「離婚したら共同名義の住宅ローンは無くなる?」
「離婚したんだから共有名義の住宅ローンの支払いは、相手になるよね?」
このように考えていませんか?
このページでは、離婚した場合の住宅ローンがどうなるのかついて、プロが分かりやすく解説します
目次
共有名義・共同名義の住宅ローンは離婚しても消えない
その理由は、離婚と金融機関との住宅ローンの契約は別だからです。
離婚はあくまで、婚姻によって生じた法律上の夫婦関係を解消することで、住宅ローンの契約とは関係ありません。
そのため、住宅ローンを返し続ける必要があります。
共有名義の住宅ローンは3種類あります。
ローン形態 | ローン契約者 |
---|---|
ペアローン型 | 夫婦それぞれが契約者 |
連帯保証型 | 例)夫が主債務者で妻が連帯保証人 |
連帯債務型 | 例)夫が主債務者で妻が連帯債務者 |
いずれもどちらかが支払えなくなったら、もう一方が支払うことになります。
共有名義・共同名義の住宅ローンは離婚後、どうする?住み続けるには?
- 不動産を売却してローンを完済する
- 任意売却する
- ローンを一本化する(住み続けられる)
- ローンを返済し続ける(住み続けられる)
- ローンを一括返済する(住み続けられる)
離婚後、住宅ローンを支払うことになるのですが、売却して完済するか、住み続ける人が支払うことになります。
それぞれご案内していきます。
①不動産を売却してローンを完済する
家を売却すれば、ローンを完済できる場合は、この方法を取ることができます。
例えば、不動産が5,000万円で残債が3,500万円の場合、金融機関の承諾を得て売却し、その売却益でローンを完済し、売却益の1,500万円を財産分与で750万円ずつ分けます。
- 財産分与…主に離婚の際に夫婦が婚姻中に築いた財産を清算し、公平に分け合うこと
この方法を実施するには、次の条件が必要です。
- 家を売却すれば住宅ローンを完済できる
- 共有者全員の同意を得られる
共有者の同意が必要な理由は、民法251条で、次のように定められているからです。
-
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない
夫が「家を売って現金を分けたい」と言っても、妻が「子どもと住み続けたい」と反対すれば売却できません。
配偶者の合意が得られなければ、調停や審判で裁判所の判断を待ちます。
- 調停・審判…家庭裁判所で第三者が間に入り合意形成や判断を行う手続きのこと
なお、民法206条では、共有持分だけなら自由に売却できると規定されていますが、残債があると、金融機関からの承諾を得られません。
持分だけの売却は契約違反ですので、残債の一括返済を要求される可能性があります。
②任意売却する
任意売却とは、借入金(住宅ローンなど)の返済ができなくなった場合に、債権者の金融機関の同意を得て自宅を売却する方法のことです。
家を売却しても、ローンを完済できない場合に実施します。
この方法を実施するには、次の条件が必要です。
- 共有者の同意(全員)
- 金融機関の承諾
金融機関の承諾が必要な理由は、銀行がその家に抵当権を設定しているからです。
住宅ローンを組む際に金融機関(債権者)が不動産に設定する担保権のこと。
金融機関が支払いの継続が困難と判断すると、抵当権を実行して強制的に競売し、その売却益で残債を回収する。
=返せなくなったら、家を売って、貸したお金を回収する権利のこと
任意売却のデメリットは次の通りです。
- 信用情報に記録が残る
- 残債は免除されない
任意売却をすると、延滞や債務整理と同様に信用情報に記録が残り、5~7年ほど新しいローンが組めなくなります。
- 信用情報とは、ローンやクレジットカードの利用履歴を記録したデータベースのこと
残債は免除されないため、元夫婦で完済する必要があります。
例えば、残債4,200万円で不動産の評価が4,000万円で任意売却した場合、残りの200万円の返済が続きます。
③ローンを一本化する(住み続けられる)
住み続ける人がローン契約を変更して一本化し、支払い続ける方法です。
単独名義に変更します。
一本化する方法は2つあります。
- ローン組み換え…別の銀行で単独ローンを組み、その資金で元の共同ローンを完済し、返済し続ける(借り換え)
- 債務引受…同じ銀行のローンを引き継ぎ、返済し続ける
ローン組み換えは、住宅ローン会社の審査がとても厳しいです。
次の内容が審査されます。
- 年収
- 返済負担率
- 雇用形態
- 勤務先
- 勤務年数
- 信用情報
- 物件の価値
- 完済時の年齢
例えば、優良企業で正社員を何年も継続していて、住宅ローン以外の借入が無いなどの条件をクリアする必要があります。
債務引受も審査が厳しいです。
例えば、残債が2,500万円なら、それを返済できるかどうか、審査されます。
④ローンを返済し続ける(住み続けられる)
離婚後もローンの名義や契約形態を変更せず、返済を継続する方法です。
元配偶者と分担して返済し続けるということです。
例えば、離婚協議で次のように取り決めたりします。
- 離婚後も返済し続ける
- 財産分与として清算する
- 慰謝料代わりに支払ってもらう
ただし、一方がローンの返済を滞納した場合、金融機関は連帯責任を負う元夫と元妻の両方に対し、残債の全額を一括で返済するよう請求します。
支払えない場合は自己破産をすることになります
完済後に、抵当権抹消手続きと所有権移転登記をして、単独名義にします。
⑤ローンを一括返済する(住み続けられる)
ローンの残債を一括繰上返済し、抵当権を外して、所有権移転登記をして、家の名義を単独に変更するという方法です。
ただし、まとまったお金が必要です。
例えば、住宅ローン残債が2,000万円残っている場合、一括返済して単独名義にするには、2,000万円と諸費用(10万円~)が必要です。
預貯金、退職金、生命保険の解約返戻金など、婚姻中に築いた財産(共有財産)を使って完済します。
なお、次の場合、贈与税がかかります。
- 持分割合を超えて返済した
- 名義人以外の資金を使って返済した
例えば、夫婦で共有名義で持分が2分の1ずつの家があり、残債3,000万円の不動産なら、本来は1,500万円ずつ返済すべきですが、夫が2,500万円を返済し、妻が500万円を返済したら、夫が多く負担した1,000万円は妻への贈与とみなされるため、贈与税がかかります。
贈与税計算については、「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」をご覧になってください。
離婚後に共有名義・共同名義の住宅ローンを支払えないとどうなる?
