「私道が共有持分だけど売却できる?」
「売却する時に気をつけることはある?」
このように考えていませんか。
この記事では私道の共有持分を売却する方法について、プロが分かりやすくご案内しています。
目次
私道の共有持分とは?<売却する前に確認必須!>
私道とは、私人(個人、法人)が所有している土地にある道のことです。
「私道の共有持分」とは、複数の所有者がいる私道のうち、所有している権利の割合のことです。

私道持分と略されることもあります。
なお、「共有持分の私道」とは、1つの私道を複数人で所有しており、各共有者が持分に応じて権利を持っている私道のことです。

このイラストのような、「公道に接していない奥まった土地(袋地)に分譲住宅を建てるにあたって、建築基準法で定められた「接道義務(幅4m以上の道路に2m以上接すること)」を満たすため」に、共有持分の私道にすることが多いです。
- 分割型(相互持合型)…1つの私道を分筆し、単独名義で所有している状態

自分の土地がどちらなのかは、法務局で取得できる「登記事項証明書」でご確認いただけます。
法務局でオンライン申請をすることができます。
私道の共有持分「4つのメリット」
- 道路を通行する権利を持てる
- 建物の建替ができる
- 売却しやすい
- 非課税になることがある
順番にご案内いたします。
【メリット①】道路を通行する権利を持てる
黙認されているケースは多いですが、原則、私道は勝手に通ってはダメです。
ですが、私道に共有持分がある場合、道路の使用権も認められていますので、公道までの私道を自由に通行できます。
- 通行地役権…他人の土地を通行目的で利用できる権利
【メリット②】建物の建替ができる
原則として、建物は公道(建築基準法上の道路)に2m以上接していないと建替できません。
ですが、建築基準法で認められた私道(位置指定道路など)に共有持分がある場合は、公道に直接接していなくても建替できます。
- 位置指定道路…建築基準法42条1項5号にもとづき、特定行政庁(都道府県知事や市区町村長)から位置の指定を受けた幅4m以上の私道
【メリット③】売却しやすい
私道が建築基準法上の道路で、権利関係が明確であれば、建物と私道持分のセットで市場価格相当の金額で売却できます。
ただし、次の場合は、再建築不可物件となるため、売値は市場価格の50%~70%程度になることがあります。
- 私道が建築基準法で認められた私道(位置指定道路など)ではない
- 再建築不可物件…接道義務を満たしていないなど、建築基準法上、今の建物を解体した後の更地に、新たに建物を建てられない物件
【メリット④】非課税になることがある
持分を所有する私道が公衆用道路として認められれば、固定資産税・都市計画税・不動産取得税が非課税になります。
公衆用道路とは、公道ではないが、通行制限や占有などが無く、特定多数の人が自由に通行できる道路のことでです。
- 固定資産税・都市計画税(市町村税)…各市町村(税務課など)
- 不動産取得税…都道府県の税事務所
私道の共有持分「5つのデメリット」
- 修繕費用がかかる
- 固定資産税がかかる
- 売却価格が低くなることがある
- 管理・修繕に同意がいる
- 通行が制限される
順番にご案内いたします。
【デメリット①】修繕費用がかかる
私道が破損した場合、所有者が自分で修繕することになります。
服風の人で利用している私道の場合、次のように負担をします。
- 共有型(共同所有型)…共有者全員が持分に応じて費用を負担する
- 分離型(相互持合型)…単独名義の区画は自己負担、共有で利用している部分は話し合いで決定する
【デメリット②】固定資産税がかかる
市町村などに非課税の申請をしても、公衆用道路として認定されなければ、固定資産税などがかかります。
私道の場合、固定資産税評価額×1.4%です。
持分の割合に応じて負担をします。
例えば、私道の固定資産税評価額が3,000万円で共有者が6人で持分が均等の場合、3,000万円 × 1.4% ÷ 6人 = 7万円です。
税率は自治体によって異なることがあります。
また、市街化区域内の場合、都市計画税(最大0.3%)が別途課税されることもあります。
【デメリット③】売却価格が低くなることがある
売却価格が市場価格よりも低くなるということです。
次のパターンが該当します。
| パターン | 理由 |
|---|---|
| 私道の持分だけを売る | 利用価値がないから |
| 権利関係が不明確な状態 | トラブルになる可能性があるから |
| 私道が建築基準法上の道路ではない | 再建築不可になるから |
| 私道持分が無い | 通行や上下水道工事ができなくなるリスクがあるから |
権利関係が不明確な場合、買主と他の共有者が次のようなことで揉める可能性があります。
- 他の共有者と通行や利用方法で揉める
- 他の共有者から水道やガス管の設置を拒否された
- 他の共有者と私道の修繕費をいくら持つかで揉めた
まずは権利関係を登記簿謄本で確認してみてください。
それから、私道持分が無い場合は、所有権が無いため自由に使えません。
この場合は私道の所有者と交渉をして、通行地役権(掘削権付)を設定し、登記することになります。
売却するにあたって、どうしたらいいのかは、依頼先の不動産会社にご相談ください。
売却先選びが大事です。
【デメリット④】管理・修繕に同意がいる
共有持分の私道の修繕には、次のような同意が必要です。
- 掘削工事(水道・ガス管の引き込み、修繕)…全員の同意
- 道路の修繕(舗装のし直し、軽微な補修)…過半数の同意
掘削工事(くっさくこうじ)とは、地面を掘り起こす工事のことで、私道の建物に水道やガス、下水管などを埋設するために行う工事のことです。
掘削工事には全共有者の同意が必要です。
【デメリット⑤】通行が制限される
他の共有者の迷惑行為で、通行が妨げられたり、車両が通れなくなったりすることがあります。
迷惑行為とは、例えば、次のようなことです。
- 私道に無断駐車される
- 私道に私物(プランター、ゴミ箱、資材など)を置かれる
- 私道の一部を占有される
共有者全員に使用権があるため、迷惑行為をやめさせるのが難しいですし、注意しても改善されない場合があります。
私道の共有持分の売却「4つのパターン」
- 「私道の共有持分」と「私道に接する不動産全体」の売却
- 「私道の共有持分の持分と不動産の持分」の売却
- 「私道の共有持分」or「私道の共有持分の一部」の売却
- 共有者全員で「私道全体」を売却
順番にご案内いたします。
【パターン①】「私道の共有持分」と「私道に接する不動産全体」の売却

