「他の共有者の持分が差押えられたら、どうなる?」
「自分の持分が差押えられるかもしれない…」
このように悩んでいませんか?
この記事では、共有持分の差押えについて、プロが分かりやすくご案内します。
目次
共有持分の差し押さえとは?
次の4つについてご案内していきます。
- 差押えとは
- 共有持分とは
- 共有持分の差し押さえとは
- 不動産全体の差し押さえとの違い
差押えとは
債務者が借金や税金を滞納した場合に、債権者(金融機関や公的機関)が、債務者の財産を強制的に確保する手続きのことです。
確保された財産は強制的にオークション形式で売却され、換金されます。
- 借金の滞納…競売(けいばい/きょうばい)
- 税金の滞納…公売(こうばい)
共有持分(きょうゆうもちぶん)とは
1つの不動産を複数人の共有の名義で所有しているときの権利の割合のことです。
例えば、母と兄弟の共有名義で法定相続通りに不動産を相続した場合、それぞれの権利の割合は2分の1、4分の1ずつです。

なお、共有名義とは、1つの不動産を複数の名義人で共有している状態のことです。
この書類は法務局やネットで取り寄せられます。
共有持分の差し押さえとは
滞納した人の持分だけを確保する手続きのことです。

差押えされた後、何もしなければその持分は売却(競売、公売)され、換金されます。
不動産全体ではなく、持分だけが対象になる理由は、債務者本人が所有している権利の範囲内でしか差し押さえができないからです。
例えば、母と兄弟の共有名義で法定相続通りに相続した不動産がある状態で、次男が借金を滞納した場合、長男の持分(4分の1)だけが差し押さえの対象になるということです。
不動産全体の差し押さえとの違い
| 項目 | 共有持分 | 不動産全体 |
|---|---|---|
| 差し押さえの範囲 | 債務者の持分のみ | 不動産全体 |
| 影響の範囲 | 債務者が持分の権利を失う | 権利が無くなる |
| 競売・公売での落札価格 | 低い(安い) | 持分だけより高い |
共有持分の差押えの場合は、その持分の所有者だけが権利を失います。
ですが、その権利を買い取った第三者(買取業者)の目的は、全ての持分を買い取ることです。
共有者同士が交渉してうまくいかない場合、買取業者は共有物分割請求訴訟を行い、不動産の共有状態を解消して、単独所有化か競売で資金回収を図ります。
いずれにせよ、最終的には、その他の共有者も権利を失うことになります。
>>共有持分の買取業者の目的はなんですか?A.利益を得ることです。
共有持分が差し押さえになる4つの理由
- 税金滞納
- 借金・ローンの返済滞納
- 連帯保証人になっているケース
- 事業資金・損害賠償・養育費などの滞納、未払い
それぞれご案内していきます。
【理由①】税金滞納(固定資産税・住民税など)
税金には納税の義務があり、滞納が続いた場合、行政が強制的に徴収する権限を持っています。
| 区分 | 税金の種類 | 徴収の主体 |
|---|---|---|
| 国税 | 所得税、消費税、法人税、相続税、贈与税 | 税務署 |
| 地方税 | 住民税、固定資産税、自動車税、個人事業税 | 自治体 |
| 社会保険料(年金) | 国民年金保険料 | 日本年金機構 |
| 社会保険料(医療・介護) | 国民健康保険料、介護保険料 | 市区町村 |
例えば、固定資産税20万円を滞納し続けた場合、自治体が共有不動産の持分を差し押さえることがあります。
税金や社会保険料は、裁判所を通さず自治体・行政が直接差し押さえします。
【理由②】借金・ローンの返済滞納
消費者金融や銀行からの借金、住宅ローンなどの返済を滞納すると、差し押さえの対象になります。
借金には返済義務があるからです。
債務者の支払いが滞ると、債権者は法的手続きで強制回収できます。
借金やローンは税金と違い、債権者が裁判所の手続きを通じて差し押さえます。
例えば、不動産担保ローンの返済を6ヶ月滞納すると、金融機関が抵当権を行使し、担保設定された持分が競売にかけられることがあります。
【理由③】連帯保証人になっているケース
このケースの場合、主債務者が返済を滞納すると、連帯保証人の財産が差押えの対象になります。
