【徹底解説】共有名義で住宅ローンを組むのと夫のみ、どっちがいい?

「夫婦の共有名義で住宅ローンを組むべき?」
「夫の単独名義で借りるべき?」

どちらにするか、悩んでいませんか?

このページでは、住宅ローンを共有名義で組むべきかどうかを判断するポイントなどを、プロが分かりやすくご案内します。

この記事の作成者

専門相談員 大伊 真衣Mai Oi

【資格】宅地建物取引士、秘書検定2級
静岡県出身。お客様とのご縁を大切に、真心を尽くした接客を心がけている。好きな言葉は、為せば成る、為さねばならぬ何事も。特技はクラシックバレエ。

住宅ローン、共有名義と夫単独のどちらがいい?


専門相談員
大伊(おおい)
住宅ローンの名義を、夫婦共有にするか、夫か妻の単独にするのか、悩みどころですよね。

その判断をするには、違いを理解する必要があります。

まずは、こちらをご覧ください。

  • 共有名義と単独名義の違い
項目 共有名義のローン 夫の単独名義のローン
借入可能額 夫婦の収入合算のため大きい

例)夫婦合算の世帯年収が800万円の場合、最大6,000万円程度

1人の収入だけで計算される

例)夫の年収が500万円の場合、最大3,500万円程度

住宅ローン控除 ・ペアローンと連帯債務型は夫婦2名分受けられるので年間70万円まで

・連帯保証型は主債務者のみなので35万円まで

名義人だけなので年間35万円まで
諸費用(初期費用) ・ペアローンは契約2本分

・連帯債務型・連帯保証型は契約1本分

契約1本分
売却時の同意 夫婦2人(共有者全員)の同意が必要 名義人1人の判断でOK
団信(団体信用生命保険)に加入している場合の返済義務 ・連帯債務型も連帯保証型も配偶者は返済義務なし

・ペアローンは亡くなった人の分だけ完済のため、もう一方は返済する

配偶者は返済義務なし

どちらがいいのかを判断するには、この表の理解をする必要があります。


大伊
ここからは、特に大事な次の4つのポイントをご案内します。
  1. 夫婦2名で利用できる住宅ローンは3種類
  2. 住宅ローン控除について
  3. 諸費用(初期費用)について
  4. 団信(団体信用生命保険)に加入している場合の返済義務について

❶夫婦2名で利用できる住宅ローンは3種類

借入額が多ければ、よりよい条件の戸建やマンションに住むことができます。

夫婦の収入を合算して利用できる住宅ローンは3種類あります。

ローンの種類 概要
①ペアローン 夫婦がそれぞれ別々の住宅ローンを組む(2本の契約
②連帯債務型 1つの住宅ローン契約に対して、夫婦が主債務者と連帯債務者という形で共同で債務を負う(1本の契約)
③連帯保証型 主債務者である配偶者の一方が1つの住宅ローンを組み、もう一方が連帯保証人となる(1本の契約)

大伊
この時点で、頭が混乱してしまうかもしれませんが、後悔しないためにも、違いをぜひ理解してください

それぞれの違いは次の通りです。

項目 ペアローン 連帯債務 連帯保証
ローンの契約数 2本 1本 1本
団信 2人とも加入できる 主債務者のみ(夫婦で加入するサービスもある) 主債務者のみ
住宅ローン控除 2人とも受けられる(負担割合に応じて) 2人とも受けられる(負担割合に応じて) 主債務者のみ
諸費用・手続きの手間 2本分かかる 1本分 1本分
返済義務 ・各自が自分のローンを返済

