共有持分の親族間売買の注意点6つや適正価格の決め方などを解説!

「共有持分の家を親族間で売買できる?」
「何か気を付けることは?」

このように考えていませんか?

この記事では、共有持分の親族間売買について、プロが分かりやすくご案内しています。

この記事の作成者

専門相談員 康原 工偉智Koichi Yasuhara

共有持分支援協会の代表相談員
大阪府出身。プロ野球選手を夢見て、名門PL学園から亜細亜大学に進学。度重なるケガでプロの夢を諦めるも、大手不動産会社に就職。持ち前のバイタリティで営業成績もトップクラスを誇る。共有持分を買取る投資家、不動産業者とのパイプも太い。

共有持分の親族間売買はできる


代表相談員
康原
親族間でも問題なく売買することができます。

共有持分の親族間売買とは、親族間で不動産の共有持分を売買する取引のことです。

親族とは、民法725条では「6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族」と定められています。

具体的な範囲は次の通りです。

  • 親子
  • 兄弟姉妹
  • 祖父母と孫
  • 配偶者
  • おじ・おば・いとこなどの親戚

次のようなケース・目的で親族間の売買が行われます。

ケース 目的
兄弟・姉妹で相続した共有名義の家を誰か1人が買い取る 共有状態を解消し、単独所有にして、自由に売却・活用できるようにする
親子共有名義の不動産を親(もしくは子)が買い取る 相続人間での共有を避け、将来の遺産分割トラブルを防ぐ
経営者である親が事業用不動産を子に売却する 事業承継を円滑に進め、相続税対策を行う後継者である子に段階的に譲渡する

共有持分を親族間で売買する6つのメリット

6つのメリット
  1. 不動産を自由に処分・活用できる(買主)
  2. 費用の負担が無くなる(売主)
  3. 相続・遺産分割のトラブルを防げる(売主・買主)
  4. 売却の自由度が高い(売主・買主)
  5. 仲介手数料が発生しない(売主・買主)
  6. 親の老後資金・介護費用を確保できる(売主・買主)

順番にご案内します。

【メリット①】不動産を自由に処分・活用できる(買主)

理由は、共有状態での、次のような行為への制限が無くなるからです。

  • 不動産全体の売却
  • 抵当権の設定
  • 建物の取り壊しや建て替え

例えば、兄弟3人で相続した実家の全ての持分を長男が買い取って単独所有にすれば、誰にも相談せずに建物を取り壊して駐車場にすることができます。

共有状態では1人でも反対すれば実行できません


康原
共有名義だと、他の共有者との報告・連絡・相談が欠かせませんが、単独名義にすると不動産の活用範囲は格段に広がります。

【メリット②】費用の負担が無くなる(売主)

主な維持費用は次の通りです。

費用 項目金額目安(戸建て住宅の場合)
固定資産税 年間10万円~
都市計画税 年間3万円〜
外壁・屋根の塗装 10〜15年ごとに100万円~
給排水設備の交換 15〜20年ごとに50万円~

売主は共有持分を手放すことで、固定資産税や修繕費などの費用負担が無くなります

それまでは、持分割合に応じた維持費用を支払う必要があります。

例えば、住んでいない実家の共有持分が3分の1の場合、固定資産税だけで年間3万円〜かかります。


康原
「利用していないのに、費用だけ負担する」という状況は揉める典型例です。

より詳しくは「共有名義の固定資産税の納税者や負担額などの基本」をご一読ください。

【メリット③】相続・遺産分割のトラブルを防げる(売主・買主)

持分を単独名義にしておけば、共有持分による親族間のトラブルなどが無くなるからです。

よくあるのは、次のようなことです。

  • 売却や活用方法について意見がまとまらず、対立する
  • 管理費用の負担を巡って揉める
  • 連絡がつかなくなる

例えば、兄弟3人で共有していた不動産があり、長男が亡くなると、その持分は妻と子2人に分割され、共有者が5人に増加し、揉め事が起こりやすい状態になります。


康原
関わる人が多くなるほど、揉めやすくなります。

【メリット④】売却の自由度が高い(売主・買主)

