「他の共有者の持分が競売にかけられるかも…」
「持分が競売されるどうなる?」
このように考えていませんか?
このページでは、共有持分の競売について、プロが分かりやすくご案内いたします。
目次
共有持分の競売とは?プロが分かりやすくご案内
競売(けいばい・きょうばい)とは、債務(借金)の返済が滞った場合に、債権者(金融機関など)が裁判所に申し立てて、債務者の不動産をオークション形式で売却する手続きのことです。
共有持分の競売とは、不動産全体ではなく、債務者が所有している持分だけを競売することです。

例えば、上のイラストのように、夫の6分の5の持分だけを競売にかけるということです。
共有名義の不動産全体が競売になる場合は、「共有名義の不動産全体の競売」などと呼ばれます。
例えば、夫婦が共同で住宅ローンを支払っていたが、滞納してしまった場合、最終的に共有不動産全体の競売になります。

この場合、落札後は、住む場所を失って、退去することになります。
他の共有者の持分が競売されたらどうなる?
- 買取の交渉を受ける
- 買主が敷地内を出入りする
- 家賃を請求される
- しつこい営業を受ける
- 管理・修繕が難しくなる
- 共有物分割請求訴訟を起こされる
詳しくご案内します。
①買取の交渉を受ける
競売では、共有持分などをはじめとした訳あり不動産を取り扱う業者が落札することが多いです。
業者の目的は、持分を全て買取った後、リフォームして転売することで利益を上げることです。
そのために、業者は落札後、他の共有者に「持分を買い取らせてください」と交渉をしてきます。

慣れない交渉なので焦ってしまいますが、弁護士と提携しているような業者なら、キチンとした手順を踏んできます。
- 安く買い叩こうとする
- 売主に不利な条件の契約を結ばせようとする
②買主が敷地内を出入りする
落札した買取業者などの第三者は、不動産を利用する権利を持っています。
そのため、敷地内に入っても不法侵入にはなりません。

こうした業者が敷地内を出入りする表面上の目的は、その物件の調査や確認ですが、本来の目的は持分の買取です。
その交渉に応じさせようと、次のような行動で心理的な圧力をかけきます。
- 「調査に伺います」と事前に通知する
- 建物の周りをウロウロする
- 写真を撮る、メモを取る、など
③家賃を請求される
落札した第三者が権利を主張して、持分の割合に応じた家賃を請求してくることがあります。
例えば、「あなたが住んでいるため、こちらは使用できない。その家は家賃相場で15万円相当で、こちらの持分が3分の1なので、対価として毎月5万円を支払ってほしい」といったことです。

このような場合、何らかの対処をする必要があります。
④しつこい営業を受ける
しつこい営業とは、具体的には次のようなことです。
- 毎日、早朝から深夜まで5〜回電話が来る
- アポなしで自宅や職場に訪問してくる
- とにかく帰らない、居座る
- 不安をあおる、急かせる、同情を誘う
このような営業をするのは悪質・悪質な業者です。
「考えます」など曖昧な返事をせず、「今後一切連絡しないでください」などと、きっぱりと拒否をしてください。
⑤管理・修繕が難しくなる
共有名義の不動産は、行為によっては共有者の同意が必要です。
| 行為 | 具体例 | 同意の有無 |
|---|---|---|
| 保存行為 | 修理(雨漏りなど)、清掃、相続登記など | 1人でできる(同意不要) |
| 管理行為 | 使用方法(住居など)の決定、賃貸、リフォームなど | 過半数の同意が必要 |
| 変更行為 | 不動産全体の売却・抵当権の設定、増改築、解体 | 全員の同意が必要 |
雨漏りや壁のひび割れの修理、清掃作業など、保存のためのメンテナンス作業は、単独の判断で行うことができます。
ですが、管理行為や変更行為は、勝手に行うことができません。
また「よかれ」と思ってリフォームをしたのに、次のような結果になることがあります。
- 「元に戻せ」「価値が下がったから保証しろ」とクレームが来た
- 「権利を侵害された」と訴えられた
⑥共有物分割請求訴訟を起こされる
共有物分割請求訴訟とは、裁判所に共有状態の分割方法を決めてもらう法的な手続きのことです。
分割方法は次の通りです。
- 現物分割…不動産そのものを物理的に分ける
- 代償分割…1人が不動産を取得し、他の共有者に代償金を支払う
- 換価分割(かんかぶんかつ)…不動産を売却(任意売却、競売)して、代金を分ける
最も多い判決は、競売での換価分割による現金化です。
ご案内した通り、競売で落札した買取業者の目的は、全ての持分を買取り、リフォームした後に売却することです。
そのために、他の共有者と買取の交渉を行います。
ですが、交渉をしていて、(買取ができないな…)と判断できるようなケースがあります。

