共有持分を勝手に売却されたらどうなる?トラブルの解決方法を解説

「共有持分を勝手に売却されたみたい。…トラブルになる?」
「勝手に売却された場合の対処法は?」

このように考えていませんか?

この記事では、共有持分を勝手に売却されたらどうなるのかとその対処法を、プロがわかりやすくご案内しています。

この記事の作成者

専門相談員 康原 工偉智Koichi Yasuhara

共有持分支援協会の代表相談員
大阪府出身。プロ野球選手を夢見て、名門PL学園から亜細亜大学に進学。度重なるケガでプロの夢を諦めるも、大手不動産会社に就職。持ち前のバイタリティで営業成績もトップクラスを誇る。共有持分を買取る投資家、不動産業者とのパイプも太い。

共有持分を勝手に売却された!法律的にどうなの?

各共有者が所有する共有持分は、自由に売却することができます

例えば、三人兄弟で共有している実家があった場合に、兄がその持分だけを、他の兄弟の同意や許可を得たり、報告をしたりせずに、買取業者などに売却することができるということです。

これは、民法206条で規定されています。

民法第二百六条「所有権の内容」
    所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。

専門相談員
康原(やすはら)
そのため、法律的には、勝手に売却しても問題ありません

売却先は買取業者や投資家です。

彼らが買取る理由は、利益を得るためです。


康原
利益を得るためのパターンで最も多いのは、持分を全て買取ってからリフォームをして売却することです。

そのため、勝手に売却された後は、買主との交渉が始まります

交渉の結果、買主が持分を全て買取ると、元共有者は退去することになります

その過程で、買取業者との間でトラブルが起こることがあります

共有持分を勝手に売却されると起こるトラブルは7つある!

7つのトラブル
  1. 持分の売却を要求される
  2. しつこく営業される
  3. 行動を制限される
  4. 知らない人が敷地に出入りするようになる
  5. 家賃請求される
  6. 修繕費を払ってもらえないことがある
  7. 共有物分割請求訴訟を起こされる

康原
このようなトラブルは、残った共有者と買取った業者の間で起こります。

それぞれ詳しくご案内します。

【トラブル①】持分の売却を要求される

ご案内した通り、買主(買取業者など)の目的は、残りの共有持分を取得して不動産全体を売却することです。


康原
共有持分をまとめて単独名義にすれば市場価格で売却でき、利益が最大になるため、買取をした業者は他の共有者の持分を手に入れようとします。

誰かが住んでいても交渉は行われます。

交渉の結果、持分を売却したら出て行くことになります。

もし交渉が進まないと買主は訴訟を起こします

【ケース】新しい共有者から連絡が来た

数年前に離婚し、共有名義で購入した家には元妻が住み続け、元夫とは別居していた。

ある日、業者から「あなたの持分を売ってほしい」と連絡が入った。

知らない間に元夫が自分の持分を買取り業者に売却したらしい。

業者によると「場合によっては裁判になる」ということだった。

今住んでいる家を売って、住む場所が無くなったら、この先どうなるのか…。

子供は今の学校に通わせたいし、不安で仕方ない…。

【トラブル②】しつこく営業される

しつこい営業とは、次のようなことです。

  • 朝晩関係なく電話してくる
  • 1日に何度も電話してくる
  • 訪問してきて、なかなか帰らない

営業をする理由は、あなたの持分を買い取るためです。


康原
全ての業者がしつこい営業をするわけではありません。

どの業界にもいる悪徳・悪質な業者の場合は、このような営業をしてきます。

【トラブル③】行動を制限される

買取業者が法律を拡大解釈した主張で行動を制限してくることがあります。

例えば次のような内容です。

  • 「勝手に修繕やリフォーム、清掃などをしてはいけない」
  • 「同意のない修繕なので、元に戻すように」

ですが、実際には、簡単な修繕や清掃などには、同意は不要です。

  • 同意が必要な行為と単独でできる行為
行為の種類 必要な同意
保存行為 単独可(民法252条5項 雨漏り修理、壁の補修、清掃
管理行為 持分価格の過半数 賃貸借契約、軽微でない模様替え
変更行為 全員の同意(民法251条 建物の取り壊し、増築