理由は、親族間では柔軟に条件について話し合えるからです。

条件とは次のようなことです。

  • 売買価格
  • 売買の時期
  • 支払い方法(分割払いの回数)

例えば、「親が75歳になる来年4月に施設の入居を予定しているから、売買契約を11月に締結し、決済を1月にしよう」など、柔軟にスケジュールを調整することができます。


康原
親族間で、普段からお金に関するコミュニケーションを取っていればスムーズです。

ただし、何かあっても大丈夫なように、司法書士に依頼して契約書を作成することをご検討ください。

費用は10万円~です。

【メリット⑤】仲介手数料が発生しない(売主・買主)

理由は、不動産会社が間に入らないからです。

例えば、2,000万円の不動産を売買する場合、不動産会社を通すと、仲介手数料だけで約70万円以上かかります。


康原
その分の費用を司法書士への契約書作成や登記の依頼に充てることをご検討ください。

【メリット⑥】親の老後資金・介護費用を確保できる(売主・買主)

理由は、不動産の持分を現金化することで必要な資金を手元に用意できるからです。

親が高齢になると、次のような費用が必要になることがあります。

  • 介護施設の入居費用:数百万円〜数千万円
  • 医療費や介護サービスの利用料:月数万円〜数十万円
  • 生活費の補填

親が実家の持分を子に売却すれば、こうした費用に充てられます。

【ケース】持分の売買費用を施設の費用に充てた
    実家で一人暮らしをしていた母が、有料の施設へ入居することになり、その費用を母の持分2分の1の売却でまかなうことにしました。

    マンションに住む長男が複数の不動産会社に査定を依頼したところ、実家が5,000万円相当と分かったため、500万円を自己資金で、残りを親族間売買に対応している住宅ローンを借りて購入しました。

    長男は実家に住み、母は売却代金を施設入居費用に充てました。

親族間で売買する5つのデメリット・注意点

5つのデメリット・注意点
  1. 金銭トラブルが起きる可能性がある(売主・買主)
  2. 法的トラブルが起きる可能性がある(売主・買主)
  3. 住宅ローンの審査が通りにくい(買主)
  4. 贈与税が発生する可能性がある(買主)
  5. 税制優遇措置が受けられないケースがある(売主・買主)

順番にご案内します。

【デメリット①】金銭トラブルが起きる可能性がある(売主・買主)

理由は、親族間では甘えが生じることが多いからです。

具体的には次のような金銭トラブルです。

  • 適正価格をめぐって意見が対立する
  • 売買代金が約束通りに支払われない
  • 分割払いの途中で支払いが止まる

特に、住宅ローンを利用せず分割払いにした場合、支払いが滞るリスクは高くなります。

予防策は公正証書の作成(5,000円~)です。

公正証書とは、公証人が作成する法的効力を持つ書類のことで、作成しておけば、支払いが滞っても相手の預貯金などを差し押さえて回収することができます。

ただし、相手に財産が無ければ、回収できません

【デメリット②】法的トラブルが起きる可能性がある(売主・買主)

理由は、親族間という関係性では法的な手続きを軽視しがちになるからです。

具体的には次のようなことです。

問題となる行為 発生するトラブル
持分移転登記が放置される ・登記しないと第三者に権利を主張できない
・二重譲渡されるリスクがある
・持分を売却・担保設定できない
契約書の記載内容に不備が発生する ・維持費の負担方法が不明確になる
・「言った・言わない」のトラブルが起きる
・後から条件変更を主張される
未成年者の持分売買で特別代理人を選任していない ・親が子の代理人になれない
・家庭裁判所への申立てが必要(手続きに2〜3週間以上かかる)

