「共有持分の買取請求で買取りたい🔥」
「共有持分の買取請求をされた💦…どう対応すればいい?」
このように考えていませんか?
この記事では、共有持分の買取請求について、プロが詳しくご案内します。
目次
共有持分の買取請求とは?2つの請求方法を解説
請求する方法は2つあります。
- 当事者間の交渉による買取請求
- 買取請求権による買取請求
それぞれご案内します。
①当事者間の交渉による買取請求
これは、他の共有者に「持分を買い取りたい」と申し出て、合意のもとで売買を行うことです。
相手に伝える内容は次の通りです。
- 希望する金額や条件
- 取引後の不動産の活用方法(売却・住む予定など)
具体的な手順はこちらの『共有持分の買取請求「6つの手順」』でご案内しています。
請求された側の事情で拒否されることや相手から相場を無視した法外な価格を提示されることがあります。
結果的に協議が不成立になった場合は、「共有物分割請求訴訟」をご検討ください。
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民法256条より、協議での解決が困難なときに、裁判所に不動産の分割(現物分割・換価分割・代償分割)を求める制度のことです。
詳しくはこちらの「共有物分割請求訴訟とは?」でご案内していますので、ご一読ください。
②買取請求権による買取請求
共有持分の買取請求権とは、「共有者の1人が1年以上、管理費や固定資産税を正当な理由なく支払っていない場合」に、他の共有者がその持分を法的に取得できる制度のことです。
これは、民法第253条第2項で定められた、長年費用を負担している共有者が損をしないための制度です。
具体的には、次のような状況で行使できます。
- 共有者の1人だけが税金・修繕費などを全額負担している
- 他の共有者に催促しても1年以上支払いがない
- 相手に連絡がつかず、協議できない状態が続いている
具体的な手順については、こちらの『共有持分の買取請求権「7つの手順」』をご覧ください。
共有持分の買取請求で解決した3つのケース
ケースを3つご案内します。
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兄と弟で実家(空き家)を共有していましたが、兄は遠方に住んでおり、「もう住まないし、税金とか負担したくないな。でも弟だけに払わせたくないし…」と考えていました。
地元に住む弟は、将来に備えて不動産投資をしており、「兄の持分を買い取って売却して、投資の資金にしたい」と考えていました。
そこで弟から兄に「兄の持分を買取りたい」と伝え、複数回の話し合いを経て、相場よりも若干安い価格で売買契約を締結し、弟は、実家を単独名義にしました。
その後、弟は実家をリフォームして貸出、5年後に売却しました。
交渉で買取たい方はこちらの『共有持分の買取請求「6つの手順」』をご覧ください。
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元夫と元妻は結婚当時、マンションを夫婦の共有名義で、持分は2分の1ずつで購入しました。
ですが、数年後に離婚。元夫は転居し、マンションには元妻と子供2人が住み続けていました。
元夫が「今はマンションが高く売れるよ」と知人からアドバイスを受け、検討した結果、「持分を買り取りたい」と内容証明で元妻に申し出ることにしました。
子供の学校や友人関係のことを考えて、元妻は拒否しました。
協議が不成立となったため、元夫は共有物分割請求訴訟を提起しました。
裁判所は競売による分割を認めましたが、元妻は競売回避のために持分の買取に応じ、元夫が単独所有者となりました。
数年後、元夫はマンションを高額で売却しました。
協議が成立しなかった場合、共有物分割請求訴訟をすることができます。
詳しくは「共有物分割請求訴訟とは?」でご案内していますので、ご覧ください。
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兄弟で共有する空き家の固定資産税と管理費を、弟が数年間、支払わない状態が続いていました。
兄は、共有持分に強い弁護士に相談し、民法第253条2項にもとづいて、買取請求権を行使することを決意。
まずは内容証明郵便で正式に通知し、その後で弟と交渉を行いました。
弟は「よくわからない」と、はぐらかしていましたが、1年経過したため兄は買取請求権を行使しました。
弟は観念し、兄に共有持分の買取価格の相場で売却しました。
