めるといった「トラブル」になる可能性があります。
それを防ぐために、できれば他の共有者の同意を得て、所有権移転登記を共同で行ってください。
トラブルについて、より詳しくはこちらの「共有持分を売却した後、どうなる?7つのトラブルと6つの対処法を解説」をご覧ください。
【よくある質問】相続放棄との違いは?
- 相続放棄との違い
項目 | 共有持分放棄 | 相続放棄 |
---|---|---|
意味 | 不動産の共有持分を、他の共有者の所有物にする(無償で帰属させる)こと | 相続によって発生した、全て相続財産(プラスの財産もマイナスの財産も)を放棄すること |
対象 | 既に取得済みの不動産の共有持分のみ | 相続財産全般(不動産、預貯金、株式、借金など) |
手続き | 不要(単独行為なので他の共有者の同意は不要)
ただし、義務から逃れるには、所有権移転登記の手続きが必要 |
家庭裁判所への申述が必要 |
結果 | 他の共有者に持分が移転する | 相続財産を一切相続しないため、借金などのマイナス財産も相続しないが、プラスの財産も受け取れない |
共有持分だけを手放したいなら共有持分放棄をします。
相続した全ての財産(持分を含む)を放棄したいなら相続放棄をします。
「共有持分放棄は早い者勝ち」って誤解なの!?
「共有持分放棄は早い者勝ち」と言われる理由は、放棄した人にメリットがあり、残った人にデメリットがあるからです。
- 税金などの負担をしなくて済む
- 相続人が増えた場合の問題の複雑化から逃れられる
- イヤな人(他の共有者)と顔を合わせずに済む
- 何かあった場合のトラブルから逃れられる
- 贈与税や登録免許税が発生する
- 持分が増えた分、負担が増える
- 責任や義務、負担の押し付け合いに巻き込まれる
- 後からだと放棄しづらくなる
すでにご案内している通り、所有権移転登記をしていないと、税金などを負担する義務は残ったままです。
手続きをすると贈与税や登録免許税が発生しますので、共有者の中には嫌がる人がいます。
また、最後まで残った場合、その不動産は最後の一人の単独名義(所有権100%)となるため、活用(売却や賃貸など)しやすくなります。
つまり、最後まで残った人の一人勝ちです。
それに、自分の持分だけなら売却して現金化することができます。
放棄しても1円にもならないですが、売却すれば売却代金を得られます。
ですので、「共有持分放棄は早い者勝ち」は誤解です。
放棄だけしてもトラブルに巻き込まれる可能性が残ってしまうわけですから、放棄ではなく持分を売却することをご検討ください。
共有持分を放棄する3つのメリット
- トラブルを回避できる
- 負担がなくなる
- 次世代に負担をさせずにすむ
詳しくご案内します。
【メリット①】トラブルを回避できる
トラブルとは、金銭的な揉めごとや問題、それに伴う精神的な負荷のことです。
共有名義とは、複数人が1つの不動産に対して権利を所有している状態のことです。
複数人が関係しているため、次のようなことが必要です。
- 土地の活用(売却、賃貸など)には他の共有者の同意が必要
- 負担(固定資産税、修繕費など)の分担には協議が必要
お金が絡むため、意見の対立が起きやすいです。
例えば、自分は「土地を売却したい」けれど、相手が「土地を残したい」と主張すると話は平行線になり、ちょっとしたことで関係が悪化し、不満がたまって揉めごとになることがあります。
持分を放棄することで、トラブルに巻き込まれなくなります。
トラブルについて、より詳しくはこちらの「共有持分を売却した後、どうなる?7つのトラブルと6つの対処法を解説」をご覧ください。
【メリット②】負担が無くなる
負担とは、金銭的なことや労力、時間のことです。
各名義人には、固定資産税を支払う納税義務があります。
その他に、次のような負担があります。
- 定期的な草刈りなどの管理にかかる労力や時間
- 経年劣化による建物の修繕費
その不動産に住んでいなくても、何かあればその都度、共有者間で負担の分担などについて話し合いをします。
放棄とともに所有権の移転を完了すると、こうした負担から解放されます。
【メリット③】次世代に負担をさせずにすむ
次世代への負担とは、後世の相続人の金銭的なこと労力、時間などのことです。