次のような手順で物事が進んでいきます。
- 競売で、家に住み続けられなくなる
- 競売しても住宅ローンが残る場合は、返済を続ける
- 2人とも支払えなくなった場合は、自己破産する
順番にご案内します。
競売で住み続けられなくなる
競売の流れは次の通りです。
- 督促が来る
- 遅延損害金(ペナルティ)がかかる
- 一括返済の請求
- 競売される
もし支払えないと、銀行はまず電話や書面などで支払いを促します。
それでも、返済されない場合は、利息とは別に遅延損害金(ペナルティ)がかかってしまいます。
さらに滞納が続くと、契約違反としてローン全額の一括返済を求められます。
それでも返済されないと、抵当権を行使して家を競売し、その代金でローンを回収します。
競売しても残債があれば返済する
売却額が残債より少ない場合は、残った借金は返済義務として残ります。
連帯債務型ローンと連帯保証型ローンの場合は、一方が支払わなければ、もう一方が支払わなければいけなくなります。
ペアローンなら、自分の分だけを完済すればOKです。
残債が支払えない場合は自己破産
元夫婦のどちらも返済能力が無い場合は、自己破産をすることになります。
自己破産を裁判所に申立てて、 免責が認められれば残債はゼロになります。
ですが、次のようなデメリットがあります。
- 職業、引越が制限される
- 官報、ブラックリストに載る
- 財産は処分される
離婚時に共有名義の住宅ローンが無い場合は?
住宅ローンが無い場合は、離婚協議をして、どのようにするかを決めます。
選択肢は3つあります。
- 一方が住み続ける
- 不動産を売却する
- 持分だけを売却する
①一方が住み続ける
離婚協議で、どちらが住み続けるかを決める方法です。
は財産分与の代償金によって清算されます。
①時価の算定: まず、自宅の現在の市場価値(時価)を査定します。
②代償金の決定: 家の時価を夫婦の共有財産として公平に分けます(原則1/2)。住み続ける側は、この相手の持分相当額を代償金として家を出る側に現金で支払います。
③名義変更: 代償金の支払い後、必ず所有権移転登記を行い、家の名義を住み続ける側の単独名義に変更します。
単独名義にすることで次のような将来のトラブルを防ぐことができます。
トラブル①
トラブル②
トラブル③
②不動産を売却する
一般の不動産会社に依頼して不動産を売却する方法です。
夫婦で話し合い、売却価格を合意の上で決定し、売却後の代金を財産分与として、公平に二等分して分けます。
持分に応じて分けるわけではありません。
売却して出た利益から、仲介手数料や登記費用などの諸経費を差し引いてから分配します。
③持分だけを売却する
民法206条で自分の持分だけなら自由に売却できると規定されています。
住宅ローンを完済しているなら、持分だけを売却できます。
ただし、財産保全命令で、売却できないことがあります。
離婚の話し合いや裁判の最中に、家庭裁判所や地方裁判所に申し立てることで、相手が持っているお金や不動産などの財産を勝手に動かせないように一時的にブロックする手続き
詳しくは民保法1条・20条1項、23条1をご覧ください。
また、業者選びが大事です。
というのも、悪徳・悪質な業者がいるからです。
次のようなことをしてくるリスクがあります。
- しつこく営業される
- 安く買い叩かれる
- 売却後に修繕費を請求される
売却の依頼先は、次のポイントで選ぶようにしてください。
ポイント | 概要 |
---|---|
専門分野 | 訳あり物件ではなく、共有持分専門 |
売却方法 | スピードなら買取、高額なら仲介 |
対応エリア | 不動産会社は対応しているエリア内に強い |
接客 | 営業担当者の能力で結果が変わる |
弁護士との提携 | 悪質、悪徳な業者を避ける、揉めずに売却できる |
売却については、こちらの「共有持分の売却について解説」で詳しくご案内していますので、ご一読ください。
離婚で共同名義の住宅ローンが残っている場合のまとめ
住宅ローンと離婚は関係ないため、残債を支払わなければいけません。
支払えなければ最終的には自己破産をすることになります。
弁護士を通じてやり取りして、ベストな方法を模索してください。