親が子(未成年)の代理人になれない理由は、利益相反(りえきそうはん)に該当するからです。

利益相反とは、親と子の利益が対立する状況のことです。

親子間売買では、親(もしくは子)が売主、子(もしくは親)が買主という対立する立場になります。

価格交渉の場面で利害が対立するため、親が子の代理人として契約することは法律上認められていません。


康原
間に司法書士などの専門家を入れると、こうした漏れはなくなり、トラブルになりづらいです。

【デメリット③】住宅ローンの審査が通りにくい(買主)

理由は、金融機関が親族間での税金対策や資金の流用を警戒しており、住宅ローンの審査を厳しく行っているからです。

審査に落ちた場合の対応法は次の通りです。

対応方法 内容
現金での購入 一括か分割払い
対応可能な金融機関を探す 親族間売買でも対応可能な金融機関を探す
代替手段の活用 親からの贈与

【デメリット④】贈与税が発生する可能性がある(買主)

理由は、市場価格と大きく乖離した金額で売買すると、税務署が贈与と判断するからです。

【ケース】安く売却して贈与税がかかった

市場価格2,000万円の家を姉と弟が半分ずつ相続しました。

弟が市場価格1,000万円相当の持分を姉に650万円で売却したところ、「弟から姉に350万円の贈与があった」とみなされ、姉に贈与税がかかりました。

【ケース】高く売却して贈与税がかかった

市場価格3,000万円の家を兄と妹半分ずつ相続しました。

妹が1,500万円相当の持分を、お金に困っている弟から1,900万円で買い取りました。

弟は「400万円分得した!」と喜んでいましたが、姉から弟への贈与があったとみなされ、弟に贈与税がかかりました。

税務署は、法務局から不動産の所有権移転の情報を入手しています。

特に親子や兄弟姉妹間の移転については、市場価格と乖離した売買が行われがちなため、丁寧にチェックされます。

【デメリット⑤】税制優遇措置が受けられないケースがある(売主・買主)

理由は、多くの税制特例に「生計を一(いつ)にする親族との売買は対象外」という要件が設けられているからです。

生計を一にする親族とは、次のような親族のことです。

  • 同居している夫婦、親子、祖父母
  • 単身赴任中の配偶者
  • 別居でも仕送りで生活している学生の子

この場合、次の特例は適用できません

特例名 概要
マイホームを売ったときの特例 譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度
マイホームを売ったときの軽減税率の特例 所有期間10年超の居住用不動産の売却時に税率が軽減される制度
住宅ローン減税 住宅ローン利用時に所得税から一定額を控除できる制度

これらの特例が使えないことで、税負担が大きくなる可能性があります。

取引を進める前に、実際の税負担額を試算しておくことをおすすめします。


康原
まずは一度、「共有持分を売却した時の税金の計算方法や確定申告の方法」をご一読ください。

その上で、税理士などの専門家に相談することをご検討ください。

共有持分を親族間で売買する流れと費用

流れは次のとおりです。

流れ 概要
①共有者と話し合い合意形成する ・売買価格を決める
・支払方法(一括か分割か)を決める
・引渡し時期を決める
②適正な売買価格を算定する ・不動産会社に査定を依頼する
③売買契約書を作成し契約を締結する ・売買契約書に必要事項を記載する
・双方が内容を確認し署名・押印する(売主・買主が各1通ずつ保管)
④決済と所有権移転登記を行う ・売買代金を支払う
・司法書士に登記手続きを依頼する
・登録免許税を納付する
⑤確定申告を行う ・売却益が出た場合は翌年2月16日〜3月15日に申告・譲渡所得税を納付する

康原
親族間の取引であっても、正式な契約書の作成と登記手続きは必須だとお考えください。

口約束だけで済ませると、後から紛争に発展する可能性が高いです。

価格は、複数の査定会社に依頼して、客観的な根拠を得ることで、みなし贈与になることを避けられます。

不動産鑑定士に依頼することもご検討ください。

買主にかかる主な費用・税金は次の通りです。

項目 費用の目安
不動産取得税 固定資産税評価額の3〜4%
印紙税 契約金額に応じて200円〜60万円
録免許税 固定資産税評価額の2%(土地1.5%・住宅0.3%などの軽減あり)
司法書士報酬 5万〜15万円程度
仲介手数料 売買価格×3% + 6万円 + 消費税

