共同名義の住宅ローン、離婚したらどうなる?5つの選択肢を徹底徹底

「離婚したら共同名義の住宅ローンは無くなる?」
「離婚したんだから共有名義の住宅ローンの支払いは、相手になるよね?」

このように考えていませんか?

このページでは、離婚した場合、共同名義の住宅ローンがどうなるのかついて、プロが分かりやすくご案内します。

この記事の作成者

専門相談員 戸田 良行Yoshiyuki Toda

【資格】宅地建物取引士
神奈川県出身。高校サッカーで全国大会進出を果たし、指導者の道に進む。その後、大手不動産会社で不動産のノウハウを蓄積する。諦めないことを信条に、お客様の希望を叶えるため日々奮闘中。

共有名義・共同名義の住宅ローンは離婚しても消えない

その理由は、離婚と金融機関との住宅ローンの契約は別だからです。

離婚はあくまで、法律上の夫婦関係を解消することで、住宅ローンの契約とは関係ありません。

そのため、住宅ローンを返し続ける必要があります


専門相談員
戸田(とだ)
共有名義・共同名義の住宅ローンは離婚後、どうなるのか?は、消えないので支うことになるということです。

共有名義・共同名義の住宅ローンは3種類あります。

ローン形態 ローン契約者
ペアローン型 夫婦それぞれが契約者
連帯保証型 例)夫が主債務者で妻が連帯保証人
連帯債務型 例)夫が主債務者で妻が連帯債務者

今の契約がどの種類か不明な方は、利用している住宅ローンの会社にご確認ください。

契約の内容に違いはありますが、どの種類でも、どちらかが支払えなくなったら、もう一方が支払うことになります。


戸田
「2人とも支払えなくなるとどうなるのか?」は、「住宅ローンを支払えないと、どうなる?」でご案内しております。

共有名義・共同名義の住宅ローンは離婚の際、どうする?住み続けるには?

5つの選択肢
  1. 不動産を売却してローンを完済する
  2. 任意売却する
  3. ローンを一本化する(住み続けられる)
  4. ローンを返済し続ける(住み続けられる)
  5. ローンを一括返済する(住み続けられる)

戸田
ご案内したように、離婚しても共有名義の住宅ローンは消えませんので、支払うことになるのですが、その選択肢は5つあります。

それぞれご案内していきます。

①不動産を売却してローンを完済する

家を売却すれば、ローンを完済できる場合は、この方法を取ることができます。

例えば、不動産が5,000万円で残債が3,500万円の場合、金融機関の承諾を得て売却し、その売却益でローンを完済します。

売却益の1,500万円は、財産分与で750万円ずつ分けることになります。

  • 財産分与…主に離婚の際に夫婦が婚姻中に築いた財産を清算し、公平に分け合うこと

戸田
この方法を実施するには、次の条件が必要です。
  • 家を売却すれば住宅ローンを完済できる
  • 共有者全員の同意を得られる

共有者の同意が必要な理由は、民法251条で、次のように定められているからです。

民法251条「共有物の変更」
    各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない

夫が「家を売って現金を分けたい」と言っても、妻が「子どもと住み続けたい」と反対すれば売却できません

配偶者の合意が得られなければ、調停や審判で裁判所の判断を待ちます。

  • 調停・審判…家庭裁判所で第三者が間に入り合意形成や判断を行う手続きのこと
Q.自分の持分だけなら売却できるのでは?
    民法206条では、「共有持分だけなら自由に売却できる」と規定されています。

    ですが、残債があると、金融機関からの承諾を得られないため、売却できません

    持分だけの売却は契約違反ですので、場合によっては残債の一括返済を要求される可能性があります。

②任意売却する

任意売却とは、次のような状況のときに、金融機関(債権者)の同意を得て自宅を売却する方法のことです。

  • 住宅ローンの返済ができず、家を売却しても、ローンを完済できない
  • 住宅ローンの返済ができないことが確定していて、家を売却しても、ローンを完済できない

このような状況の時に、専門会社のサポートを受けて、任意売却を行います。


戸田
この方法を実施するには、次の条件が必要です。
  • 共有者の同意を得られる
  • 金融機関の承諾を得られる

金融機関の承諾が必要な理由は、銀行がその家に抵当権を設定しているからです。

抵当権とは

住宅ローンを組む際に金融機関(債権者)が不動産に設定する担保権の一種。

金融機関が支払いの継続が困難と判断すると、抵当権を実行して強制的に競売し、その売却益で残債を回収する。

=返せなくなったら、家を売って、貸したお金を回収する権利のこと

任意売却のデメリットは次の通りです。

  • 信用情報に記録が残る
  • 残債は免除されない

任意売却をすると、延滞や債務整理と同様に信用情報(ローンやクレジットカードの利用履歴)に記録が残り、5~7年ほど新しいローンが組めなくなります

残債は免除されないため、元夫婦で完済する必要があります。

例えば、残債4,200万円で不動産を3,500万円で任意売却した場合、残りの700万円の返済が続きます。

どうしても返済できない場合は、2人とも自己破産をします。

③ローンを一本化する(住み続けられる)