「公道に続く私道の持分」と「自分の家」の両方を売却するということです。
共有持分があることで、自由に通行できますし、掘削工事への承諾も得やすくなるため、購入後に他の共有者とトラブルが起きづらく、買主は購入しやすいです。
そのため、一般的な不動産会社が買取に対応しています。
売却する場合は、できれば次の情報をご確認ください。
- 再建築可能かどうか…市町村の窓口で確認
- 私道の固定資産税…固定資産税納税通知書、市町村の窓口で確認
- 私道の修繕費…他の共有者に確認するなど
私道の固定資産税や修繕費は、共有者が持分の割合に応じて負担します。
これらの情報があると買主は不安なく購入できます。
【パターン②】「私道の共有持分の持分と不動産の持分」の売却

持分だけなら、他の共有者の同意不要で、自分の意思だけで売却できることが、民法206条で規定されています。
-
所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する
ですので、例えば、三人兄弟で均等の割合で所有している家があった場合に、末の弟が私道と不動産(家、土地)の両方の3分の1だけを売却するといったことができます。
デメリットは次の通りです。
- 売却先が限られている
- 家の他の共有者と揉めることがある
- 売却価格が相場より低い
一般的な不動産会社では買取に対応していません。
売却先は次の通りです。
- 訳あり物件や共有持分が専門の買取業者(早期現金化)
- 共有持分が専門の仲介業者(高額売却)
- 他の共有者(例えば家族など)
共有持分を第三者に売却する場合の相場は、次の計算式で算出できます。
- 持分の相場 = 不動産の市場価格 × 持分割合 × 評価の割合(30〜50%)
例えば、私道と家の市場価格が6,000万円で、持分が3分の1なら、2,000万円ではなく、600万円~1,000万円になるということです。
詳しくはこちらの「共有持分の買取業者の目的はなんですか?」をご一読ください。
【パターン③】「私道の共有持分」or「私道の共有持分の一部」の売却
自分の不動産は売却せず、「道路の権利」や「その権利の一部だけ」を売るということです。
- 私道の共有持分

- 私道の共有持分の一部(持分)

