共有名義の場合の不動産取得税とは?相続した家をスムーズに手続きするためのポイント

不動産を共有名義で取得するときは、不動産取得税の計算や相続に関する手続きなど、押さえておきたいポイントが多いです。どのような流れで進めればスムーズに名義変更でき、税金のトラブルを避けられるのかを知っておくと安心です。

相続の場合は非課税となるケースが多い一方、売買や贈与で持分を得たときには取得者の割合に応じた不動産取得税が発生します。以下では、共有名義で不動産を持つ際の税金や手続きについて、詳しく見ていきます。

この記事の作成者

大伊 真衣Mai Oi

【資格】宅地建物取引士、秘書検定2級
静岡県出身。お客様とのご縁を大切に、真心を尽くした接客を心がけている。好きな言葉は、為せば成る、為さねばならぬ何事も。特技はクラシックバレエ。

共有名義の場合の不動産取得税の基本

共有名義で不動産を取得するときは、単独名義とは異なる課税や手続き上の特徴があります。ここでは、不動産取得税の基本仕組みや共有持分への課税の流れ、相続時の非課税の扱いなどを紹介します。

1-1.不動産取得税の仕組み

不動産取得税は、不動産を取得したときに都道府県から課される税金です。取得形態としては売買・贈与・交換などがありますが、相続による取得は、原則として不動産取得税がかからないことが大きな特徴です。取得者は取得した不動産の固定資産税評価額をもとに、規定の税率を掛け合わせて税額を算出します。

都道府県が発行する納税通知書を受け取ってから納付を行うしくみで、相続が関係しない贈与や売買などの場合は、課税対象になりやすいです。通常は固定資産税評価額の4%が基本税率になりますが、居住用住宅には軽減措置が設けられており、最大1,200万円または1,300万円の控除が受けられるケースがあります。ただし住居の新築・中古・長期優良住宅など、条件によって控除額は変わるので注意が必要です。

1-2.共有持分への課税

複数人で不動産を共有する場合、共有者の持分ごとに不動産取得税が課されます。たとえば、100平米の土地を3人で均等に共有すると、各々が3分の1の持分を取得したとみなされ、それぞれの持分相応の評価額に対して不動産取得税がかかります。共有者全員が同時に不動産を取得した場合でも、納税の義務は持分を得た人ごとに生じるのが大きな特徴です。

もし住宅として利用している物件であれば、個人ごとに住宅用の減税措置が適用される可能性があります。ただし、共有者の一部が居住用として利用していない場合などには、その人の持分には一般税率が適用されることがあります。どの部分が居住用扱いになるか確認し、該当の減税措置を受けるには、事前に自治体へ問い合わせることがおすすめです。

1-3.相続による取得と税負担

相続によって不動産を取得した場合は、不動産取得税がかからないことが一般的です。遺産分割協議などで誰がどの不動産を相続するかが決まり、実際に相続登記をしても、不動産取得税は免除扱いとなります。相続以外の買い取りや贈与によって共有持分を増やす場合は課税対象になる点は忘れないようにしましょう。

また、共有者の一人が持分を放棄すると、残りの共有者が放棄分を取得した形となり、不動産取得税が課される可能性があります。相続中の「法定相続分の放棄」とは扱いが異なることがあるので、もし持分放棄を検討する場合、事前に税務上の扱いをしっかりと確認するほうが安心です。

家を相続する際のスムーズな手続き

相続によって家を取得した場合は、不動産取得税は課されないケースが多いですが、スムーズに名義変更を完了させるためには複数のステップと書類が必要になります。相続登記は後回しにしがちですが、トラブルを防ぐ意味でも早めに動くことが大切です。

2-1.相続登記の流れ

家を相続したら、まずは相続登記を行います。一般的には以下の手順です。

  1. 被相続人の所有不動産の調査:土地・建物それぞれの地番や家屋番号を確認
  2. 遺言書の有無と内容の確認:自筆証書遺言・公正証書遺言などの種類によって検認措置が変わる
  3. 遺産分割協議書の作成:相続人全員の同意で取得する不動産を決定
  4. 相続登記の申請:登記申請書に必要書類を添付して法務局に提出