一方の返済が滞ると、一方が全額を負担

・契約者が返済する

・団信未加入の場合、返済が滞ると、連帯債務者が全額を負担

・契約者が返済する

・団信未加入の場合、返済が滞ると、連帯保証人が全額を負担

取り扱い金融機関 多い 少ない 多い

大伊
できれば、不動産購入する際にすすめられたまま住宅ローンに申し込むのではなく、しっかりと違いご理解ください。

❷住宅ローン控除について

住宅ローン控除とは、住宅ローンを組んで家を購入したり、建てたりした人が、所得税や住民税から一定額を差し引いてもらえる制度のことです。

正式名称は住宅借入金等特別控除です。

13年間、年末時点のローン残高の0.7%が、所得税から差し引かれます。

例えば、6,200万円を借りて、今年の残債が6,000万円の場合は42万円が控除されることがあります。


大伊
実際の控除額は住宅の種類や所得税額によって異なります。

ペアローンと連帯債務型の場合は、夫婦がそれぞれ利用できます。

年間最大70万円まで控除(1億円借りた場合)を受けられます。


大伊
税務署などで手続きをする必要がありますが、まずは、不動産会社と住宅ローンの会社に質問をしてみてください。

参考)国税庁「住宅借入金等特別控参考)国税庁除」

③諸費用(初期費用)について

住宅ローンを利用する場合、諸費用がかかります。

具体的には次のような費用のことです。

  • 印紙税
  • 事務手数料
  • 保証料
  • 保険(火災保険・地震保険)

例えば、3,000万円の住宅を購入する場合、諸費用の目安は70万円〜120万円です。

ペアローンの場合は2人分のため、90万円~140万円程度かかります。


大伊
受けられる控除の額と諸費用を計算する必要があります。

住宅ローン関連の諸費用は、不動産会社、住宅ローンの会社に聞けば教えてくれます。

ですが、控除額は自分で確認して計算をする必要があります。

④団信(団体信用生命保険)に加入している場合の返済義務について

団信とは、住宅ローンを借りた人が返済中に死亡したり、重度の障害を持ってしまったりした場合に、保険金でローンの残債を完済できる保険のことです。

単独名義の場合や、連帯債務で夫婦連生団信に加入している場合は、完済されます。

連帯保証の場合は、主債務者が亡くなれば完済されます。

ペアローンで団信を利用する場合、各契約者が加入しますので、一方が亡くなっても、もう一方の返済は続きます


大伊
単独名義と共有名義、それぞれ一長一短あります。

住宅ローンを借りる前にそれぞれのメリットとデメリットを把握した上で、ご検討ください。

共有名義で住宅ローンを組むメリットとデメリット

  • メリット
メリット 概要
借りられる金額が大きい 夫婦の収入合算で審査を受けられるので、単独の場合よりも金額が大きくなる
住宅ローン控除を2人分受けられる ペアローンと連帯債務型は2名分で年間最大70万円
相続税対策になる 持分に対して課税される
場合によっては相続税がかからない場合がある

  • 借りられる金額が大きいので、良い条件の戸建やマンションに住める
  • 住宅ローン控除を2人分受けられる

この2つが大きなメリットです。


大伊
初めて出てきた相続税対策については、ケースをご案内します。
【ケース】相続税がかからなかった
    出資比率は夫70%、妻30%で5,000万円の戸建を購入した。

    住宅ローンを完済し終え、子供2人は独立し、夫が75歳で亡くなった。

    戸建の評価額は5,000万円、夫婦の貯金額は800万円。

    夫の遺産の合計は3,900万円(3,500万円+400万円)で、基礎控除が4,800万円(3,000万円 + (600万円 x 3))のため、相続税はかからなかった。

続いてデメリットです。

  • デメリット
デメリット 概要
諸費用が増加する ペアローンの場合、契約が2本となり、諸費用が2倍近くかかることがある
離婚時に揉めやすい 「住むのか、売るのか?」「住宅ローンはどうするのか?」などの決断で揉める
夫が滞納したら妻が負担する ・ペアローンの場合は妻が肩代わりする

・連帯債務型、連帯責任型の場合は、妻が全額を返済する義務を負う

将来、売却などで揉めることがある 売却する場合、2人の同意が必要のため、一方が「住みたい」、一方が「売りたい」場合に揉める

離婚をした場合、家をどうするかで揉めます。

このとき、住宅ローンが残っていると、売却することが多いです。


大伊
より詳しくはこちらの「離婚の際、共有持分の家を売却できる?」をご覧ください。

将来、売却などで揉めることがある理由は、共有名義にすると、共有者の同意が必要になるケースがあるからです。

  • 変更(売却、増築、解体、抵当権の設定など)…共有者全員の同意
  • 管理(リフォーム、修繕、賃貸化など)…持分の過半数の同意
  • 保存(緊急の補修、簡単な掃除)…単独でできる