修理や清掃には本来は同意は不要なのですが、拡大解釈をして「同意が必要だ」と言ってくることがあるということです。


康原
悪徳・悪質な買取業者は、買取交渉のテーブルに付かせるために、このような嫌がらせをしてくることがあります
【ケース】立ち入りを制限された

兄は定期的に相続した実家の掃除をしていた。

ある日、知らない業者から「実家に入るなら事前に許可を取るように」と連絡があった。

どうやら、弟が勝手に持分だけを売却したらしい。

法律などを調べると実際には出入りは問題無い。

兄は、嫌がらせのような悪質な行為をする業者に勝手に売却した弟を電話でしかりつけた。

それがきっかけで兄弟は、連絡を一切取らなくなった。

【トラブル④】知らない人が敷地に出入りするようになる

買主には持分に応じた割合で、土地全体を使用する権利があるということが、民法249条で規定されています。

第二百四十九条「共有物の使用」
    各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。

例えば、次のような合理的な理由を名目にして、敷地に立ち入ってきます。

  • 土地の面積や境界を確認するため
  • 土地の価値を評価するため
  • 現況記録用の写真撮影のため
  • 物件の状態確認のため

他の共有者はこの出入りを拒否することができません

買主の目的は、心理的プレッシャーをかけて、他の共有者の心理状態を次のようにすることです。

  • 「交渉に応じないと、面倒なことになる」と思わせる
  • 「早く売却した方がいいのかも」という気持ちにさせる
  • 「住み続けるのは難しい」と思わせる

康原
悪質・悪徳な業者は、このような嫌がらせをしてくることがあります。

【トラブル⑤】家賃請求される

共有名義の家に1人だけが住んでいる場合、家賃相当額を持分で割った金額を請求されることがあります。

例えば、賃料相場が月15万円の物件で持分が3分の1ずつの場合は、新たな買主から5万円を請求されるということです。

というのも、民法249条には、次のように記載があるからです。

第二百四十九条「共有物の使用」
  1. 共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる
  2. 他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う

買取業者は次のようなことを主張してきます。

  • 「使用していない共有者は使用料相当額を請求でき、使用している共有者は支払う義務がある
  • 「自分も使用したいが、あなたが占有しているため使えない。その対価を支払ってください

拒否した場合は、訴訟を起こされる可能性があります。

このような事態が起こると、共有者には強いストレスがかかり、法律知識のない人は「払わなければならない」と思い込んでしまいます。


康原
家族の間では問題にならなくても、悪徳・悪質な買取業者が関わることで、このような事態になります。

【トラブル⑥】修繕費を払ってもらえないことがある

これまでは家族が共有者だったため、リフォームや修理をしたら、その費用の負担をしてもらうことができました。

法的にも、その権利はあります。

    各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。

ですが、買主の目的は、全ての持分を買い取って、リフォームして売却することです。

その目的に合わないため、次のような理由を付けて支払いを拒否します。

  • 大規模な修繕に同意していない
  • 自分はその家を利用していない
  • 修繕費の見積りが高い
  • 本当に必要な修繕だったのか疑問

大規模な修繕をする場合は、共有者の同意が必要ということは民法251条で規定されています。

第二百五十一条「共有物の変更」
    各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。

そのため、「同意をせずに行ったリフォームは無効」というお題目で対抗してきます。


康原
この他にも色々な理由をつけて修繕費を支払わないため、結局、泣き寝入りすることになります。

【トラブル⑦】共有物分割請求訴訟を起こされる

共有物分割請求訴訟とは、共有状態を解消するために、裁判所に分割方法を決めてもらう訴訟のことです。

最初は話し合いで分割方法を協議しますが、当事者間でまとまらない場合、裁判所に分割方法をゆだねます。

裁判所が命令する分割方法は次の通りです。

  • 代償分割…不動産を取得する人が他の共有者に金銭を支払う方法
  • 現物分割…持分に応じて物理的に分割する方法
  • 換価分割(かんかぶんかつ)…不動産を売却して売却代金を分ける方法

この訴訟は、民法258条で認められている権利のため、他の共有者は拒むことができません

第二百五十八条「裁判による共有物の分割」
    共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。

康原
判決結果によっては、売却したくなくても不動産を手放さなければいけないことがあります。

共有持分を勝手に売却された時の6つの対処法

6つの対処法
  1. 専門の機関に相談する
  2. 自分の持分を共有者に売却する
  3. 自分の持分を第三者に売却する
  4. 売却された持分を買取る
  5. 新しい共有者と協力して不動産全体を売却する
  6. 共有物分割請求訴訟を提起する