住み続ける人がローン契約を変更して一本化し、支払い続ける方法です。

住宅ローンの名義も不動産の名義も単独名義に変更します。

一本化する方法は2つあります。

方法 概要
ローンの組み換え(借り換え) 別の銀行で単独でローンを組み、その資金で元の共同ローンを完済する
債務引受(さいむひきうけ) 同じ銀行のローンを単独で引き継ぎ、返済し続ける

どちらも、金融機関による審査がとても厳しいです。

例えば、残債が2,500万円なら、それを返済できるかどうか、審査されます。


戸田
審査される内容の一例を挙げます。
  • 年収
  • 返済負担率(年収に対するローン返済額の割合)
  • 雇用形態
  • 勤務先
  • 勤務年数
  • 信用情報(過去のローン・クレジットの履歴)
  • 物件の価値(担保価値)
  • 完済時の年齢

例えば、優良企業で正社員を何年も継続していて、住宅ローン以外の借入が無いといった条件をクリアする必要があります。

④ローンを返済し続ける(住み続けられる)

離婚後もローンの名義や契約形態、不動産の共有状態を変更せず、返済を継続する方法です。

離婚協議をして、元配偶者と分担して返済し続けるということです。


戸田
離婚協議で取り決める主なパターンは次の通りです。
  • 離婚後も双方が返済し続ける
  • 財産分与として清算する
  • 慰謝料代わりに支払う

不動産を単独名義にするには、完済後に、抵当権抹消手続きと所有権移転登記をすることになります。

ただし、一方がローンの返済を滞納した場合、金融機関は連帯責任を負う元夫と元妻の両方に対し、残債の全額を一括で返済するよう請求します。

支払えない場合は2人とも自己破産をすることになります。

⑤ローンを一括返済する(住み続けられる)

ローンの残債を一括で繰上返済し、所有権移転登記をして、家の名義を単独名義に変更するという方法です。

この場合は、まとまったお金が必要です。

例えば、住宅ローン残債が2,000万円残っている場合、一括返済して単独名義にするには、2,000万円と諸費用(10万円~)が必要です。

預貯金、退職金、生命保険の解約返戻金など、婚姻中に築いた財産(共有財産)を使って完済します。


戸田
なお、次の場合、贈与税がかかります。
  • 離婚協議書に記載していない
  • 持分割合を超えて返済した
  • 名義人以外の資金を使って返済した
持分割合を超えて返済すると贈与税がかかる
    夫婦で共有名義の不動産があり、持分が2分の1ずつだった。

    離婚をすることになったときに、残債は3,000万円あった。

    本来は1,500万円ずつ返済すべき。

    仮に夫が2,500万円を返済し、妻が500万円を返済したら、夫が多く負担した1,000万円は妻への贈与とみなされるため、贈与税がかかる。

「財産分与として清算されたもの」と離婚協議書や公正証書に明記すれば、贈与税はかかりません。

共有持分に詳しい弁護士や司法書士にご相談ください。


戸田
どの手段も取れない場合、どうなるのか?を、この後ご案内しています。

離婚の際に夫婦名義の住宅ローンを支払えないと、最終的にどうなる?

次のような手順で物事が進んでいきます。

  1. 競売で、家に住み続けられなくなる
  2. 競売しても住宅ローンが残る場合は、返済を続ける
  3. 2人とも支払えない場合は、2人とも自己破産する

順番にご案内します。

①競売で、住み続けられなくなる

この場合の競売(けいばい)とは、住宅ローンを貸している金融機関が、裁判所に申し立てて、担保にした家を強制的にオークション形式で売り、その売却代金でローンの回収に充てる法的な手続きのことです。

競売の流れは次の通りです。

  1. 住宅ローンを滞納する
  2. 金融機関から督促が来る
  3. 遅延損害金(ペナルティ)がかかる
  4. 金融機関から一括返済の請求が来る
  5. 競売される

