共有名義の不動産を相続する6つのリスクと回避法【専門家が解説】

相続した実家や土地を、兄弟姉妹など複数人で「共有」のまま持ち続けている――。

そんなご家庭は少なくありませんが、共有のまま放置することには、見えにくいリスクが数多く潜んでいます。

このコラムでは、不動産を共有で相続したときに起こりうるリスクと、そこから抜け出すための考え方を、専門家の視点で整理します。

この記事のダイジェスト
  • 不動産を共有で相続すると、売却・活用に共有者「全員」の同意が必要になる
  • 共有者が亡くなるたびに相続人が増え、合意形成が年々難しくなる(数次相続)
  • 固定資産税の連帯納付、第三者の介入、共有物分割訴訟など、トラブルの火種が多い
  • 放置された共有不動産は空き家化し、税負担の急増や行政指導のリスクもある
  • 共有から抜ける確実な方法は、自分の持分だけを売却すること(同意不要・民法206条)

この記事の作成者

専門相談員 大伊 真衣Mai Oi

【資格】宅地建物取引士、秘書検定2級
静岡県出身。お客様とのご縁を大切に、真心を尽くした接客を心がけている。好きな言葉は「為せば成る、為さねばならぬ何事も」。特技はクラシックバレエ。

そもそも不動産の「共有」とは――相続で共有になる仕組み

不動産の「共有」とは、一つの土地や建物を、複数の人が「持分」という割合で共同所有している状態をいいます。

相続では、遺産分割の話し合いをしないまま放置したり、いったん法定相続分どおりに登記したりすると、相続人全員の共有になります。

用語解説:共有持分(きょうゆうもちぶん)

一つの不動産を複数人で所有するとき、各人が持つ所有の割合を「共有持分」といいます。たとえば兄弟3人が均等に相続すれば、それぞれ3分の1ずつの共有持分を持つことになります。

一見、平等で円満な分け方に見えますが、この「共有」こそが、後々のトラブルの入り口になりがちです。

ここからは、共有相続に潜む代表的な6つのリスクを順に見ていきます。

【リスク1】共有のままでは「売る・活かす」が自由にできない

共有不動産の最大の弱点は、自分一人の意思では何も決められないことです。

不動産全体を売却したり、建て替えたりする行為には、共有者全員の同意が必要です(民法251条)。

賃貸に出すなどの管理行為も、持分価格の過半数の合意が要ります(民法252条)。

つまり、共有者の中に一人でも反対する人や、連絡の取れない人がいれば、不動産全体はそこで「塩漬け」になってしまいます。

自分は売りたいのに、他の共有者が首を縦に振らない――これは共有で最もよくある行き詰まりです。

【リスク2】共有者がねずみ算式に増えていく

共有のまま時間が経つと、共有者は自然に増えていきます。

共有者の一人が亡くなれば、その持分はさらにその相続人へと引き継がれるからです。

用語解説:数次相続(すうじそうぞく)

ある相続が片づかないうちに、相続人の一人が亡くなり、次の相続が重なって発生することをいいます。共有を放置するほど、この数次相続によって共有者が増えていきます。

最初は兄弟2〜3人だった共有者が、世代を超えるうちに、いとこ・甥姪、さらには面識のない遠縁にまで広がることも珍しくありません。

共有者が増えるほど、全員の同意を取りつけるのは難しくなり、やがて事実上、合意は不可能になります。

【リスク3】固定資産税や費用をめぐるトラブル

共有不動産の固定資産税は、共有者全員が連帯して納める義務があります(地方税法)。

納税通知書は代表者一人に届きますが、誰かが払わなければ、その負担は他の共有者に回ってきます。

「使っていないのに税金だけ払わされる」「立て替えた分を他の共有者からなかなか返してもらえない」――こうしたお金のトラブルは、共有では後を絶ちません。

修繕費や管理費の負担割合をめぐっても、もめごとの火種になります。

【リスク4】見知らぬ第三者が共有者になることがある

共有者は、自分の持分を、他の共有者の同意なく第三者に売ることができます(民法206条)。

そのため、共有者の誰かが持分を売却すれば、ある日突然、まったく知らない第三者や買取業者が共有者として加わることがあります。

さらに、共有者の一人が借金を抱えて持分を差し押さえられたり、自己破産したりすれば、債権者やその買受人が共有者になることもあります。

身内だけの共有のつもりが、いつの間にか他人と共有していた――そんな事態も起こり得るのです。

【リスク5】共有物分割請求と「競売」のリスク

共有状態は、誰か一人が望めば、いつでも解消を求められます。

共有者は、他の共有者に対して「共有物分割請求」をする権利を持っているからです(民法256条)。

話し合いでまとまらなければ、最終的に共有物分割訴訟に発展します。

用語解説:共有物分割請求

共有者が、共有関係の解消を他の共有者に求めることです。協議が調わない場合は裁判となり、不動産を売却して代金を分ける「競売(けいばい)」が命じられることもあります。