理由は、連帯保証人には「催告の抗弁権・検索の抗弁権」がなく、債権者は主債務者を飛ばして、いきなり連帯保証人に全額を請求できるからです。
- 催告の抗弁権…債権者から請求されたとき「まず先に主債務者本人に請求してください」と主張できる権利(民法452条)
- 検索の抗弁権…主債務者に支払い能力があり財産の差し押さえも容易だと証明して「先に主債務者の財産から取り立ててください」と主張できる権利(民法453条)
連帯保証人には、自分が1円も借りていなくても、主債務者と同等の返済義務があるということです。
例えば、主債務者が500万円の借金を滞納した場合、債権者は連帯保証人の共有持分などの財産を差押えすることができます。
【理由④】事業資金・損害賠償・養育費などの滞納、未払い
次の内容も、差押えの対象になります。
- 事業資金の借入れ
- 損害賠償請求
- 養育費の未払い
など
いずれも法律上の支払い義務にもとづく債権のため、強制的に回収することが法的に認められています。
例えば、月5万円の養育費を1年間未払いにした場合、家庭裁判所の調停調書や審判などを根拠に不動産の持分などの財産が差し押さえられることがあります。
共有名義不動産が差し押さえられると起こる4つのこと
- 他の共有者に差し押さえの事実が知られる
- 競売(または公売)にかけられる
- 第三者が共有者になる
- 共有物分割請求をされる
詳しくご案内します。
①他の共有者に差し押さえの事実が知られる
差し押さえが実行されると、登記簿に差押登記が記録されます。
そのため、他の共有者に差し押さえの事実が知られることがあります。
例えば、兄弟で共有している実家があり、弟の持分が差し押さえられた場合、兄が登記簿を確認して、差押えの事実を知ることがあります。
この他、通知や書類、固定資産税の納税通知書などが届くことで発覚することがあります。
通知や書類とは裁判所からの差押命令の正本や、債権者からの内容証明郵便のことです。
この時点でできる対策は次の通りです。
| 対策 | 概要 |
|---|---|
| 滞納の解消 | 滞納している借金・税金を完済・完納し、差し押さえを解除する |
| 分割納付の相談 | 債権者や自治体に連絡し、分割払いによる返済計画を交渉する |
| 売却、持分の処分 | 不動産全体の任意売却、または自分の持分だけを買取業者に売却する |
②競売(公売)にかけられる
差押えられた共有持分は、やがて競売(公売)にかけられます。
競売手続きは次のように進みます。
- 共有者に裁判所から競売開始決定の通知が届く
- 執行官が物件の現況調査をする
- 登記簿の確認をする
この時点でできる対策は次の通りです。
| 対策 | 概要 |
|---|---|
| 競売の取り下げ交渉(全額納付・分納) | 滞納額を一括または分割で支払い、債権者に競売の申し立てを取り下げてもらう |
| 任意売却による売却 | 債権者の同意を得て、競売ではなく通常の市場で売却し、より高い価格での換金を目指す |
③第三者が共有者になる
競売で落札されると、落札した第三者(買取業者など)が持分を取得し、新たな共有者になります。
他の共有者と共有関係を持つことになります。
次のような形で第三者の参入を知ることになります。
- 落札業者から直接連絡が来る
すでに売却されているため、差押えを防ぐ方法はありません。
今後に備えて次のことをご検討ください。
参考)共有物分割請求訴訟とは?3つの分割方法、流れ、費用、必要書類を解説
| 対策 | 概要 |
|---|---|
| 第三者との持分買取交渉 | 落札した業者と交渉し、相手の持分を買い取ることで単独名義への移行を目指す |
| 共有関係の解消(他の共有者への売却など) | 残りの共有者同士で持分を売買・整理し、第三者を交えた共有状態を解消する |
④共有物分割請求をされる
第三者が共有者になると、その第三者から共有物分割請求をされる可能性があります。
共有物分割請求とは、共有状態を解消するために、不動産を分割するか売却して代金を分配することを求める権利のことです。
これは民法第256条で規定された権利です。
第二百五十六条 各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる
分割請求は次のような形で行われます。