兄は賃貸収入を得るため、必要最低限のリフォームをして、空き家を貸し出しました。
買取請求権を行使したい方は、こちらの『共有持分の買取請求権「7つの手順」』をご覧ください。
共有持分の買取請求「6つの手順」とかかる期間の目安
- 持分買取を申し出る(即日~1週間)
- 価格と条件を話し合う(1~4週間)
- 売買契約書を作成する(1~2週間)
- 代金を決済する(1日~数日)
- 登記手続きを行う(1~3週間)
- 確定申告をする
状況によっては半年以上かかるケースもあります。
順を追ってご案内します。
【手順①】持分買取を申し出る(即日~1週間)
最初に、他の共有者に「持分を買い取りたい」と伝えます。
伝える方法はいくつかあります。
- 口頭で伝える
- 電話で伝える
- メールで伝える
- 普通郵便で伝える
- 内容証明郵便で伝える
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日本郵便が、「誰が・いつ・誰に・どんな内容の文書を送ったか」を証明してくれる郵便制度のことです。
裁判や調停で「通知した事実」を証明する証拠として利用されています。
相手側に、心理的プレッシャーを与える効果もあります。
書面やメールを証拠として残しておくと、後のやり取りを有利に進められます。
【手順②】価格と条件を話し合う(1~4週間)
次に、買取価格やその他の条件について話し合います。
持分の買取価格は、次の計算式で算出できます。
- 共有持分の買取価格=不動産全体の実勢価格(じっせいかかく)x 持分割合 x 評価割合(30%~50%)
例えば、5,000万円のマンションがあり、持分が2分の1の場合、査定額は2,500万円ではなく、750万円~1,250万円です。
より詳しくはこちらの「共有持分の買取相場は一般の不動産価格の30~50%!」でご案内していますので、ご一読ください。
交渉時に伝えるべき内容は次の3つです。
- 持分の売却理由、物件の利用予定
- 希望する売却価格
- 代金の支払方法(分割・一括など)
交渉がまとまる場合は、契約書を作成します。
交渉がまとまらないときは、「共有物分割請求訴訟」をご検討ください。
【手順③】売買契約書の作成(1~2週間)
契約書を作成する理由は、後々のトラブルを防ぐことができるからです。
例えば、「引き渡し時期が違う」「固定資産税の精算がされていない」といった揉め事を避けられます。
売買契約書の作成にかかる費用の相場は次の通りです。
- 司法書士の場合…5万円〜7万円
- 弁護士の場合…7万円〜10万円
- 公正証書にする場合…印紙代(※売買代金で異なる)+手数料(1万円前後)
契約内容の不備や漏れを防ぐために、共有持分や不動産に詳しい弁護士に、契約書の作成を依頼してください。
公正証書とは、公証人(法律の専門職)が、当事者の依頼に沿って作成する法的に証明する力の強い公文書のことで、公証役場で作成できます。
【手順④】代金を決済する(1日~数日)
決済では、売買代金の支払いと同時に登記関連書類をやり取りします。
登記原因証明情報や委任状など、事前に必要書類を司法書士と確認してください。
未払い・登記不備といった漏れなどが無いよう、司法書士に立ち会い(同席)を依頼してください。
遠方の場合は郵送でのやり取りでもできます。
【手順⑤】登記手続きを行う(1~3週間)
登記とは、不動産の権利関係を公的に証明するための制度のことです。
民法177条より、共有持分の売買では、所有権移転登記による名義変更が必要です。
手続きは司法書士にご依頼ください。
その費用の目安は次の通りです。
- 登録免許税(売買):不動産の固定資産評価額 × 2.0%
- 司法書士報酬:3万円~6万円
参考:国税庁「登録免許税の税額表」
司法書士は、登記申請書の作成から法務局への提出まで代行してくれます。
【手順⑥】確定申告をする
売主側は、共有持分の売却によって譲渡益が出た場合、譲渡所得として確定申告が必要です。
申告期限は翌年の2月16日〜3月15日までです。
控除や特例がありますので、税理士にご相談ください。
譲渡所得税について、より詳しくはこちらの「共有持分の買取で売主側に発生する費用を解説」でご案内していますので、ご一読ください。
共有持分の買取請求権「7つの手順」とかかる期間の目安
- 共有物に関する負担の明確化(1週間~2週間)
- 未払い管理費の催告(さいこく)(1~2週間)
- 1年間の不履行期間の経過(1年)
- 共有持分買取請求権の行使通知をする(数日~1週間)
