「実家を共有名義で相続すると、生活保護はどうなる?」
「共有名義の家に住んでるけど、生活保護を受けれる?」
このように不安に思っていませんか?
この記事では次のことを、プロが分かりやすくご案内します。
- 今、共有不動産があるが、生活保護を受給できるのか?
- 今、生活保護を受給中だが、共有不動産を持っても継続できるのか?
結論としては、できるケースもありますが、できないケースもあります。
目次
生活保護とは?受給条件を解説
生活保護とは、生活に困窮している人の最低限度の生活を保障し、自立を助けることを目的とした国の制度のことです。
最寄りの市区町村の福祉事務所に申請をし、審査を受けて通れば、受給が決定します。
受給の前提として、次のことが挙げられます。
- 日本に居住していること
- 他に使える制度が無い状態なこと
その上で、主な受給条件は次の通りです。
- 生活保護の主な受給要件
| 受給条件 | 概要 |
|---|---|
| 資産要件 | 預貯金、不動産、自動車など活用できる資産がないこと |
| 収入要件 | 世帯の収入が最低生活費を下回っていること |
| 扶養義務 | 親族からの援助を受けられないこと |
| 就労能力 | 働ける人は能力に応じて働くこと |
この受給条件のうち、共有名義の不動産に関連するのは資産要件です。
共有名義の不動産を次ように活用できるかどうかが、受給のポイントです。
- 売る…現金化して生活費にあてる
- 収入源にできる…賃貸に出して家賃収入を得る
- 住む…自宅として利用している
共有名義の不動産とは?生活保護における扱いを解説
- 共有名義の不動産とは
- 生活保護における共有持分の扱い
この2つをご案内していきます。
共有名義の不動産とは

1つの不動産を複数人で所有している状態の不動産(土地、建物、マンションなど)のことです。
例えば、親が亡くなり、実家を兄弟3人で均等の割合で相続した場合、それぞれが3分の1ずつの権利を持つ共有名義になります。
この権利の割合のことを共有持分といいます。
>>共有名義とは?単独名義・共有持分との違いやメリット・デメリットを解説!
>>不動産の共有持分とは?共有名義との違いやメリット・デメリットを解説
生活保護における共有持分の扱い
共有持分は、不動産の権利の割合ですので、資産に該当します。
資産を持っている場合は、原則として受給できません。
ただし、次の場合は受給できる可能性があります。
- 居住している
- 不動産の価値が低い
- 売却が難しい
など
理由は、このような資産は、「活用できる資産ではない」と判断されるからです。
共有名義の不動産があっても、生活保護を受給・継続できる3つのケース
- 居住用不動産で処分価値が低い
- 売却ができない
- 他の共有者が居住している
それぞれご案内します。
①居住用不動産で処分価値が低い
現在住んでいる共有不動産を売却してもあまり手元にお金が残らない場合のことです。
受給できる理由は、生活保護法では「居住用不動産は、処分価値が著しく大きくない限り、保有を認める」と定められているからです。
築40年の古い実家を兄弟で共有している。
不動産会社に査定を依頼したら自分の持分の評価額が300万円程度だった。
「売却して賃貸に住んでも、数年以内に使い切ってしまう可能性が高い」ということで、生活保護の申請が通った。
②売却ができない
売却ができないとは、他の共有者の同意が得られない場合のことです。
共有不動産全体を売却するには他の共有者全員の同意と、民法251条で規定されています。
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
そのため、同意が得られない場合は、活用できない資産に該当するため、受給できる可能性があります。
③他の共有者が居住している
自分以外の共有者が不動産に居住している場合のことです。
他の共有者が住んでいる不動産全体を勝手に売却することはできません。
ですが、この場合でも、自分の持分だけを買取業者などの第三者(買取業者など)に売却できると、民法206条で規定されています。
所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
- 持分だけだと安い金額でしか売れない
- 売却後に共有者が家を退去することになる可能性が高い
持分だけだと、本来の30%~50%の価格にしかなりません。
>>共有持分の売却相場は市場価格より30~50%低い!3つの理由と事例
持分を買取業者に売却したら、残りの持分を買取業者が買取ろうとするため、住処を失う可能性が高いです。
>>共有持分の買取業者の目的はなんですか?A.利益を得ることです。
共有名義の不動産があると生活保護がNGな3つのケース
- 不動産の価値が高い場合
- 賃貸収入がある場合
- 売却可能な場合
ご案内します。
①不動産の価値が高い場合
共有持分を売却すると数百万円~数千万円になるぐらい、価値が高い場合のことです。
この場合は、持分を売却すれば当面の生活費を確保できると判断されるため、受給は認められません。
例えば、都心の一等地にあるマンションの共有持分の評価額が2,500万円ある場合、「まず売却してください」と指導される可能性が高いです。