順番にご案内いたします。

【対処法①】専門の機関に相談する

弁護士や共有持分の専門機関に相談する方法です。

専門家に相談することで状況の悪化を防ぐことができる可能性が高いです。


康原
当協会は共有持分の問題解決の専門機関です。

ご相談は無料ですので、お気軽にご連絡ください。 

>>協会にメールで相談する(無料)

>>協会に電話相談をする(無料)

 

【対処法②】自分の持分を共有者に売却する

あなたの持分を他の共有者に売却する方法です。

他の共有者に売却する場合は、市場価格に近い金額で売却することになります。

買取業者に売却する場合は、市場価格の30%~50%が相場ですので、その分、お得です。

例えば、兄と弟、買主の3人で共有で所有している不動産全体の価格が6,000万円で、弟が兄に3分の1を売却するなら金額は市場価格相当の2,000万円ですが、買取業者や買主に売却すると600万円~1,000万円になるということです。


康原
持分の売却相場について、より詳しくはこちらの「共有持分の売却相場は市場価格より30~50%低い!」でご確認いただけます。

【対処法③】自分の持分を第三者に売却する

共有持分を買取している専門の業者に売却する方法です。

ご案内している通り、自分の持分だけなら他の共有者の許可なく売却することができます。

買取業者に売却する場合の相場は「市場価格×持分割合×30%~50%」です。


康原
30%~50%になる理由は次の通りです。

  • 買主の目的達成に手間と時間がかかるから
  • 他の共有者とのトラブルリスクがあるから
  • 買い手が少ないから

詳しくはこちらの「共有持分の売却相場は市場価格より30~50%低い!」でご確認ください。

【対処法④】売却された持分を買取る

売却された持分を買主から購入するということです。

この場合は、「市場価格×持分割合」で買取ることになります。

例えば、兄と弟、買主の3人で共有で所有している不動産全体の価格が6,000万円で、兄が買主から3分の1を買取る場合、金額は2,000万円です。

ただし、悪徳業者の場合、高値で買い取らせようとしてくることがあります。


康原
対抗できるように、業者に査定を依頼して、相場を事前に把握しておいてください。

【対処法⑤】新しい共有者と協力して不動産全体を売却する

新しい買主や他の共有者全員と協力して不動産全体を売却する方法です。

売却には共有者全員の同意が必要です。

この場合、市場価格で取引できるので、持分だけを売却するより高値で取引できます。


康原
売却後は、売却益を持分に応じて分けます。

利益が出た場合は譲渡所得税を支払うことになりますが、住んでいる場合は3,000万円の控除を受けられます。

詳しくは「共有持分を売却した時の税金の計算方法」でご確認いただけます。

【対処法⑥】共有物分割請求訴訟を提起する

自分で共有物分割訴訟を起こして、その判決に従うという方法です。

分割方法は3つありますが、自分に不利な判決になることがあります

次のような理由でメリットはほとんどありません。

  • 競売で安い価格でしか売れない(市場価格の30~70%)
  • 裁判費用がかかる(数十万円~)
  • 時間がかかる(半年~1年)

共有名義の問題に詳しい弁護士に相談して、訴訟するかどうかをご検討ください。

勝手に売却されることを防ぐ5つの方法!

  • 5つの方法
方法 内容
他の共有者から買取るか譲り受ける 他の共有者の持分を取得して単独所有にする
自分の持分を売却する 他の共有者や買取業者に売却する
自分の持分を放棄する 他の共有者に無償で譲る
分筆する 土地を分けて登記して独立した所有者になる
不動産全体を売却して現金で分ける 共有者全員で物件全体を売却して代金を分配する

すべて共有状態を解消する方法です。

解消とは、1つの不動産を複数人で共有している状態を終わらせて、単独所有や現金に整理することです。

共有状態を解消すれば、勝手に売却された後に起きるトラブルを回避することができます。

自分の持分だけを売却する場合は、共有持分に対応している買取業者か仲介業者にご依頼ください。


康原
より詳しくは「共有持分を売却する5つの方法の①と②」をご覧ください。

まとめ

共有持分を勝手に売却された時のトラブルや対処法をご案内いたしました。

勝手に売却されて困っている場合は、当協会にご相談ください。