このうな場合、買取業者は訴訟を起こします。
競売による分割後は、今まで住んでいた場合は退去することになります。
不動産を手放すことになりますので、売却や賃貸化を計画していた場合は実行できなくなります。
共有名義の不動産が競売になる4つのケース
- 住宅ローンを滞納した
- 持分で借入をして滞納した
- カードローンを滞納した
- 税金を滞納した
詳しくご案内します。
【ケース①】住宅ローンを滞納した

夫婦の共有名義の住宅ローンの種類は次の3つです。
- ペアローン
- 連帯保証型
- 連対債務型
どの種類でも、滞納すると、不動産全体が競売にかけられます。
住宅ローンの抵当権は、不動産全体にかかっているからです。
滞納が続くと、次のような流れで競売が始まります。
- 返済の遅れ
- 金融機関からの督促(1~3ヶ月)
- 一括返済の請求(3~6ヶ月)
- 保証会社による代位弁済(6〜7ヶ月)
- 債権者が裁判所に競売の申し立てをする(7〜8ヶ月)
- 競売開始決定(8〜9ヶ月)
金融機関からの督促から約6〜10ヶ月で競売開始の決定が下されます。
競売決定後の流れは次の通りです。
- 裁判所の執行官が不動産を調査する(1〜2ヶ月)
- 不動産鑑定士が不動産の鑑定評価をする
- 裁判所が不動産の売却基準額を決める(2〜4ヶ月)
- 入札を開始する(3〜6ヶ月)
- 落札者が決定する(4〜7ヶ月)
- 落札者が代金を納付する(4〜9ヶ月)
競売開始決定から代金納付までは、約4〜8ヶ月です。
それまでに何かしらの手を打たないと、落札されてしまします。
なお、競売をしても住宅ローンを完済できない場合は、返済をし続けることになります。
【ケース②】持分で借入をして滞納した
持分で借入するとは、共有持分だけを担保にして不動産担保ローンを利用するということです。

共有持分だけなら自由に売却できるように、持分だけで不動産担保ローンを利用することができます。
例えば、三人兄弟の共有名義で実家を相続し、次男が自分の持分を担保にして融資を受けることができるということです。
この場合は、借り入れをしている人の共有持分だけが競売の対象です。
返済が滞ると、金融機関は、最終的に担保にしている持分を競売にかけて、現金化をして回収します。
【ケース③】カードローンを滞納した