康原
不動産取得税は、取得から半年〜1年程度経過してから納税通知が届くため、ご注意ください。

売主にかかる主な費用・税金は次の通りです。

項目 目安
印紙税 契約金額に応じて200円〜60万円
譲渡所得税(利益が出た場合) 短期譲渡(5年以下)は約39.63%、長期譲渡(5年超)は約20.315%
※復興特別所得税含む
抵当権抹消登記費用 登録免許税1,000円+司法書士報酬1万〜3万円
仲介手数料(業者利用時) 売買価格×3% + 6万円 + 消費税

親族間売買では、不動産会社を通さないことが多いです。

その場合は仲介手数料はかかりません。

親族間売買における共有持分の適正価格「3つの決め方」

適正価格の決め方には、次のような方法があります。

方法 概要 メリット・注意点
①不動産会社の査定価格を使う 複数の不動産会社に無料査定を依頼し、市場価格の目安を把握する ・無料で依頼できる
・市場の実勢価格がわかる
・査定価格は高めになる傾向がある
②不動産鑑定士の鑑定評価を使う 不動産鑑定士に鑑定を依頼し、公的な評価額を取得する ・税務署への証明資料になる
・客観的な根拠として強い
・費用が数十万円かかる
③相続税評価額の80%以上で設定する 相続税評価額を算出し、その80%以上の価格で売買する ・自分でも計算できる
・相続税評価額は時価の70〜80%程度のため、そのまま使うと低すぎる可能性がある

康原
不動産会社に査定を依頼する方法はよく使われます。

この場合は、3社以上に依頼して目安や相場観を把握してください。

不動産の評価額が大きい場合は、不動産鑑定士に依頼することをご検討ください。

相続税評価額を知る方法は2つあります。

  • 固定資産税納税通知書を確認する
  • 国税庁の路線価図で土地を調べる

相続税評価額の80%以上の価格で設定する場合の計算式は「不動産全体の相続税評価額 × 持分割合」です。

例えば、評価額5,000万円の実家の2分の1の場合、相続税評価額2,500万円の80%以上の2,000万円以上で売買すれば、みなし贈与とされるリスクは低くなります。

親族間売買以外の5つの選択肢

選択肢 概要
①共有不動産全体を売却する ・共有者全員の同意を得て不動産全体を第三者に売却し、代金を持分割合に応じて分配する方法
・市場価格で売却できるが、全員の同意が必要
②自分の共有持分を第三者に売却する ・自分の持分だけを買取業者などに売却する方法
他の共有者の同意は不要で、短期間で現金化できるが、市場価格より安くなる

共有持分の売却についてはこちらで解説しています

③共有物分割請求を行う ・共有者に①現物分割、②代償分割、③換価分割のいずれかの分割方法について協議を打診する
・協議でまとまらない場合は、共有物分割請求訴訟を提起する
・裁判所が公平に決定するが、解決まで時間と費用がかかる

共有物分割請求訴訟についてはこちらで解説しています

④土地を分筆する ・1つの土地を複数に分割し、各共有者が単独所有する方法
・将来のトラブルを防げるが、建物は分筆できない
⑤共有持分を放棄する ・自分の持分を手放し、他の共有者に自動的に移転させる方法
・放棄した持分は贈与扱いとなり、受け取る側に贈与税が発生する可能性がある

放棄についてはこちらで解説しています

⑥共有持分を贈与する ・自分の持分を無償で他者に譲渡する方法
・受け取る側に贈与税が発生する

贈与についてはこちらで解説しています

贈与では、年間110万円までは基礎控除により贈与税はかかりません。

自分の状況に合わせて最適な選択肢をご検討ください。

まとめ

共有持分の親族間売買は問題なく行うことができます。

ただし、親族間という安心感からくる気のゆるみなどでトラブルになることがありますので、専門家への相談を検討してください。

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