相続登記では、登録免許税として固定資産税評価額の0.4%を納付します。名義変更を行わないままだと、不動産の売却や融資の面で大きな問題が生じる可能性があります。

2-2.必要書類のポイント

相続登記に必要な書類は、登記簿謄本(登記事項証明書)、被相続人の除票や戸籍謄本、相続人全員の戸籍・住民票、印鑑証明書などが挙げられます。最初に被相続人がどこで生まれ、どこで亡くなったのかなどを確認し、出生から死亡までの戸籍をそろえると同時に、居住実態を示す住民票の除票も用意する必要があります。公正証書遺言なら検認手続きは不要ですが、自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は検認を経なければ効力が確認できません。

遺産分割協議書については、不動産以外の遺産の記載が省略されていても受理されます。ただし登記申請の対象になる不動産の特定情報は正確に記載する必要があります。漏れがあると再提出を求められるので、よく確認してから提出しましょう。

2-3.登録免許税や相続税の注意点

相続登記の際に発生する登録免許税は、不動産の固定資産税評価額を基準にして0.4%がかかります。一方、相続税は、相続財産の総額に基づいて計算し、基礎控除の範囲内であれば納付不要となる場合があります。相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算しますが、財産が多いと課税対象になるかもしれません。相続税や不動産取得税が重複して課されることは基本的にないですが、それぞれ別の法律に基づく税金なので、混同しないように注意が必要です。

相続税の申告期限は通常、被相続人が亡くなった翌日から10か月以内です。必要に応じて顧問税理士や税務署へ相談し、漏れや遅延のないように早めに書類準備や申告を済ませることをおすすめします。

共有名義のメリット

不動産を共有名義にするメリットとしては、資金面や管理の手間を複数人で分担できることが挙げられます。家族で協力して維持管理をしたい場合や資金を出し合って住宅を購入したい場合など、状況に応じたメリットを活用できます。

3-1.費用負担を分けられる

不動産を単独名義で所有する場合、住宅ローンや維持費、固定資産税の支払いなどを一人で負担しなくてはなりません。一方で共有名義なら、支払うべき費用を複数人で分担できる利点があります。例えば兄弟で家を相続した際に、それぞれの収入に合わせた負担割合を設定することで、金銭面のバランスを取りやすくなります。

また、リフォームや建て替えの資金を大きく分散できる点もメリットです。ローンの連帯債務などの形態にすることで、計画的に維持管理をしやすくなる可能性があります。

3-2.リスクや責任を分散できる

不動産を一人で所有していると、売却リスクや災害リスクなどの責任がすべて集中しがちです。共有名義の不動産であれば、質権設定や抵当権の設定などをする際にみんなで協議し、リスクの分散を図れます。複数の共有者が連携して対策を考えられるため、大きな負担が一方に偏らないのは大きいです。

ただし、共有名義ならではの意思決定プロセスが発生するため、効率性の観点からは注意点もあります。リスク分散ができる一方で、共有者の合意形成の大切さも忘れないようにしましょう。

3-3.相互協力が得やすい

家族間や親しい友人同士で不動産を共有すると、そこに住む人の生活や納税・ローン返済について互いに協力しあえる関係が作りやすくなります。定期的にかかる管理費や税金の支払いなども、誰がどれだけ負担するかを話し合いやすいです。

相続した家に誰かが住み続ける場合も、他の相続人との間で共有のままにしておけば、相続税の一部負担や修繕管理に関して共同作業がしやすくなります。ただし、将来の譲渡や転用を想定する場合は、後述のデメリット面も考慮しておくとよいでしょう。

共有名義のデメリット

共有名義には、メリットだけでなくデメリットも存在します。特に意思決定の煩雑さやトラブルが起きやすい点は、事前に理解しておくことが大切です。

4-1.持分売却時の手続き

共有名義の持分だけを売却する場合、自分の持分を第三者に売ろうとしても、残りの共有者とのやり取りや抵当権の有無などのチェックが必須になります。売却時に利益が発生すれば、譲渡所得税の対象になる点にも注意です。取得費用がわからない場合は売却価格の5%を概算取得費とすることが多いですが、取得時期の古い不動産は価格の変動が大きいため、実際に得られる利益が予想しづらいです。