売却先は次の通りです。
- 他の共有者
- 訳あり物件や共有持分が専門の買取業者(早期現金化)
- 共有持分が専門の仲介業者(高額売却)
メリットは、私道の所有権がなくなるので、私道の分の固定資産税や維持費・修繕費が減ることです。
デメリットは次の通りです。
- 通行を拒否されることがある
- 他の共有者との関係が悪化する可能性がある
- 売却価格が極端に低い
- 買い手が極端に少ない
状況によっては、新しい所有者から「今後は勝手に通行しないでください。通るなら通行料を払ってください」と言われる可能性があります。
勝手なふるまいをして、周囲の信頼関係を失っているので、他の共有者から「繕費用を支払ってください」と言われるなどの嫌がらせを受ける可能性があります。
それから私道だけの権利への需要は非常が少なく、買い手を見つけるのは難しいです。
【パターン④】共有者全員で「私道全体」を売却
私道の所有者全員で私道を売却するということです。

不動産会社が購入する目的は、私道に接する不動産をまとめて買い取り、分譲住宅を建てるなどの再開発することです。
買取る方法は、私道の種類で異なります。
- 共有型の場合…他の共有者から私道持分を順次買取る
- 分筆型の場合…分筆済みの私道部分を所有者から買取る
売却するメリットは市場価格に近い価格で売却できることです。
デメリットは次の通りです。
- 共有者全員の同意がいる
- 通行や掘削工事ができなくなる可能性がある
私道全体を売却するには、私道持分を所有している全員の同意が必要です。
共有者全員の本人確認書類や印鑑証明、実印が必要なため、共有者が多くいるほど条件の調整に時間がかかります。
売却後も通行できるようにするには、契約に通行や掘削工事に関する権利を確保することを盛り込む必要があります。
私道持分の無い再建築不可物件の売却
- 私道に接しているが、その私道の持分を持っていない
- 土地が接道要件を満たしておらず再建築不可
そのため、今ある建物を取り壊すと建替えができません。
この場合の売却は、市場価格よりも減額の評価を受けます。
「私道の持分を持っていない」場合
持分ありを100%とすると、次のような減額評価を受けます。
- 通行地役権(掘削権付)登記あり…90〜95%
- 何も権利なし…60〜80%
持分がある方が評価が高いのですが、私道の持分を買い取るという方法は、交渉の難易度が高く、費用が高いため現実的ではありません。
持分が無くても、通行地役権(掘削権付き)の設定と登記があれば、通行したり、インフラ工事を行ったりすることはできます。
そのため評価の下落幅は押さえられます。
通行地役権(掘削権付き)が無い場合、設定して登記するには数十万円~かかります。
「再建築不可」の場合
再建築不可物件はそのままでも売却できますが、売却価格は市場価格の50%~70%です。
条件によってはそれ以下になることもあります。
この場合、建築可能な状態にすれば実勢価格と同等の金額で売却することができます。
ただし、現実的には難しいです。
- 再建築不可となるケース
| ケース | 概要 |
|---|---|
| 私道の幅が4m未満 | 建築基準法上の道路幅員要件を満たしていない |
| 私道が袋路で延長制限を超えている | 袋路(行き止まり)の長さが制限値を超えると、接道として認められない |
| 私道が公道につながっていない | 道路としての連続性がないと、建築確認で接道として認められない |
| 道路の技術的基準を満たしていない | 幅員・勾配・舗装状態などの基準に適合していない |
| その他の要件不備 | 位置指定未取得、建築確認時に接道として認められない形状など |
| 敷地の間口が2m未満 | 接道義務を満たさないため、建築確認が下りない |
| みなし道路だがセットバック未実施 | 有効幅員が4m未満となり、接道義務を満たせない |
あなたの状況に該当するのはどのケースでしたか?
この後は、ケース別に再建築可にする方法をご案内します。
- ケース別の再建築可にする方法
| ケース | 方法 |
|---|---|
| 私道の幅が4m未満 | セットバック(後退)を実施する、みなし道路の認定手続きをする |
| 敷地の間口が2m未満 | 隣接地の買い取りや交換により、道路への接道間口を2m以上にする |
| 私道が建築基準法上の道路ではない | 私道所有者全員の同意で位置指定道路の新規申請する |
| 私道が袋路(行き止まり)で延長制限を超えている | ターニングスペース(転回広場)を設置する、隣地を買収して公道へ貫通させる |
| 私道が公道につながっていない | 隣地を買収し公道までの通路を確保する、位置指定道路の要件を満たす |
| みなし道路だがセットバック未実施 | セットバック部分の確定・明示 |
| 道路の技術的基準を満たしていない | 私道の構造変更工事(排水、舗装、勾配など)を行う |
| 私道所有者全員の建築承諾が得られない | 私道持分の取得、または弁護士や専門家を介した交渉により承諾を得る |
状況によって価格が異なりますが、基本的には難易度が高く、費用対効果は合わないケースがほとんどです。
ですので、対応できる不動産会社を探して、再建築不可のまま売却することをご検討ください。
私道の共有持分を売却する流れ
ご案内するのは、次の2パターンについてです。
- ①「私道の共有持分」と「私道に接する不動産全体」の売却

