共有持分売却の民法のルールは?同意が必要なケースと注意点を解説

「共有持分の売却に関する民法を知りたい」
「共有者の同意なしで共有持分を売却しても問題無い?」

このように考えていませんか?

この記事では、共有持分の売却に関する民法についてプロが分かりやすく解説します。

この記事の作成者

専門相談員 大伊 真衣Mai Oi

【資格】宅地建物取引士、秘書検定2級
静岡県出身。お客様とのご縁を大切に、真心を尽くした接客を心がけている。好きな言葉は、為せば成る、為さねばならぬ何事も。特技はクラシックバレエ。

共有持分売却の民法上のルール

共有持分とは、複数の人が共同で所有している不動産の各人が持つ所有権の割合のことです。

共有持分の売却に関する民法は、主に206条、251条、254条です。

自己の共有持分だけを売却できる

共有持分の売却とは、持分を他の共有者や買取業者に売ることです。

例えば、両親が亡くなり兄弟3人で実家を3分の1ずつ等分で相続した場合に、3分の1だけ売却することができます。
根拠は民法206条です。

不動産全体の売却には共有者全員の合意が必要

理由は、民法251条で「共有物に大きな変更を加える行為は全員の同意が必要」と定められているからです。

変更とは、次の通りです。

  • 売却
  • 贈与
  • 取り壊し
  • 大規模なリフォーム

例えば、3人で土地を共有している場合に、2人が売却に賛成しても1人が反対すれば、全体の売却は成立しません。
まとめますと次の通りです。

  • 自分の共有持分…各共有者が単独で実行できる
  • 共有不動産全体…共有者全員の合意が必須

共有持分の売却後も立替金を請求できる

理由は、民法254条で「共有者の一人が負担した管理費などの債権について、他の共有者だけでなく、その共有者から持分を買い取った第三者にも請求できる」と定められているからです。

債権とは、お金を支払ってもらう権利のことです。

例えば、A、B、Cの3人で土地を共有し、Aさんが固定資産税を立て替えた後に、Cさんが持分をDさんへ売却した場合、Aさんはその立替分をDさんに請求できます。

共有物分割請求訴訟

共有物分割請求訴訟とは、共有者同士の協議では共有状態の解消ができない場合に、裁判所に分割方法を決めてもらう手続きのことです。

この制度は民法第256条に規定されています。

まず共有者間での話し合いによる共有物分割請求を実施し、合意に至らない場合に裁判所への訴訟提起を行います。

分割の方法は次の3種類です。

  • 現物分割…共有不動産を物理的に区分して各自の単独所有とする
  • 代償分割…一人の共有者が不動産を取得し、他の共有者へ代償金を支払う
  • 換価分割…共有不動産を売却し、売却代金を持分比率で分配する

詳しくは、「共有物分割請求訴訟とは?3つの分割方法、流れ、費用、必要書類を解説」をご覧になってください。

共有持分の売却処分

共有持分の処分とは、自分の持分に対して自由に処理・処分する行為のことです。

共有持分の処分は、売却だけでなく、第三者に権利を譲ったり、放棄したりする行為も含みます。

具体的には、次の通りです。

処分方法 概要 根拠
贈与 ・自分の持分を無償で第三者や他の共有者へ譲る
・受け取る相手の合意が必要になる
民法549条
放棄 自分の持分を手放して、残りの共有者のものにする 民法255条
不動産担保ローンの利用 自分の持分を担保として提供し、借入れを行う 民法369条

贈与や放棄によって共有持分を受け取った人は、贈与税がかかる場合があります。

共有持分の放棄では、所有権移転登記が必要なので、他の共有者の協力が必要です。

詳しくは、「共有持分の処分行為とは?7つの処分方法と流れ、トラブル対策を解説」をご覧になってください。

共有持分の売却に影響する2023年民法改正の4つのポイント

4つのポイント
  1. 分割訴訟の要件が緩和され分割方法が明文化された
  2. 共有者が不明でも分割や売却ができる
  3. 持分を超えて利用した場合に対価を支払う
  4. 軽微な変更は過半数の同意で行える