- 協議・民事調停・訴訟をする(2週間~1年)
- 対価を支払う(1日~数日)
- 持分移転登記(1~3週間)
状況によって短くなったり、長くなったりします。
順を追ってご案内します。
【手順①】共有物に関する負担の明確化(1週間~2週間)
共有持分の買取請求権を行使するには、「共有者の1人が1年以上、管理費や固定資産税を正当な理由なく支払っていない」ことを明確にする必要があります。
対象となる管理費の例は次の通りです。
- 固定資産税・都市計画税
- 建物の修繕費用
- 共用部の維持・管理費
- 火災保険料などの付随経費
先ほどもご案内した通り、各共有者には、これらの費用を持分に応じて公平に負担する義務があります。
特定の共有者がこれらを長期間一方的に負担している証拠(納税証明書・振込明細など)は、この後の手続きで必要です。
書類を探して、保管しておいてください。
【手順②】未払い管理費の催告(1~2週間)
催告(さいこく)とは、相手に対して正式に義務の履行を促す行為のことです。
内容証明郵便を使って、未払いの共有者に請求書を送付します。
内容証明郵便とは、いつ・誰が・どのような内容の文書を送ったのかを郵便局が証明してくれる制度のことで、法的な証拠として使えます。
【手順③】1年間の不履行期間の経過(1年)
催告をしても、相手が正当な理由なく1年以上、支払いを行わない場合は、「買取請求権」を行使できるようになります。
【手順④】共有持分買取請求権の行使通知をする(数日~1週間)
内容証明郵便で通知します。
通知書作成費用の目安は次の通りです。
- 弁護士の場合…1万5,000円〜3万円前後
- 行政書士の場合…8,000円〜2万円前後
- 自作の場合…1,000円前後(郵便料金+証明手数料)
【手順⑤】協議・民事調停・訴訟をする(2週間~1年)
内容証明郵便で通知した後は、相手と協議をします。
主に次のような項目について協議をし、合意を目指します。
- 請求の対象となる共有持分の範囲
- 支払い方法(一括・分割など)
- 支払い期限と遅延時の対応
- 登記手続きの時期と費用負担
- 固定資産税などの未払い分の清算方法
当事者が協議で折り合いをつけられない場合は、民事調停や訴訟をご検討ください。
民事調停とは、裁判所が間に入り、当事者同士の合意を目指す話し合いの手続きのことです。
訴訟とは、裁判所に判断を委ねる手続きのことで、判決には法的拘束力があります。
かかる日数の目安は次の通りです。
- 協議…1~4週間
- 民事調停…申し立てから1~2か月程度
- 訴訟…半年~1年
いずれの場合も、請求をされた人が住んでいる地域(場合によっては不動産の所在地)を管轄する裁判所で行われます。
例えば、請求をした人の住所が神奈川藤沢市で、請求された人の住所が埼玉さいたま市、不動産の所在地が千葉船橋市の場合は、さいたま市か船橋市で行われます。
【手順⑥】対価を支払う(1日~数日)
協議や裁判の結果に従って、共有持分の対価を支払います。
裁判所の判決例は次の通りです。
- 時価に基づく持分評価額の全額を支払うよう命じる
- 過去の未払い費用を差し引いた金額を支払うよう命じる
例えば、共有物の持分評価額が1,000万円で、売主の未払い費用が50万円の場合、買主は950万円を支払えば買取れるということです。
金額の支払い方法は、原則として一括払いです。
ただ、買主側の資力や事情を考慮して、担保を提供するなどの一定の条件を満たす場合は、分割払いになることがあります。
【手順⑦】持分移転登記(1~3週間)
対価の支払いが完了したら、法務局で所有権移転登記を行います。
登記手続きが完了すると、不動産の権利関係の変更が正式に完了します。
登記手続きは司法書士にご依頼ください。
登録免許税と司法書士報酬(10万円~)が必要です。
共有持分の買取請求ができない場合の3つの代替策
- 持分を第三者に売却する
- 共有物分割請求を行う
- 共有持分を放棄する
「相手が交渉に応じない」「相手に落ち度が無い」など、買取請求できない場合、3つの代替策があります。
詳しくご案内します。
【代替策①】持分を第三者に売却する
「買取ることができないから、売却して現金化する」ということです。
共有者は、自分の持分だけを第三者に売却することができます。
他の共有者の同意は必要ありません。
法的根拠は民法206条です。
買取業者に売却すれば、最短数日で現金化できます。
仲介業者に売却すれば、買取業者よりも高額で買取ってくれます。