- 内容証明郵便で「分割請求の通知」が来る
- 業者・共有者から交渉書面が来る
- 調停の呼び出し状が届く
次の3つの分割方法があります。
- 現物分割…不動産を物理的に分けて各自が単独所有する
- 換価分割…不動産を売却し、売却代金を持分割合に応じて分配する
- 価格賠償…一方が不動産を取得し、他の共有者に持分相当額を金銭で支払う
交渉が決裂すると、共有物分割請求訴訟が行われます。
参考)共有物分割請求訴訟とは?3つの分割方法、流れ、費用、必要書類を解説
他の共有者の持分が差し押さえられた場合の5つの対処法
- 差し押さえられた持分を買い取る(所有したい場合)
- 落札した業者から持分を買い戻す(所有したい場合)
- 債務を肩代わりする(所有したい場合)
- 不動産全体を任意売却する(手放す場合)
- 自分の持分だけを売却する(手放す場合)
詳しくご案内します。
【対処法①】差し押さえられた持分を買い取る
競売にかけられる前に、差し押さえられた共有者の持分を買い取る方法です。
メリットは次の通りです。
- 第三者が共有者になることを防ぐことができる
- 自分の持分割合を増やすことができる
例えば、兄弟2人で共有している評価額3,000万円の不動産があり、兄の持分(2分の1)が差押えられた場合、弟が1,500万円で兄の持分を買い取ることで、単独名義にすることができます。
相応の資金がある場合に実行できます。
【対処法②】落札した業者から持分を買い戻す
競売で第三者(買取業者など)が落札した後、その第三者から持分を買い戻す方法です。
交渉次第で持分を取得できる可能性があります。
メリットは次の通りです。
- 競売後でも単独名義にすることができる
- 第三者との共有状態を解消できる
デメリットは次の通りです。
- 業者が交渉に応じるとは限らない
- 割高な金額を求められるケースが多い
【対処法③】債務を肩代わりする
差し押さえられた共有者の債務を代わりに支払う方法です。
債務が解消されれば差し押さえが解除され、競売を回避できます。
例えば、兄が200万円の借金を滞納して持分が差し押さえられた場合、弟が200万円を債権者に支払えば、差し押さえが解除されるということです。
【対処法④】不動産全体を任意売却する
差し押さえられる前に、共有者全員の合意を得て不動産全体を任意売却する方法です。
任意売却とは、競売ではなく、通常の不動産売却と同様に市場で売却することです。
メリットは、競売よりも高い価格で売却できる可能性が高いことです。
例えば、評価額3,000万円の不動産が競売にかけられると2,000万円程度にしかならない場合でも、任意売却なら2,800万円で売却できる可能性があります。
【対処法⑤】自分の持分だけを売却する
自分の持分だけを不動産買取業者に売却する方法です。
共有持分だけでも売却することができます。
デメリットは買取価格が安くなることです。
例えば、不動産全体の価値が3,000万円で、あなたの持分が3分の1の場合、1,000万円ではなく、300~500万円程度で売却することになります。
>>共有持分の売却相場は市場価格より30~50%低い!3つの理由と事例
自分の共有持分が差し押さえられた場合の4つの対処法
- 未払いを解消する
- 親族間売買や資金援助をお願いする
- 任意売却をする
- 債務整理を相談する
詳しくご案内します。
【対処法①】未払いを解消する
競売にかけられる前に、滞納している借金を完済、税金を完納する方法です。
債務が解消されれば差し押さえが解除され、競売を回避できます。
例えば、固定資産税50万円を滞納して持分が差し押さえられた場合、50万円を納付すれば差し押さえが解除されます。
【対処法②】親族間売買や資金援助をお願いする
親族に持分を買い取ってもらうか、資金援助をお願いする方法です。
この方法なら、第三者が共有者になることを防ぎ、家族内で不動産を維持できます。
例えば、兄弟に自分の持分を買い取ってもらい、その代金で債務を解消すれば、差し押さえを回避できます。
なお、活保護を受給している場合は、持分の売却代金や親族からの資金援助は、収入・資産の変動にあたりますので、事前に福祉事務所にご報告ください。
参考)共有名義の不動産があっても生活保護は受給・継続できる?