裁判所による競売では、市場価格より大幅に安い金額で売られてしまうことが少なくありません。

第三者の買取業者が共有者に入っている場合、この分割請求を持ち出して、安値での売却や持分の買い取りを迫ってくるケースもあります。

【リスク6】放置された共有不動産は「負動産」になる

誰も住まず、管理もされない共有不動産は、急速に傷んで空き家化します。

そして、管理不全の空き家が「特定空家」に指定されると、税の優遇が外れてしまいます。

数字のシミュレーション:特定空家に指定されると固定資産税は?
  • 通常、住宅が建つ土地は「住宅用地の特例」で固定資産税が最大6分の1に軽減されている
  • 特定空家に指定され、行政の勧告を受けると、この特例が解除される
  • その結果、土地の固定資産税は最大で約6倍に

※実際の税額は、自治体や物件の条件により異なります。あくまで一例です。

さらに、危険な空き家として行政代執行(強制的な解体など)が行われれば、その費用は所有者である共有者全員に請求されます。

資産であるはずの不動産が、持っているだけで損をする「負動産」に変わってしまうのです。

共有相続を「放置」してはいけない理由

共有を放置する前に知っておきたい注意点
  1. 2024年4月から相続登記が義務化された
  2. 時間が経つほど共有者が増え、解決が難しくなる
  3. 税負担・管理責任は、放置している間も続く

特に、2024年4月からは相続登記が義務化されました。

不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記しないと、10万円以下の過料が科される可能性があります。

「名義をそのままにしている」共有不動産は、もはや放置できない時代になっています。

共有から抜け出すには――自分の持分だけ売却できる

ここまで見てきたリスクは、どれも「共有のまま持ち続けること」から生まれます。

裏を返せば、共有から抜けてしまえば、これらのリスクから解放されるということです。

そして、共有から抜ける最も確実な方法が、自分の共有持分だけを売却することです。

用語解説:民法206条(所有権の内容)

所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する――と定めた条文です。共有持分も各共有者の財産であるため、自分の持分は他の共有者の同意なく、自由に売却できます。

不動産「全体」を売るには全員の同意が必要ですが、「自分の持分」だけなら、他の共有者の同意は一切要りません。

他の共有者に知られたくない、連絡を取りたくないという場合でも、自分の意思だけで共有から抜けられます。

専門の共有持分買取であれば、共有のまま、もめることなく現金化することが可能です。

共有を続けるべきか、持分を売るべきか

最後に、共有を続ける場合と、持分を売却する場合の違いを整理します。

  • 共有を続ける場合と持分を売却する場合の比較
比較項目 共有を続ける 持分を売却する
自由度 全員の同意がないと動かせない 自分の意思だけで完結
リスク 共有者の増加・第三者の介入・分割訴訟 共有から完全に抜けられる
お金 税・管理費の負担が続く まとまった現金が得られる
他の共有者との関係 関わり続ける 関わらずに完了

共有者全員が協力的で、近いうちに不動産全体を売る・活用する見込みがあるなら、共有を続けて全体で動く選択もあります。

しかし、「共有者と話がまとまらない」「関わりたくない」「自分だけでも整理したい」という場合は、持分の売却が現実的な出口になります。

まとめ

不動産を共有で相続することは、一見、公平な分け方に見えます。

しかし実際には、全員の同意がなければ動かせず、共有者は増え続け、税やトラブルの負担だけが残りやすいのが共有の実態です。

共有のリスクから抜け出したいときは、自分の持分だけを売却するという方法があります。

共有名義・共有持分の不動産について、売却できるかどうかと査定額を無料でお調べします。

「共有のままで困っている」「自分の持分だけでも手放したい」という方は、東京・神奈川・埼玉・千葉エリアを中心に、お気軽にご相談ください。

45秒で完了 住所などを入力するだけ 持分の無料査定

共有持分が専門の社団法人
親身に対応いたしております

閉じる