順番にご案内いたします。

【ポイント①】共有物分割訴訟の要件が緩和され分割方法が明文化された

改正前 改正後
訴訟要件は「共有者同士の話し合いで合意できないとき」に限定 民法第258条により、協議に応じない共有者がいても訴訟を起こせる
分割方法の優先順位が明文化された

優先順位は次の通りです。

  1. 現物分割、代償分割
  2. 競売分割(換価分割)

競売分割とは、裁判所が介入して競売にかけて、その代金を分配する強制手続きのことです。

【ポイント②】共有者が不明でも分割や売却ができる

改正前 改正後
共有者の一人でも所在不明だと、事実上、共有不動産の処分や活用ができない 民法第262条により、裁判所の決定を経て不明者の持分を取得したり売却できる

新設された制度は次の通りです。

制度 概要
所在等不明共有者持分取得制度 不明者の共有持分を他の共有者が取得できる
所在等不明共有者持分譲渡の権限付与制度 不明者の持分を含めて第三者へ売却する権限を得られる

例えば、4人の共有者のうち1人が行方不明の場合、残り3人の申立てにより裁判所が認めれば、不明者の持分の取得や第三者への売却ができます。

【ポイント③】持分を超えて利用した場合に対価を支払う

改正前 改正後
共有者の一人が実家に住み続けていても、他の共有者への対価支払いに関する明確なルールがなかった 民法第249条2項により、「自己の持分を超える使用の対価を償還する義務」が明文化された

例えば、3分の1の共有持分を持つ人が実家全体を使用している場合、残り3分の2分の使用対価を他の共有者に支払わなければなりません。

【ポイント④】軽微な変更は過半数の同意で行える

改正前 改正後
屋根の修繕や外壁の塗装といった軽微な変更でも、共有者全員の同意が必要だった 民法第251条により、「形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」については、共有持分の過半数の同意で実施できる

軽微な変更の具体例は次の通りです。

  • 屋根や外壁の修繕
  • 砂利道のアスファルト舗装
  • 設備の交換や修理

共有持分の売却後の3つのトラブルと対策

3つのトラブル
  1. 売却する人と他の共有者
  2. 売却する人と買取業者
  3. 他の共有者と買取業者

詳しくご案内します。

【トラブル①】売却する人と他の共有者

トラブル例 概要
関係性が悪化する 事前相談なしに持分を売却したことで信頼関係が破綻する
売却した人にクレームが来る ・共有者間で立てていた計画を実行できなくなった
・新たな共有者から営業を受けた(悪質・悪徳な業者だった)

これらのトラブルが発生する原因は、他の共有者への事前説明や配慮が不十分だからです。

解決方法は次の通りです。

  • 売却の前に必ず他の共有者へ相談する
  • 売却後の影響や利用ルールを事前に共有する
  • 必要であれば専門家を交えて合意形成を図る

【トラブル②】売却する人と買取業者

トラブル例 概要
しつこい営業を受ける 買取業者によっては強引な営業をすることがある
売却後に業者と揉める 相場より極端に安い価格で買い叩かれ、後で「不当に安かった」と争うことになる
追加費用を請求される 買取後に修繕箇所が見つかったとして、費用を支払うよう求められることがある

