「夫婦で共有名義にすると、どんなメリットがあるの?」
「相続で共有名義になった場合のメリットは?」
このように考えていませんか?
この記事では共有名義のメリット・デメリットを相続と夫婦別に、プロが分かりやすくご案内しています。
目次
相続で共有名義にする3つのメリット
相続で共有名義にするとは、不動産を複数の相続人が共有名義で所有することです。
この場合のメリットは3つあります。
- 公平な遺産分割ができる
- 不動産の維持費・管理費を分担できる
- 将来、節税できる
詳しくご案内します。
【メリット①】公平な遺産分割ができる
公平な遺産分割とは、相続人それぞれが不公平だと感じないように遺産を適正な方法で分け合うことです。
不動産は、物理的に分割できませんが、持分という割合で分割できます。
適正な方法は次の通りです。
- 遺言通りに分ける…財産の分け方などを法的に残す意思表示に沿って分けること(最優先)
- 法定相続に分ける…民法で定められた相続人とその順位、相続分にそって遺産を相続すること
- 遺産分割協議で分ける…遺産を、相続人全員でどのように分けるかを話し合い、合意すること
法律にもとづいて公平に分ければ、納得感があり、誰か一人だけが得をしたり、損をしたりす状況を避けられます。
-
父と母、兄弟2人で済んでいたが、父が亡くなった。
遺言がないことが分かったので、母と2人兄弟で実家を共有名義で相続することにした。
一旦、法定相続通りに母が2分の1、兄弟が4分の1ずつの持分で分けることを仮置きし、その後、遺産分割を行い合意を得て登記した。
ただし、揉めてまとまらなければ裁判所で調停・審判で遺産を分割します。
【メリット②】不動産の維持費・管理費を分担できる
不動産の維持費・管理費とは、固定資産税や修繕費のことです。
分担できるのは、共有割合に応じて費用負担を分けるという民法253条の規定があるからです。
-
各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う
例えば、年間20万円の固定資産税がかかる物件を4人で共有すれば、一人あたり5万円の負担で済みます。
【メリット③】将来、節税できる
理由は不動産を売却する際、共有者全員が「居住用財産の3000万円特別控除」を適用できるからです。
画像引用)国税庁「マイホームを売ったときの特例」
例えば、兄弟2人で共有している自宅を売却した場合、最大で合計6,000万円(3,000万円×2人)の特別控除を受けられます。
相続で共有名義にする5つのデメリット
- 売却に全員の同意が必要
- 管理や維持費の負担割合で揉める
- 代を重ねると権利関係が複雑化する
- 共有持分が勝手に売却される可能性がある
- 不動産の放置で資産価値が下がる
詳しくご案内します。
【デメリット①】売却や活用に全員の同意が必要
共有名義の不動産を売却したり、賃貸したりする場合は、共有者全員の同意が必要です。
理由は民法251条で「共有物の変更には共有者全員の同意が必要」と、定められているからです。
-
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
例えば、3人兄弟で相続した実家があり、固定資産税を払っている兄が「売却したい」と考えていても、1人でも反対すれば売却できません。
建物の改築・増築、駐車場や倉庫、分筆などの物理的・法的性質の変更をする場合は、全員の同意が必要です。
【デメリット②】管理や維持費の負担割合で揉める
固定資産税や修繕費用などは持分割合に応じて負担します。
ですが、負担割合をめぐって、共有者間で揉めることがあります。
「お金がない」「自分は住んでいない」などと支払いを拒否する人が出てくることがあるからです。
例えば、3人兄弟で共有している実家があり、末の弟が住んでいて、長男が代表して固定資産税を払っているようなケースでは揉めやすいです。
【デメリット③】代を重ねると権利関係が複雑化する
理由は共有者が亡くなると、持分が相続人(子どもや孫など)に分割されるからです。
例えば、兄弟3人で3分の1ずつ共有していた不動産があり、長男が亡くなった場合、長男の持分3分1を長男の配偶者や子どもで相続します。
さらに残りの兄弟の子供や次の世代に持分が細分化されると、売却などの意思決定が困難になります。
【デメリット④】共有持分が勝手に売却される可能性がある
民法206条で、自分の持分だけなら他の共有者の同意がなくても自由に第三者へ売却できると規定されています。
-
所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する
例えば、兄と弟で不動産を共有している場合、弟が勝手に自分の持分の2分の1を買取業者に売却するといったことができます。
勝手に売却されれば、信頼関係が崩れますし、その後、買取業者との交渉が始まります。
【デメリット⑤】不動産の放置で資産価値が下がる