あなたが共有持分を保有したまま亡くなると、その持分は相続財産として相続人(配偶者や子供)に引き継がれます。
すると次のような負担が生まれます。
- 相続税の負担
- 固定資産税の負担
- 共有者間のトラブルへの対応
- 管理の手間
さらに相続した配偶者や子が亡くなると、ネズミ算式に共有者が増えてしまい、収拾がつかなくなってしまう可能性があります。
その不動産は負動産化してしまいます。
放棄とともに所有権の移転を完了すると、子や孫世代の負担が無くなります。
共有持分を放棄する3つのデメリット
- 金銭的対価を得られない
- 税金が発生する
- コミュニケーションコストがかかる
詳しくご案内します。
【デメリット①】金銭的対価を得られない
共有持分の放棄によって、権利が一切なくなるため、現金化はできません。
一度放棄したら、取り戻すことは難しいです。
共有持分の買取に対応している業者がいます。
放棄を検討する前に売却することをご検討ください。
当協会では、仲介にも買取にも対応しております。
持分の査定を無料で行っておりますので、お気軽にご利用ください。
【デメリット②】税金が発生する
放棄する側がその年の1月1日時点で所有していた場合、放棄する側に固定資産税の支払い義務があります。
次に、取得した人には、2つの税金が発生します。
1つ目は贈与税です。
共有持分の放棄をすると、贈与とみなされて、取得した側に贈与税が課されることがあります。
贈与税は110万円の基礎控除があるため、放棄する共有持分の固定資産税評価額が110万円以下であれば、贈与税は発生しません。
それを超えると、評価額の10~55%の税率が適用されます。
-
贈与税額 = (課税価格 - 基礎控除額)× 税率 - 控除額
例えば、評価額4,000万円の不動産のうち、1/6の持分が放棄された場合の贈与税は、約102万円です。
2つ目は、登録免許税です。
登記手続きを行う際に「登録免許税」の支払いが共有持分を取得する側に課されます。
登録免許税の計算式は次の通りです。
登録免許税額 = 固定資産評価額 × 持分割合 × 税率
例えば、固定資産額4,000万円で、持分6分の1の場合の登録免許税額、約13.3万円です。
登録免許税の税率は登記の内容や建物、土地によって変化します。
【デメリット③】コミュニケーションコストがかかる
共有持分の放棄は単独行為ですが、登記手続きには、共有者の同意が必要です。
そのために、他の共有者と調整にかかる時間や労力、精神的負担が発生します。
できるなら、事前に根回しをしておいてください。
持分だけを売却することができます。他の共有者への連絡や許可、同意などは不要です。
共有持分の放棄の手続きの流れや書類、費用
共有持分を放棄するにあたって必要な手続きや書類、費用の説明をします。
①他の共有者への意思表示
意思表示とは自分の持分を放棄する意思を明確に伝えることです。
登記手続きには同意が必要なので、他の共有者へ意思表示をしてください。
「聞いていない」「忘れていた」といったことの内容に、証拠を残すために内容証明郵便で通知してください。
後々のトラブルを防ぐために、できれば口頭ですり合わせすることをご検討ください。
②合意書の作成
合意書とは不動産の共有持分を放棄する際に、他の共有者との間で「放棄する旨」や「放棄した持分をどうするか」などをまとめた書面のことです。
合意書は法的には必要ではありません。
ですが、将来的なトラブルを避けるために重要です。
書式(テンプレート)などはありませんが、次の内容を記載すれば自作できます。
-
私は、下記不動産について有する共有持分を、民法第255条に基づき放棄します。
この放棄により、当該持分は他の共有者に帰属することを承諾します。
【不動産の表示】
所 在:〇〇県〇〇市〇〇〇〇
地 番:〇番〇
地 目:宅地
地 積:〇〇平方メートル
【持分】
持分割合:1/6
令和〇年〇月〇日
放棄者氏名:持分太郎
住所:〇〇県〇〇市〇〇〇
署名・押印(実印)
③登記手続きを行う
登記手続きとは不動産の共有持分を持つ人が、その持分を放棄し、他の共有者に移転させるための手続きのことです。
- 共有持分の放棄に必要な書類
登記申請書 | ・法務局に登記内容を申請するための書類 ・法務局の公式サイトよりダウンロードできる ・発行手数料は窓口で600円、オンラインで520円 |