その金額の基準は、福祉事務所によって異なります。
②賃貸収入がある場合
共有不動産を賃貸に出していて、家賃が入ってくる場合のことです。
この場合は次のようになります。
- 家賃収入が最低生活費を上回るなら申請しても通らない
- 下回るなら不足分だけが支給される
例えば、共有不動産から月7万円の賃貸収入があり、自分の持分が2分の1の場合、月3.5万円の収入がある状態ですので、その分、減額されるということです。
兄弟2人で共有している実家を賃貸に出しています。
月の賃貸収入は24万円で、持分は2分の1のため、各々に月12万円の収入があります。
弟が生活保護を申請したが、次の理由で生活保護の受給は認められなかった。
- 月10万円の賃貸収入がある(最低生活費を上回る)
③売却可能な場合
他の共有者の同意が得られ、不動産全体の売却ができる場合のことです。
この場合は、売却して得た現金を生活費に充てるように指導されます。
売却代金によって一定期間生活できると判断されるなら、生活保護は停止または廃止となることがあります。
例えば、持分が2分の1で、5,000万円で売却できるなら、いろいろ差し引いても2,000万円近くになりますので、生活保護の継続はできません。
生活保護受給中に共有不動産を相続した場合の注意点
- 相続発生時に報告がある
- 相続放棄できない
それぞれご案内します。
相続発生時に報告がある
生活保護受給中に相続が発生した場合、福祉事務所への報告する必要があります。
理由は、生活保護法で「収入や資産に変更があった場合は、速やかに報告しなければならない」と、生活保護法第61条で定められているからです。
-
被保護者は、収入、支出その他生計の状況について変動があつたとき、又は居住地若しくは世帯の構成に異動があつたときは、すみやかに、保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならない。
報告しないと、保護費の返還や受給停止になる可能性があります。
報告のタイミングと必要書類は次の通りです。
- 報告期限…相続を知った日から14日以内
- 必要書類…登記簿謄本、固定資産評価証明書など
仮に親が亡くなって実家を相続したら、知った日から14日以内に福祉事務所に報告し、登記簿謄本や固定資産評価証明書をご提出ください。
もし過ぎてしまったら、すぐに電話してください。
親が亡くなり、実家(評価額:1,200万円)を兄弟で共有名義で均等に相続した。
生活保護を受給している弟が、相続を知った日から14日以内に福祉事務所に報告した。
福祉事務所は次のことから、受給の継続の判断をした。
- 兄は実家に住み続けるため、売却の同意が得られない
- 持分だけを売却しても200万~300万(1年程度)
相続放棄できない
相続放棄とは、亡くなった人(被相続人)の財産を一切引き継がないように手続きのことです。
生活保護受給中は、相続放棄は原則として認められません。
理由は、生活保護制度には「活用できる資産がある場合は、まずそれを生活費に充てなければならない」と生活保護法第四条に規定されているからです。
-
保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。
本来もらえるはずの資産を放棄したなら、国のお金を利用することはできないということです。
生活保護受給中に共有不動産を売却する4つの方法
- 処分価値が高い
- 売却可能と判断された
- 居住していない
このような場合は、福祉事務所から売却を指導される可能性が高いです。
売却する方法は4つあります。
| 売却方法 | 内容 |
|---|---|
| 共有不動産全体を売却する | 共有者全員が同意して不動産全体を売却し、売却代金を持分割合に応じて分配する |
| 共有持分を共有者に売却する | 自分の持分を他の共有者に売却する |
| 共有持分を第三者に売却する | 自分の持分を買取業者などの第三者に売却する |
| 共有物分割請求をする | 共有者間の協議や裁判手続きによって共有状態の解消をする |
いずれの方法も、本人の状況(体調・能力・現実性)を踏まえて、福祉事務所が判断します。
それぞれご案内していきます。
【方法①】共有不動産全体を売却する
共有者全員の同意を得て不動産全体を売却し、その売却益を、持分に応じて分配します。
例えば、兄弟3人の共有名義で、均等の割合で相続した実家(評価額が3,000万円)があり、全員の同意を得て売却し、1,000万円ずつ分配するといったことです。
この場合の手順は次の通りです。
- 他の共有者と話し合い、売却に同意を得る
- 不動産会社に査定を依頼する
- 売買契約を結ぶ
- 決済・引き渡し
【方法②】共有持分を共有者に売却する
自分の持分だけを他の共有者に売却する方法のことです。
共有持分は自分の財産で、自由に処分できることが、民法206条で規定されています。
身内が援助しなくても、持分を買い取ることはできます。
手順は次の通りです。
- 他の共有者に売却の意向を伝える
- 価格交渉をする
- 売買契約を結ぶ
- 決済・登記手続き
この場合は、適正な価格で売却できますが、共有者が
共有持分を第三者に売却する
共有者以外の第三者(買取業者や投資家など)に持分を売却する方法のことです。