共有者同士の合意が取れずに管理や修繕が放置されると、建物が老朽化し資産価値が下がることがあります。
例えば、修繕されずに10年以上放置された空き家に雨漏りやシロアリ被害があれば、建物は劣化して、建物の資産価値は下がります。
夫婦で共有名義にする5つのメリット
相続で共有名義にするとは、不動産を夫婦2人でお金を出し合って購入することです。
この場合のメリットは5つあります。
- 住宅ローン控除を夫婦で受けられる
- 高額な住宅ローンを組みやすい
- 売却時の特別控除が2人分適用される
- 相続時に節税できる
- 離婚時に勝手に家全体を売却できない
詳しくご案内します。
【メリット①】住宅ローン控除を夫婦で受けられる
夫婦それぞれが住宅ローン控除を利用できるからです。
-
自宅を購入時に借りた住宅ローンの年末残高の一定割合を、所得税や住民税から差し引ける制度
例えば、夫が3,000万円、妻が2,000万円のペアローンを組んだとき、単独名義なら最大21万円の控除ですが共有名義なら夫婦合わせて最大42万円の控除を受けられます。
【メリット②】高額な住宅ローンを組みやすい
理由は夫婦の収入を合算して審査を受けられるからです。
2人分の返済能力があるため、借入可能額が増えます。
例えば、夫の年収500万円・妻の年収400万円の場合、単独では4,000万円が上限だったとしても、ペアローンなら6,000万円前後まで借入できます。
【メリット③】売却時の特別控除を夫婦で受けられる
理由は譲渡所得(売却益)から最高3,000万円まで控除できる「居住用財産の3,000万円特別控除」が共有者にも適応されるからです。
画像引用)国税庁「マイホームを売ったときの特例」
例えば、夫婦で2分1ずつ共有しているマイホームを売却し4,000万円の譲渡益が出た場合、2,000万円ずつの譲渡益が出ますが、夫婦2人とも3,000万円の控除を受けられるため、譲渡税は発生しません。
- 夫…譲渡益(2,000万円)-控除(3,000万円)=譲渡所得0円 ←非課税
- 妻…夫…譲渡益(2,000万円)-控除(3,000万円)=譲渡所得0円 ←非課税
【メリット④】相続時に節税できる
理由は、相続時の課税評価額を抑えられるからです。
例えば、評価額6,000万円の不動産を夫婦で夫が3分2,妻が3分の1ずつ共有していた場合、夫が亡くなった際に相続税の対象となるのは夫の持分である4,000万円分だけです。
もし、夫の単独名義だった場合は5,000万円が相続税の対象です。
【メリット⑤】離婚時に勝手に家全体を売却できない
理由は不動産の売却には共有者全員の同意が必要だからです。
夫が単独名義の自宅に妻と子どもが住んでいる状況で離婚した場合、夫の判断だけで家を売却される可能性があります。
ですが、共有名義なら同意なしに売却されることはありません。
ただし、住宅ローンを監視している場合は、自分の持分だけなら売却できます。
夫婦で共有名義にする5つのデメリット
- 住宅ローンの諸用費が2人分かかる
- 離婚後も連帯保証人の関係が続く
- 相続手続きが複雑になる
- 贈与税が発生する可能性がある
- 売却する際は配偶者の同意が必要
それぞれご案内します。
【デメリット①】住宅ローンの諸用費が2人分かかる
ペアローンは夫と妻がそれぞれ別々の住宅ローン契約を結ぶため、契約書に貼る印紙税や金融機関に支払う事務手数料などが契約の数だけ必要になるからです。
例えば、印紙税が1契約につき2万円かかる場合、単独名義なら2万円で済むところ、ペアローンなら2人分で4万円が必要になります。
【デメリット②】離婚後も連帯保証人の関係が続く
理由は夫婦で住宅ローンを組んだ場合、返済義務は双方にあるからです。
例えば、夫がローンの返済を滞納した場合、離婚した元妻であっても残債の返済を求められます。
より詳しくはこちらの「共同名義の住宅ローン、離婚したらどうなる?」でご案内しています。
【デメリット③】相続手続きが複雑になる
理由は亡くなった方の持分に対して、その相続人(配偶者、子どもなど)全員で遺産分割協議を行う必要が生じるからです。
- 遺産分割協議…
例えば、夫の持分2分の1を妻や子供でどのように相続するのか、遺産分割協議が必要です。
さらに子どもが複数いれば、持分がさらに細分化されて権利関係が複雑になります。
【デメリット④】贈与税が発生する可能性がある
理由は持分割合と出資割合が一致していないと、みなし贈与とみなされ税金がかかるからです。
例えば、5,000万円の住宅を夫が全額負担したのに持分を夫婦2分の1ずつにすると、妻に2,500万円の贈与があったとみなされ贈与税が発生します。
参考)国税庁No.4411「共働きの夫婦が住宅を買ったとき」
【デメリット⑤】売却する際は配偶者の同意が必要
理由は前述の通り、不動産全体を売却するには共有者全員の合意が必要だからです。
例えば離婚時に、夫が売却したいと考えても妻が住み続けたいと言えば、売却できません。
ただし、自分の持分だけなら自由に売却できます。
共有名義を変更・処分・解消する方法