もし支払えないと、金融機関は、まず電話や書面などで支払いを促します。

それでも、返済されない場合は、利息とは別に遅延損害金(ペナルティ)がかかってしまいます。

さらに滞納が続くと、契約違反としてローン全額の一括返済を求められます。

それでも返済されないと、金融機関が抵当権を行使して家を競売し、その代金でローンを回収します。

落札者に所有権が移りますので、その家には住み続けられません。


戸田
競売より、任意売却の方が高く売れますので、残債を少なくすることができます。

「払えない」と分かったら、競売になる前に任意売却の専門機関にご相談ください。

②競売しても残債があれば返済する

競売による売却額が残債より少ない場合は、残った借金を返済し続けることになります。

競売しても500万円の残債があれば、契約形態に応じて返済をし続けます。

ただ、ペアローンでも、連帯債務型でも連帯保証型でも、一方が支払わなければ、もう一方が支払わなければいけなくなります

ローンからは逃れられません。

③2人とも支払えなくなった場合は、自己破産する

元夫婦のどちらも返済能力が無い場合は、2人とも自己破産をすることになります。

自己破産を裁判所に申立てて、 免責が認められれば残債はゼロになります。

ですが、次のようなデメリットがあります。

  • 職業や引越が制限される
  • 官報やブラックリストに載る
  • 財産は処分される

戸田
離婚となると、配偶者と協力するのは難しいと思いますが、少しでも住宅ローンを減らせるように、任意売却をご検討ください。

専門機関が間に入るなどのサポートをしてくれます。

離婚時に共有名義の住宅ローンが無い場合の選択肢

3つ選択肢
  1. 一方が住み続ける
  2. 不動産を売却する
  3. 持分だけを売却する

住宅ローンが無い場合は、離婚協議をして、どのようにするかを決めます。

選択肢は3つあります。

それぞれご案内します。

①一方が住み続ける

離婚協議で、どちらが住み続けるかを決める方法です。


戸田
この方法の手順は次の通りです。
手順 概要
①不動産の算定 住居の現在の市場価値(時価)を査定する
②代償金(だいしょうきん)の決定
(財産分与の額)
①の査定額に夫婦の間に築いた財産額を加えた金額の半分を代償金とする
③代償金の支払い 住み続ける側が代償金を現金で支払う
④名義変更をする ③の後、所有権移転登記を行い、住み続ける側の単独名義に変更する

例えば、住居の査定額が3,000万円で、婚姻中に築いた財産の合計が3,500万円だった場合、住み続ける側が財産分与として半分の1,750万円を代償金として現金で支払うということです。

この場合は財産分与ですので、贈与税はかかりません。

共有名義のままだと、将来、次のようなトラブルが起こる可能性があります。

  • 元配偶者に勝手に持分を売却される…買い取った買取業者から買取の交渉をされる
  • 元配偶者に勝手に持分で不動産担保ローンを利用される…返済不能になると競売になる可能性がある
  • 共有者が増えて揉める…相続した共有者(元配偶者の子など)から家賃請求される、勝手に売却される

ですので、必ず単独名義にしておいてください。

②不動産を売却する

一般の不動産会社に依頼して不動産を売却する方法です。

夫婦(元夫婦)で話し合い、売却価格を決定し、売却後の代金を財産分与として、公平に二等分して分けます。

財産分与ですので、持分に応じて分けるわけではありません。

売却して出た利益から、仲介手数料や登記費用などの諸経費を差し引いてから分配します。

③持分だけを売却する

民法206条で自分の持分だけなら自由に売却できると規定されています。

住宅ローンを完済しているなら、持分だけを売却できます。

ただし、財産保全命令で、売却できないことがあります。

財産保全命令
    離婚の話し合いや裁判の最中に、家庭裁判所や地方裁判所に申し立てることで、相手が持っているお金や不動産などの財産を勝手に動かせないように一時的にブロックする手続き

また、持分を売却する場合は業者選びが大事です。

というのも、悪徳・悪質な業者がいるからです。

次のようなことをしてくるリスクがあります。

  • しつこく営業される
  • 安く買い叩かれる
  • 売却後に修繕費を請求される

売却の依頼先は、次のポイントで選ぶようにしてください。

ポイント 概要
専門分野 訳あり物件ではなく、共有持分専門
売却方法 スピードなら買取、高額なら仲介
対応エリア 不動産会社は対応しているエリア内に強い
接客 営業担当者の能力で結果が変わる
弁護士との提携 悪質、悪徳な業者を避ける、揉めずに売却できる

戸田

売却については、こちらの「共有持分の売却について解説」で詳しくご案内していますので、ご一読ください。

まとめ

住宅ローンと離婚は関係ないため、残債を支払わなければならず、できなければ最終的には自己破産をすることになります。

このページでご案内した方法をご検討ください。

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