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登記原因証明情報 | ・放棄の事実を証明する書類(合意書など) ・司法書士や弁護士に依頼(自作OK) ・登記原因証明情報が1万円~、立会費用が2万5千円~、書類取得費用が1,000円~程度 ・発行手数料は法務局で600円、オンラインで520円 |
登記識別情報 | ・不動産を名義変更したときに、登記所から通知される12桁の英数字のコード ・有効証明請求は300円 |
固定資産評価証明書 | ・放棄する不動産の固定資産評価額を証明する書類 ・都道府県や市区町村の役場で申請 ・発行手数料は150~400円/枚(自治体による) |
登記権利者の住民票 | ・放棄する人以外の共有者全員分 ・市区町村役場やコンビニで発行 ・発行手数料は自治体で300円、コンビニで200円(自治体による) |
登記義務者の印鑑登録証書 | ・放棄する人のみ ・自治体やコンビニで発行 ・発行から3か月以内のもの ・発行手数料は役場で300円、コンビニで200円程度(自治体による) |
共有持分放棄にかかる費用は以下の通りです。
登録免許税 | ・ 放棄する持分の固定資産評価額×2% ※法務局での手続き時に支払う |
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司法書士報酬 | ・3万~7万円 |
その他実費 | ・ 登記簿謄本、住民票、固定資産評価証明書などの取得費用 |
自分で手続きをする場合は、法務局の不動産登記申請書提出前のチェックリストをご利用ください。
共有持分を放棄せず売却するときの「業者を選ぶ5つのポイント」
- 選ぶポイント
選ぶポイント | 理由 |
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①実績の多さ | 経験数で知識や経験、ノウハウの有無を確認できるため |
②会社の信頼性 | 悪徳・悪質な業者を避けられるため ※会社の設立年数や資本金、所在地などを確認 |
③担当者の対応 | 担当者の力量で結果が変わる為 ※電話や面談で不利な情報なども隠さずに伝えてくれるかなどを確認 |
弁護士など専門家との連携 | 何かあればトラブルに対応してもらえるため ※弁護士と提携しているかを確認 |
⑤査定内容の透明性 | 悪徳・悪質な業者を避けられるため ※説明に根拠があるかを確認 |
不動産の取引金額は、数百万円〜数千万円になることがあります。
超高齢社会化が進み相続が増えると、共有持分に対応する業者が増えますが、その分、悪質、悪徳な業者の数も増えてしまいます。
ご案内したポイントで信頼できる業者を選ぶことで、スムーズに売却でき、トラブルを避けることができます。
共有持分の売買に対応している5社
対応している業者をご案内します。
一般社団法人共有持分支援協会
一般社団法人共有持分支援協会は、共有持分に関する専門機関です。
仲介で高額の買取にも対応していますし、買取による早期現金化にも対応しています。
最短2日での買取、手付金の支払いをしています。
弁護士、司法書士などと連携しています。
株式会社クランピーリアルエステート
株式会社クランピーリアルエステートは、訳あり相続不動産(底地・借地や再建築不可物件、共有持分など)の買取専門の業者です。
弁護士や税理士とも連携しています。
株式会社蒼悠
株式会社蒼悠は、共有持分の買取に対応している会社です。
弁護士事務所と提携しています。
株式会社AlbaLink(アルバリンク)
株式会社AlbaLinkは、訳あり不動産専門の会社です。
年間相談件数は3000件で案件着手率は97.2%です。
査定時間は最短12時間~で、買取は最短数日~です。
弁護士や司法書士などと提携しています。
株式会社ネクスウィル
株式会社ネクスウィルは、訳あり物件の買取を専門にしている会社です。
ワケガイという買取サイトを運営しています。
査定は最短3営業日~で、買取は最短4翌営業日~です。
共有持分放棄についてのまとめ
共有持分の放棄は、単独行為ですが、登記をするには共有者の同意が必要です。
メリットとデメリットを把握して、どうするかをご検討ください。