- ②「私道の共有持分の持分」と「私道に接する不動産の持分」の売却

ご案内していきます。
- 権利関係の調査
- 書類の準備
- 不動産会社に相談・売却依頼
- 売買契約
①「私道の共有持分」と「私道に接する不動産全体」を売却する場合は、一般の不動産会社でも問題無く対応してくれます。
②「私道の共有持分の持分」と「私道に接する不動産の持分」の場合は、専門性が高いため、次のような業者をお探しください。
- 訳あり物件、共有持分が専門の買取業者
- 共有持分が専門の仲介業者
買取業者の中には悪質・悪徳な業者がいますので、ポイントに沿ってお選びください。
売却に必要な書類は次の通りです。
- 登記事項証明書(登記簿謄本)
- 公図・地積測量図
- 固定資産税評価証明書
- 本人確認書類
- 印鑑証明書
- 実印
必要な書類は、一般的な不動産を売却する際に必要な内容とほどんど変わりません。
良く分からないことも多いと思いますが、不動産会社が案内をしてくれますので、その内容に従って集めてください。
売却先を選ぶ5つのポイント
- 5つのポイント
| 項目 | 内容 | 理由 |
|---|---|---|
| ①専門分野 | 共有持分専門の会社を選ぶ | 持分への対応力が高いから |
| ②弁護士との提携 | 共有持分に強い弁護士がよい | トラブルの予防、トラブルへの対応能力があるから |
| ③買取方法 | スピード重視なら買取、高額売却なら仲介を選ぶ | 買取方法には2種類あるため |
| ④買取スピード | 買取までの日数や現金化までの日数 | 素早く購入できるだけの経験、ノウハウがあるから |
| ⑤買取実績・口コミ | その業者の対応力やサービスの質を見る | 悪質・悪徳な業者を避けられるから |
共有持分の買取に対応しているのは、次の不動産会社です。
- 訳あり物件の買取業者
- 共有持分が専門の買取業者
- 共有持分が専門の仲介業者
共有持分は専門性が高いので、共有持分専門の買取業者か仲介業者にご依頼ください。
買取と仲介の違いは次の通りです。
- 買取業者…自社買取なので、スピーディに現金化してくれる
- 仲介業者…多くの買主にアプローチして、できるだけ高額で売却してくれる
早く現金化したい人は買取業者、高額売却したい人は仲介業者をお選びください。
相談は無料ですので、お気軽にご連絡ください。
専門的な不動産の売却先5社
- 共有持分支援協会
- 大正ハウジング
- ベリーベスト不動産
- クランピーリアルエステート
- アルバリンク
順番にご案内いたします。
共有持分支援協会

共有持分の問題を解決する専門機関です。
仲介にも買取にも対応しています。
急ぎの場合は手付金を即日受け取れます。
共有持分専門の弁護士と提携して問題の解決にあたります。
| 買取方法 | 仲介、買取 |
|---|---|
| 売却日数 | 最短2日 |
| 専門家の在籍 | 弁護士・司法書士・税理士 |
| 対応エリア | 全国 |
| その他 | 手付金(最短翌日)・持分の一部買取、持分のリースバック |
大正ハウジング

共有持分専門の買取業者です。
顧問弁護士と提携しています。
| 買取方法 | 買取 |
|---|---|
| 売却日数 | 最短1週間 |
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| 買取方法 | 買取 |
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| 対応エリア | 全国 |
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訳あり物件専門の買取業者です。
相談件数は毎月300件以上です。
全国1,500件以上の士業と提携しています。
| 買取方法 | 買取 |
|---|---|
| 売却日数 | 最短2日 |
| 専門家の在籍 | 弁護士・司法書士・税理士 |
| 対応エリア | 全国 |
| その他 | 現況のまま買取に対応 |
アルバリンク

訳あり物件専門の買取業者です。
相談実績は年間5,000件です。
| 買取方法 | 買取 |
|---|---|
| 売却日数 | 最短2日 |
| 専門家の在籍 | 弁護士・司法書士 |
| 対応エリア | 全国 |
| その他 | 東京プロマーケット市場に上場 |
まとめ
私道の共有持分の売却方法についてご案内いたしました。
私道持分の売却は権利関係が複雑なので専門業者にご相談ください。