変更(民法251条) | 共有物の性質・形状を変える行為で、共有者全員の同意が必要 |
---|---|
処分(民法251条) | 所有権を移転したり、消滅させたり、制限したりする行為 |
解消(民法256条( | 共有状態を解消して、各共有者が単独所有、または共有物を換価して権利を清算する手続き |
変更について
変更とは次のようなことです。
- 壁を取り壊しての増築
- 間取りの大幅変更
- 2階部分の増築
- 耐震補強に伴う柱や梁の大幅な改修
これらには全員の同意が必要です。
処分について
行為 | 必要な同意について |
---|---|
共有不動産全体を売却する | 全員の同意が必要 |
不動産担保ローンを利用する | 全員の同意が必要 |
持分だけを売却する | 同意不要、自分だけの判断でできる |
持分だけを贈与する | 同意不要、自分だけの判断でできる |
持分だけを放棄する | 同意不要、自分だけの判断でできる |
持分だけで不動産担保ローンを利用する | 同意不要、自分だけの判断でできる |
遺産分割協議で共有名義にする | 相続人全員の同意が必要 |
財産分与をする (離婚時に夫婦間で財産を分ける手続き) |
夫婦双方の合意が必要 |
遺産分割協議とは、相続が発生したときに法定相続人全員が集まって遺産の分け方を話し合う手続きのことです。
遺言書がない場合や遺言書に問題がある場合に行われます。
財産分与とは、夫婦が結婚の最中に築いた財産を離婚時に清算し、公平に分配する制度のことです。
解消について
方法 | 概要 |
---|---|
現物分割 | 共有物を物理的に分けて、各共有者が単独所有にする方法 |
代償分割 | 共有者が共有物を取得する代わりに、他の共有者に金銭などで代償を支払う方法 |
換価分割(競売) | 共有物を売却(市場売却または競売)して得た代金を、持分割合に応じて分配する方法 |
共有物分割請求訴訟 | 共有者間で合意できない場合に、裁判所に分割を請求し、裁判所が分割方法を決定する |
共有物分割請求訴訟は和解で終了することが多いです。
共有名義を売却する場合の業者の選び方
チェック項目 | 概要 |
---|---|
専門分野 | 共有持分を専門にしている会社を選ぶ |
買取方法 | 早く売却したいなら買取業者、利益優先なら仲介業者 |
買取速度 | 現金化までの速度を確認する |
買取実績 | 何件の実績があるのかを確認する |
口コミ・評判 | 実際の利用者のコメントで評判を確認する |
士業との提携 | 弁護士や司法書士、税理士などとの提携の有無 |
接客態度 | 親切・丁寧に対応してくれるかどうか |
共有名義の不動産を売却する場合の業者の選び方は上記の通りです。
共有名義の不動産を売却するなら、買取実績が豊富で弁護士や司法書士などと提携している業者をお選びください。
詳しい買取業者の選び方は「共有名義のマンションを売却する3つの方法の売却先を選ぶ7つのポイント」をご覧ください。
共有持分の相談ができる買取業者5社
- 共有持分支援協会
- 大正ハウジング
- 中央プロパティ
- 蒼悠
- 共有持分売却窓口
共有持分支援協会
共有持分支援協会は、共有持分の問題解決に特化した専門団体です。
弁護士や司法書士と連携し売却をサポートします。
買取のほか、仲介も可能です。
24時間無料相談を受付しています。
買取方法 | 仲介、買取 |
---|---|
売却日数 | 最短2日 |
専門家の在籍 | 弁護士・司法書士・税理士 |
対応エリア | 全国 |
その他 | 手付金(最短翌日)・持分の一部買取、持分のリースバック |
大正ハウジング
共有持分の買取業者です。
全国対応で無料査定を行っています。
弁護士や会計士と連携しています。
センチュリー21加盟店です。
買取方法 | 買取 |
---|---|
売却日数 | 最短1週間 |
専門家の在籍 | 弁護士 |
対応エリア | 全国 |
中央プロパティ
共有持分の仲介業者です。
最短5日で現金化しています。
弁護士や行政書士とも連携しています。
センチュリー21加盟店です。
買取方法 | 仲介 |
---|---|
売却日数 | 最短5日 |
専門家の在籍 | 弁護士・司法書士・税理士 |
対応エリア | 全国 |
その他 | AI×鑑定士のダブル査定 |
蒼悠
共有持分の買取業者です。
最短3日で現金化できます。
全国対応しています。
相談実績が5000件以上あります。
買取方法 | 買取 |
---|---|
売却日数 | 最短3日 |
専門家の在籍 | 弁護士 |
対応エリア | 全国 |
共有持分売却窓口
共有持分の買取業者です。
累計1万件以上の買取実績があります。
大阪や京都など関西エリアに対応しています。
LINEによる相談ができます。
買取方法 | 買取 |
---|---|
売却日数 | 最短2日 |
専門家の在籍 | 弁護士・司法書士・税理士 |
対応エリア | 大阪・京都・兵庫・沖縄 |