【対処法③】任意売却をする
競売にかけられる前に、共有者全員の合意と債権者の同意を得て、不動産を任意売却する方法です。
任意売却は、競売よりも高い価格で売却できる可能性が高く、債務の返済額を増やせます。
例えば、評価額3,000万円の不動産が競売にかけられると2,000万円程度にしかならない場合でも、任意売却なら2,800万円で売却できる可能性があります。
【対処法④】債務整理を相談する
弁護士や司法書士に債務整理を相談する方法です。
債務整理とは、次のような法的な手続きで債務を減額または免除してもらうことです。
- 任意整理…弁護士・司法書士を通じて債権者と個別に交渉し、利息のカットや返済期間の延長などを取り決める
- 個人再生…裁判所の手続きを経て債務を大幅に減額(最大で5分の1程度)し、原則3〜5年で分割返済する
- 自己破産…裁判所に申し立て、返済不能を認めてもらうことで債務の免除を受ける
返済計画を見直すことで、差し押さえを回避できる可能性があります。
例えば、個人再生の手続きを行えば、債務が大幅に減額され、分割払いで返済できるようになります。
ただし、自己破産を選択した場合は、不動産を含む財産が処分される可能性があります。
| 種類 | 内容 | 不動産への影響 |
|---|---|---|
| 任意整理 | 債権者と交渉して返済条件を見直す | 影響なし |
| 個人再生 | 債務を大幅に減額し分割返済する | 住宅ローン特則を使えば維持できる場合あり |
| 自己破産 | 債務を免除してもらう | 不動産を含む財産が処分される可能性あり |
共有名義の不動産の差し押さえの流れ
| 差し押さえの流れ | 日程 |
|---|---|
| 差し押さえの流れ | 目安期間 |
| 督促・催告 | 滞納から数週間〜数ヶ月 |
| 債務名義の取得 | 申し立てから1〜3ヶ月程度 ※税金・社会保険料は債務名義不要 |
| 差押登記の実行と所有者への通知 | 債務名義取得から数日〜2週間程度 |
| 現況調査・評価・売却基準価額の決定 | 差押登記から2〜4ヶ月程度 |
| 競売(または公売)の実施と落札 | 評価決定から2〜3ヶ月程度 |
詳しくご案内します。
【流れ①】督促・催告段階
税金や借金を滞納すると、債権者から督促状や催告書が届きます。
この段階で支払いを行えば、差し押さえを回避できます。
【流れ②】債務名義の取得
借金・ローンなどの場合は、債権者が裁判所に申し立てを行い、債務名義を取得します。
債務名義とは、強制執行を行うために必要な公的な文書のことです。
督促後に、行政機関がそのまま差し押さえをします。
【流れ③】差押登記の実行と所有者への通知
債権者が裁判所や税務署を通じて、不動産に差押登記を行います。
差押登記が行われると、所有者に通知が届きます。
【流れ④】現況調査・評価・売却基準価額の決定
裁判所の執行官が不動産の現況を調査し、不動産鑑定士が評価額を算定します。
その評価額を基に、競売での売却基準価額が決定されます。
【流れ⑤】競売(または公売)の実施と落札
競売(または公売)が実施され、最も高い価格で入札した人が落札します。
落札後、代金が債権者への返済にあてられ、共有持分の所有権は落札者に移転し、差押登記は抹消されます。
まとめ
共有持分が差し押さえられたら、対処法はあります。
この記事の内容に沿って、できる限りのことをなさってください。