この場合は、カードローンを利用している人の共有持分だけが競売の対象です。
例えば、夫婦で共有名義にしている住居があり、夫がカードローンを滞納した場合、夫の持分が競売の対象になるということです。
カードローンの返済が滞ると、金融機関は、最終的に利用者の持分を競売にかけて、現金化をして回収します。
【ケース④】税金を滞納した
税金滞納の回収は、競売ではなく公売(こうばい)という形で行われます。
公売とは、国や市区町村が、税金などの滞納に対して、差押えをした財産を売却して回収するための手続きのことで、競売と同じくオークション形式で売却します。
- 納付期限の経過(滞納発生)
- 市区町村からの督促
- 財産調査
- 不動産の差押え
- 公売開始決定
公売開始まで、約6か月〜1年程度です。
滞納額の大きさや自治体の方針などで、異なります。
競売前にできる4つの回避法
- 共有者の持分を買取る
- 任意売却をする
- 他の共有者の債務を肩代わりする
- 債権者に競売の取り下げの交渉をする
詳しくご案内します。
【方法①】共有者の持分を買取る
自分が他の共有者の持分を買取り、その代金を借金(住宅ローン、カードローンなど)の返済に充ててもらう方法です。
メリットは、買取る側が持分を増やせることです。
デメリットは買取る側に資金が必要なことです。
資金に余裕がある方でないとできません。
【方法②】任意売却をする
任意売却とは、住宅ローンの滞納などで債務不履行の恐れがある場合に、競売の前に、債権者(金融機関など)の同意を得て、不動産を市場で売却する方法のことです。
競売と任意売却の違いは次の通りです。
| 項目 | 競売 | 任意売却 |
|---|---|---|
| 売却価格 | 市場価格の30%~70% | 市場価格に近い価格 |
| 情報公開 | 公開(近所に知られる) | 非公開 |
| 引っ越し費用 | 自己負担 | 交渉の余地あり |
| 退去日 | 退去日までに強制退去 | 交渉次第 |
任意売却のメリットは、競売よりも売却額が高いことです。
例えば、市場価格5,000万円の不動産の場合、競売の場合は1,500万~3,500万円ですが、任意売却なら5,000万円程度で売却できるということです。
デメリットは、不動産全体を売る場合、共有者全員の同意が必要なことです。
夫婦の共有名義の不動産があり、住宅ローンや不動産担保ローンを返済できないような状況では、夫婦間の関係は悪化して、冷静なコミュニケーションを取るのが困難なことが多いです。
競売になる前に、専門のサービスを利用することをご検討ください。
【方法③】他の共有者の債務を肩代わりする
借金をしている共有者の債務を、代わりに返済するという方法です。
メリットはありませんが、持分の権利関係を維持することができます。
デメリットは次の通りです。
- 資金が必要
- 肩代わりした金額を回収できる保証がない
もし代わりに返済する場合、必ずその共有者とは借用書を交わしてください。
債権者や他の共有者とのやり取りをする上での具体的な行動などについては、詳しい弁護士にご相談ください。
【方法④】債権者に競売の取り下げの交渉をする
競売になっても取り下げを交渉することはできます。
そのために必要なのは次の行為です。
- 残債を一括返済する
- 任意売却をする
現実的には任意売却をすることになります。
共有持分が競売にかけられたときの3つの対処法
- 共有持分を買取業者に売却する
- 落札した第三者に持分を売却する
- 自分が競売で落札する
詳しくご案内します。
【対処法①】共有持分を買取業者に売却する
自分の所有している持分だけを、専門の業者に売却するということです。
他の共有者の同意や許可など、一切不要で売却できることが、民法206条で規定されています。
ただし、一般的な不動産会社では対応していませんので、専門の業者を探す必要があります。
- 早く売りたい方は、専門の買取業者へ売却する
- 少しでも高く売りたい方は、専門の仲介業者に依頼する
この方法のデメリットは市場価格より安くなることです。
共有持分の売却価格の相場は市場価格の30%~50%です。
例えば、7,000万円の共有不動産のうち、所有している持分2分の1を売却しても、3,500万円ではなく、1,050万円~1,750万円になるということです。
詳しくはこちらの「共有持分の買取のメリットや相場、流れ、業者を選ぶ方法などを解説」でご案内していますので、ご一読ください。
【対処法②】落札した第三者に持分を売却する
競売で落札した第三者は、ほとんどの場合、買取業者です。
業者の目的は、全ての持分を買い取って、リフォームして売却することです。
業者は市場価格よりも安い金額(30%~50%)で交渉をしてきます。
しっかりとした業者なら、相場の30%~50%で交渉をしてきますが、もし悪質・悪徳な業者だった場合、その価格よりもさらに安い金額で買い叩いてこようとします。
例えば、7,000万円の共有不動産のうち、所有している持分2分の1を売却しても、30%の1,050万円以下の金額を提示されることがあるということです。
業者とやり取りしていて「おかしい」と思ったら、自分の持分だけをまともな業者に売却することをご検討ください。
当協会でも買取することができますので、お気軽にご連絡ください。
【対処法③】自分が競売で落札する
競売に参加して落札するという方法です。
競売物件は、BIT(不動産競売物件情報サイト)というサイトで公開されています。

入札は、物件所在地を管轄する地方裁判所の執行官室で直接行うか、郵送で行います。
メリットは次の通りです。
- 第三者の介入を防ぐことができる
- 持分割合を増やせる
デメリットは、落札するための資金が必要なことです。
まとめ
共有持分の競売について、他の共有者の持分が競売された場合に起こること、4つの回避策、3つの対処法をご案内しました。
持分が競売にかけられる際にお役立てください。