さらに、持分だけを買い取ってくれる買主を探すのは難しいことが多く、結果としてあまり高値がつかないまま手放すというケースも少なくありません。早めに共有者間で意見をすり合わせておいたほうがスムーズです。

4-2.意思決定の煩雑さ

共有名義の場合、通常は重要な決定(大規模な修繕や建て替え、賃貸に出すなど)をする際に共有者全員の同意あるいは持分割合に応じた多数決が求められます。一人が反対しているために話がまとまらず、長期間放置されるケースも考えられます。

それぞれの事情や将来の展望が違うと、共有不動産の利用方針がまとまらないこともあるでしょう。たとえば、一部を賃貸に出したい人と、自分が住み続けたい人がいると意見が衝突しやすく、複雑化しやすいです。

4-3.トラブル発生のリスク

共有者が多いほど、それぞれの帰属意識や権利主張の仕方も多様になりがちです。管理費や修繕費の分担が不公平と感じる人が出たり、誰がどこまでメンテナンスを行うのか、はっきりと決めないままにしていると不満が積み重なるかもしれません。

また、相続した不動産をそのまま共有していたとき、長期間誰も住まずに空き家状態になると、固定資産税の支払いだけが続くことになる可能性もあります。空き家になった不動産をどう活用するのか、早い段階で方向性を決めておくと余計なトラブルを防ぎやすいです。

共有名義での不動産取得税における重要ポイント

不動産取得税の課税や相続における非課税措置、さらに将来の運用や売却などを考慮すると、共有名義にするか単独名義にするかはよく検討する必要があります。ここでは、税金面や専門家への相談など、選び方のポイントをまとめます。

5-1.軽減措置や控除制度

居住用不動産を取得するときは、住宅用の軽減措置や控除制度が用意されている場合があります。たとえば、新築住宅や築年数が一定以内の中古住宅を取得する場合、固定資産税評価額から最大1,200万円(長期優良住宅なら1,300万円)が控除されるケースがあります。複数人で住む物件なら、持分の分だけ軽減が適用できる場合もあるため、取得前に内容をよく確認するとお得です。

共有名義であっても居住実態がある人だけが優遇を受けられる場合など、自治体ごとに取り扱いに差があります。購入や相続の直前に都道府県や市区町村のウェブサイト、あるいは窓口で最新の軽減措置をリサーチしておきましょう。

5-2.専門家への相談

相続税や不動産取得税、登記手続きなどは法律や制度が頻繁に更新される部分があります。税理士や司法書士、不動産の専門家に相談することで、最新の税制や必要書類、手続きの流れを把握しやすくなります。特に相続が絡む場合は、戸籍の取り寄せや遺産分割協議の段階でアドバイスを受けるとスムーズです。

さらに、共有名義を解消したいときや持分を他の共有者に渡したいときは、譲渡所得や持分放棄に関する課税を含め、実際に手続きを取るタイミングでの費用算出をサポートしてもらえます。専門家の力を借りることで、後から想定外の負担が発生することを避けやすいです。

5-3.将来の活用方法を見据える

不動産を共有名義にするときは、将来的にどう扱うかをあらかじめ検討しておくと、後々のトラブルや無駄な税負担を避けやすくなります。住むだけでなく、賃貸などで収益を得たい場合は、取得段階で持分に応じた収益分配方法を決めておくことが必要です。

また、高齢の親が相続した家に住み続けるケースでは、世代が変わったときに名義をどう引き継ぐか、誰がどれだけ資金を出すか、空き家となった場合に売却か賃貸かなど、話し合いの材料は数多くあります。共有名義がメリットを生かせる条件を満たしているか、デメリットの方が大きいかを検討することが大切です。

まとめ

不動産を共有名義で所有する際には、それぞれの持分に応じた不動産取得税や将来の譲渡所得税などを考慮しながら、手続きを進めることが大切です。相続の場合は不動産取得税が免税となるケースが多いものの、相続登記は早めに行い、必要書類や税額の計算を正しく進めなければなりません。共有名義には費用負担の分散などメリットもある一方、意思決定の煩雑さやトラブルのリスクといったデメリットも存在します。将来の活用方法やライフプランを見据え、専門家に相談しながら最適な形を選びましょう。