例えば、夫70%、妻30%の出資割合で建てた戸建の場合、妻が「リフォームをしたい」といっても、夫が「お金がかかるからダメ」といえば、リフォームすることができません。

住宅ローンを夫や妻が単独で組むメリットとデメリット

メリット
  1. 返済計画を立てやすい
  2. ローン契約の手続きがシンプル
  3. 離婚時の手続きがシンプル

安定した職業についているなら、「毎月〇円を夫の給料から返済し、ボーナスで〇円を返す」「余裕があれば繰り上げ返済する」と、とてもシンプルですので、返済計画を立てやすいです。

契約が1人分で済むため、必要書類や手続きが少なく、スムーズに審査から契約まで進められます。

デメリット
  1. 借入可能額が夫婦合算よりも低い
  2. 住宅ローン控除が1人分だけ

夫単独の収入で審査を受けますので、借りられる住宅ローンの金額は低いです。

希望の物件を購入できず、何かを諦める必要が出てきます。


大伊
この違いをしっかりとご理解いただければと思います。

共有名義にした方がいいケースと単独名義にした方がいいケース

  • 共有名義にした方がいいケース
ケース 理由
夫婦が正社員で長期的に共働きを続ける予定がある ローン返済の負担も分散でき、資金計画が立てやすくなる
単独では購入できない価格帯の物件を希望している 都市部の新築マンションや人気エリアの戸建てなど、条件の良い(価格が高い)物件に住むことができる
住宅ローン控除を2名分受けたいと考えている ペアローンや連帯債務の場合、夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けられる

単独名義にした方がいいケースは次の通りです。

  • 単独名義にした方がいいケース
ケース 理由
妻に子供ができたら退職する 片方の収入が減少すると返済負担の見通しが立てにくくなる
初期費用や手続きを最小限にしたい 単独名義であれば契約は1本で済むため、手続きもシンプルで費用も抑えられる
単独の年収で希望の物件を購入できる 夫に十分な収入があるため、合算しなくても条件の良い物件を購入できる

大伊
実際の状況をしっかりと整理し、単独と共同のメリット・デメリットを理解した上で、ご判断ください。

【状況別】夫婦で住宅ローンを組んで離婚したら、こう対処しよう!

よくある状況
  1. 住宅ローンが残っていない
  2. 住宅ローンが残っている(アンダーローン)
  3. 住宅ローンが残っている(オーバーローン)

それぞれご案内していきます。

【状況①】住宅ローンが残っていない 

この場合は、次のどちらかを行います。

  • 家を売却して、現金を持分に応じて分配する
  • どちらか一方が住み続ける

離婚協議でどうするかを決めます。

売却する場合は、持分に関わらず、財産分与で売却益を半分ずつ分けることが多いです。

一方が単独名義にして住み続ける場合は、住み続ける側が、相手に持分相当の現金を支払うなどをします。

共有名義のままだと、後々揉めることになるので、解消してください。


大伊
詳しくは「離婚後も共有名義のまま名義変更をしない7つのデメリットと対策!」でご案内していますので、ご覧ください。

【状況②】住宅ローンが残っている(アンダーローン)

アンダーローンとは、家を売却すれば、住宅ローンを完済してもお金が残る状態です。

この場合は、売却し、ローンを完済した後、残った売却益を財産分与で折半することが多いです。

住み続ける場合は、住み続ける側が、住宅ローンを借り換えて、相手の持分を買取り、単独名義にすることが多いです。

ただし、安定した収入が無いと金融機関の承諾が降りません。

【状況③】住宅ローンが残っている(オーバーローン)

オーバーローンとは、家を売却しても、住宅ローンを完済できない状態のことです。

取れる対策は次の通りです。

  • 預貯金で住宅ローンを完済して売却する
  • 任意売却し、残ったローン残債は返済する

任意売却とは、金融機関の承諾を得て売却する方法です。

支払った後の残債は、引き続き返済を続けます。

なお、住み続けたくても、金融機関からの承諾が得られないことが多く、とても難しいです。

まとめ

住宅ローンを契約するにあたって、共有名義にするか、夫だけにするかは、状況によります。

このページの情報をもとに、ご検討ください。