自分の持分だけなら、他の共有者の同意なしで売却できます。
ただし、不動産全体を売却するよりも買取価格は相場の30%~50%ほど低くなります。
例えば、評価額4,000万円の不動産の2分の1の持分を買取業者に売却する場合、2,000万円ではなく、600万円〜1,000万円程度になるということです。
この場合の手順は次の通りです。
- 共有持分の買取専門業者に査定を依頼する
- 買取価格の提示を受ける
- 売買契約を結ぶ
- 決済・登記手続き
共有物分割請求をする
共有物分割請求とは、他の共有者の同意が得られない場合に、共有状態の解消を求める手続きです。
生活保護を継続・受給するには、活用できる資産を生活費に充てる必要があります。
共有不動産を現金化したくても、相手が同意してくれない場合に、この手続きを行って、不動産を換金することがあります。
手順は次の通りです。
- 当事者同士で話し合う(協議する)
- 裁判所に共有物分割請求訴訟する
例えば、評価額5,000万円の土地を兄弟2人で均等に共有したが、1人が売却に反対しているため、訴訟をし、裁判所の決定に従って2,500万円ずつにわけるといったことです。
このようにまとまった現金が入る場合は、「資力がある」とと判断され、生活保護は受給できませんが、そのお金が無くなったら再申請することができます。
生活保護受給中に共有不動産を売却する際の3つの注意点
- 売却代金は収入認定される)
- 事前に福祉事務所へ相談・報告が必須
- 売却後の保護費への影響を確認
詳しくご案内します。
【注意点①】売却代金は収入認定される
共有名義の不動産の売却代金は収入とみなされ、その収入があった期間に受け取った保護費を返す必要があることが、生活保護法63条で規定されています。
被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたときは、保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して、すみやかに、その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。
収入とみなされる期間は「相続が発生したとき(被相続人が亡くなったとき)」からですので、その期間に受け取った保護費を返すことになります。
3年前から生活保護を受給していた。
今年の2月に相続が発生し、その3か月後の5月に不動産を売却して800万円を受け取った。
2月〜5月までに受給した36万円を返納し、残りの金額で生活していくことになった。
【注意点②】事前に福祉事務所へ相談・報告が必須
共有不動産を売却する前に、必ず福祉事務所に相談・報告する必要があります。
無断で売却すると、不正受給とみなされ、保護費の返還や受給停止になる可能性があります。
特に「意図的に隠していた」と判断されると、受け取った保護費の返還に加えて、最大40%の加算金が上乗せされます。
例えば、福祉事務所に相談せずに共有持分を300万円で売却し、その事実を報告せずにいて後で発覚すると、不正受給とみなされ、これまで受給した保護費の返還と加算金を求められる可能性があります。
【注意点③】売却後の保護費への影響を確認
売却したら、保護がどのように変わるのかを事前に確認しておく必要があります。
理由は、売却代金が多額の場合、一定期間、生活保護が支給されなくなる可能性があるからです。
- 廃止…6か月以内で使い切る見込みの場合
- 停止…6か月を超える場合
例えば、売却代金が1,000万円あった場合、その資金で生活できる間は保護費が支給されず、資金がなくなった時点で、再び受給申請をすることになります。
福祉事務所に「売却代金がいくらなら何か月間支給が止まるのか」「停止と廃止のどちらになるのか」を事前に確認しておいてください。
よくある質問(FAQ)
Q.共有名義の実家に住んでいても生活保護は受けられる?
受けられる可能性があります。
居住用不動産は処分価値が著しく大きくない限り保有が認められるからです。
具体的な金額は福祉事務所にご確認ください。
評価額が高い場合や売却可能と判断された場合は、売却を指導される可能性がありますん。
Q.共有名義の不動産の固定資産税は誰が払う?生活保護費から出る?
生活保護費からは原則として出ません。
理由は、住宅扶助は家賃補助であり、固定資産税は対象外だからです。
税務上は共有者全員が連帯して納税義務を負います。
例えば年間12万円・持分2分の1なら、6万円を負担することになります。
支払いが困難な場合は、市区町村の固定資産税の減免制度で、申請で減免・免除される場合があります。
生活保護受給中に土地の名義変更はできる?
できますが、必ず福祉事務所に報告する必要があります。
理由は、名義変更により資産状況が変わるため、生活保護法で報告義務が定められているからです。
例えば、親から子への名義変更(贈与)の場合、子が不動産を取得したことになり、「収入」として認定される可能性があります。
また、名義変更の理由が相続の場合も、相続発生から速やかに福祉事務所に報告する必要があります。
まとめ
共有名義の不動産があっても生活保護を受給・継続できる可能性はあります。
何かあれば必ず福祉事務所に報告し、適切な対応をしてください。