デメリットは次の通りです。
- 共有持分に対応している不動産会社を探す手間がかかる
- 持分だけを売却すると実勢価格(市場価格)の30%~50%になる
仲介による高額買取、買取による早期現金化にも対応しています。
査定は無料で行っておりますし、無理な営業をすることは一切ありませんので、お気軽にご相談ください。
【代替策②】共有物分割請求訴訟を行う
共有物分割請求とは、各共有者の合意が得られない場合に、裁判所に対して不動産の分割を求める制度のことです。
法的根拠は民法第256条です。
分割方法は3つあり、判決が出れば強制的に分割することができます。
ただし、訴訟の場合は、換価分割(とうかぶんかつ)で競売した現金を持分に応じて分配することが多いです。
競売すると、実勢価格の50%~80%ほどになってしまいます。
詳しくは「共有物分割請求訴訟とは?でご案内しています。
【代替策③】共有持分を放棄する
共有持分の放棄とは、自身の共有持分を無償で手放すことです。
放棄自体は、自分の意思で自由にできますが、その後の所有権移転登記の手続きには、全員の同意が必要です。
所有権移転登記の手続きをしないと、放棄しても、過去の固定資産税や管理費については、負担義務が残ります。
より詳しくはこちらの「共有持分の放棄とは?」でご確認いただけます。
他の共有者とのやり取りが発生せず、相応の現金を得られる「持分の売却」をご検討ください。
共有持分の買取請求をされたときの4つの対応策と注意点
- 提示条件が妥当なら買取に応じる
- 持分を第三者に売却する
- 相手の持分を逆に買い取る
- 不動産全体を売却することを提案する
それぞれご案内します。
【対応策①】提示条件が妥当なら買取に応じる
相手から提示された金額や条件が妥当で、書面に問題が無く、売却してもかまわないなら、応じてください。
共有者から提示される持分の価格は、実勢価格(市場価格、時価)と同程度です。
例えば、6,000万円の実家があり、持分が4分の1の場合、査定額は1,500万円です。
応じる際の注意点は次の通りです。
- 売買契約書を作成し、弁護士や司法書士に確認してもらう
- 譲渡所得が発生する場合は、税理士に相談する
- 固定資産税や管理費などの精算内容を契約書に明記する
動く金額が大きいので、専門のサービスをご利用ください。
【対応策②】持分を第三者に売却する
法的根拠は民法206条で、自分が所有する持分は、自由に売却できることが定められています。
この場合の買取価格は、実勢価格の30%~50%です。
例えば、6,000万円の実家があり、持分が4分の1の場合、査定額は1,500万円ではなく、450万~750万円です。
買取金額の算出方法はこちらの「買取価格を算出する手順とシミュレーション」にありますので、ご覧になってみてください。
相手の買取請求に応じたくない場合、不動産会社に売却してください。
第三者に売却する際の注意点は3つあります。
- 持分に対応している不動産会社を探す手間がかかる
- 売却価格は一般的な不動産の30%~50%になる
- まれに悪質・悪徳な業者がいて、買い叩かれてしまう
仲介による高額買取、買取による早期現金化にも対応していますので、お気軽にご相談ください。
【対応策③】相手の持分を買い取る
相手の買取請求に応じず、自分が相手の持分を買い取って単独名義にする方法です。
単独名義にして高額売却して、利益を出すというイメージが湧く方は、トライしてみてください。
ただし、この場合は、相手が相場以上の金額を要求してくる場合があります。
対策は、近隣の取引事例などを提示し、妥当な価格であることを示すことです。
【対応策④】不動産全体を売却することを提案する
共有者全員の同意があれば、共有名義の不動産を売却することができます。
相手が買い取りたいと言ってきたということは、有効活用して利益を出したいということです。
詳しく話を聞いてみて、単に持分を売却する以上の利益を得られそうなら、全体での売却を提案したり、相手の話に乗りたいと伝えてみてださい。
この場合は、提案をするためには、全体で売却した際に得られる利益の計算や共有不動産の知識、不動産事業に関する相応の知識などが必要なことです。
社団法人の立場で、親身になって対応しております。
共有持分の買取請求についてのまとめ
買取請求には2種類あります。
まずは交渉を試みて、ダメな場合は共有物分割請求をします。
相手に落ち度がある場合は、買取請求権を行使します。
買取請求をされたら、ご案内した対策をご検討ください。