これらのトラブルが起こる原因は、悪徳、悪質な業者に依頼してしまったからです。

共有持分を扱う買取業者の中には、悪質な業者がまれにいます。

解決方法は次の通りです。

  • 複数の業者から見積もりを取り比較する
  • 弁護士と手刑している業者を選ぶ
  • 契約書について司法書士などに相談する

【トラブル③】他の共有者と買取業者

この場合のトラブル内容・原因・解決法はトラブル②と同様です。
結局のところ、信頼できる業者を選ぶことが大切です。

共有持分の売却の相場

売却先 概要
共有者に売却する場合 不動産の市場価格×持分割合
買取業者に売却する場合 不動産の市場価格×持分割合×30~50%

例えば、 6,000万円の一戸建てで持分が2分の1なら、共有者へ売却する場合は約3,000万円になりますが、買取業者に売る場合は900〜1,500万円です。

ですが、短期間で現金化できる安心感があります。

少しでも高値で売却したい場合は、仲介業者を利用してください。

共有持分の売却先を選ぶポイント

ポイント 確認すべき内容
① 専門性 共有持分を専門的に扱っているか、買取の実績が豊富か
② 信頼性 宅地建物取引士の在籍、弁護士との提携、口コミ・評価は良いのか
③ 担当者の対応 価格提示や契約説明の分かりやすさ、連絡の早さ
④ 買取スピード 査定から契約、現金化までにかかる期間
⑤ 契約条件 手数料の有無や、契約で定められる免責範囲
⑥ 対応エリア 物件の場所が業者の対応地域に含まれているか
⑦ アフターフォロー 売却後の登記変更や税金関連の相談に応じてもらえるか
⑧ プライバシー保護 個人情報や売却内容を適切に管理し、外部に漏れないか

免責範囲とは、売却後にトラブルが生じた際、売主がどこまで責任を負うかということです。

条件が広すぎると売主に不利になる場合があるためご注意ください。

担当者の対応が重要な理由は、手続きが複雑でも安心して取引を進められるからです。

また、買取スピードが重要な理由は、早期に資金を確保できるからです。

これらの観点を踏まえ、必ず複数の業者から査定を取り比較してください。

特に悪質業者を避けるためには、共有持分の取り扱いに慣れている専門業者をお選びください。

共有持分の売却先5社

共有持分の売却先
  1. 共有持分支援協会
  2. 大正ハウジング
  3. 中央プロパティ
  4. トップショット
  5. ライズ

詳しくご案内します。

共有持分支援協会

共有持分専門の仲介と買取に対応している社団法人です。

共有持分に強い弁護士と提携しています。

買取は最短2日〜で、手付金制度があり、最短なら翌日にお渡ししています。

一部だけの売却やリースバックにも対応しております。

社団法人の立場で親身に丁寧に対応し、利用料は無料です。

買取方法 仲介、買取
売却日数 最短2日
専門家の在籍 弁護士・司法書士・税理士
対応エリア 全国
その他 手付金(最短翌日)・持分の一部買取、持分のリースバック

大正ハウジング

共有持分の買取を専門で行っている不動産会社です。

弁護士事務所と提携しています。

センチュリー21の加盟店です。

買取方法 買取
売却日数 最短1週間
専門家の在籍 弁護士
対応エリア 全国

中央プロパティ

共有持分専門の仲介業者です。

弁護士事務所と提携しています。

査定から契約まで最短1週間〜です。

仲介手数料などが無料です。

センチュリー21の加盟店です。

買取方法 仲介
売却日数 最短5日
専門家の在籍 弁護士・司法書士・税理士
対応エリア 全国
その他 AI×鑑定士のダブル査定

トップショット

共有持分専門の買取業者です。

1,000万件以上の不動産データに基づいたAIによる自動査定サービスを提供しています。

買取方法 買取
売却日数 不明
専門家の在籍 不明
対応エリア 全国

ライズ

共有持分専門の買取業者です。

弁護士と提携をしています。

3日~30日以内に現金化をしています。

相談は無料、買取実績は1,000件以上です。

買取方法 買取
売却日数 最短3日
専門家の在籍 弁護士・司法書士
対応エリア 一都三県
その他 電話対応は21時まで

共有持分の売却に関する民法についてのまとめ

関連する民法を把握した上で、共有持分の売却をお進めください。

ご案内した業者は民法などを熟知していますので、買取をご相談ください。