共有名義での相続登記とは?手順や費用を解説

「共有名義で相続登記って何?手順は?」
「共有名義の相続登記の前に注意点などを知っておきたい」

このように考えていませんか?

この記事では、共有名義での相続登記についてプロが分かりやすく解説します。

この記事の作成者

専門相談員 康原 工偉智Koichi Yasuhara

共有持分支援協会の代表相談員
大阪府出身。プロ野球選手を夢見て、名門PL学園から亜細亜大学に進学。度重なるケガでプロの夢を諦めるも、大手不動産会社に就職。持ち前のバイタリティで営業成績もトップクラスを誇る。共有持分を買取る投資家、不動産業者とのパイプも太い。

共有名義での相続登記とは?

共有名義とは、1つの不動産を複数人の名義で所有していることです。

不動産を複数人で相続した場合、相続人が共有名義で相続登記をする必要があります。

共有する割合は「共有持分」と呼ばれ、民法の定めている「法定相続分」か、相続人同士の話合いの「遺産分割協議」で決定します。

相続登記を行う理由

相続登記を行う理由
  1. 不動産の名義を現状に沿った正しい状態にするため
  2. 不動産の売却や担保の設定ができるようにするため
  3. 相続人同士でトラブルにならないようにするため
  4. 2024年4月から義務化されているため

主な理由は、法的な紛争・トラブルが発生するのを予防するためです。

2024年4月から相続登記が義務化されたため、相続人が相続開始を知った日から3年以内に登記申請をしなければならず、期限を過ぎてしまうと罰則の対象となってしまいます。

相続登記をしないとどうなるか?

  • 不動産の権利関係が不明確になる
  • 不動産の売却や賃貸などの運用ができなくなる
  • 相続人同士でのトラブルが発生しやすくなる

権利関係が不明確な状態では、売却や賃貸などの運用ができず、相続人同士でトラブルが起きやすいです。

共有名義の相続登記を行う手順と書類、費用

共有名義の相続登記を行う場合の手順・書類・費用をご案内します。

相続登記の手順

手順 概要
①相続人の確定する 亡くなった方の戸籍謄本を取り寄せて確認する
②遺産分割・共有持分を決める 相続人全員で遺産分割協議を行う
③必要な書類を準備する 戸籍謄本や遺産分割協議書など(詳細は後述)
④登記申請書を作成する
⑤法務局に書類を提出する
⑥登記が完了する

相続した不動産を共有名義で相続登記する手順は、上記の通りです。

司法書士に相続登記を依頼すれば、全てを代理してくれます。

必要な書類

亡くなった方の戸籍謄本 生まれてから亡くなるまでのすべて
亡くなった方の住民票の除票 最終住所を確認する必要があるため
相続人の戸籍謄本 相続人の全員分が必要
相続人の印鑑証明書 遺産分割協議書に実印を押印するから
固定資産評価証明書 登録免許税の計算に必要
遺言書 ある場合に必要
遺産分割協議書 共有の持分の記載と、全員の署名・実印押印が必要
相続登記申請書 法務局に提出
委任状 司法書士に依頼する場合に必要

共有名義で相続登記をする際に必要な書類は、上記の通りです。

遺産分割協議書の他は、市区町村の役場や法務局で入手できるものが多いです。

不備があると、登記申請が受理されず手続きが止まり、登記完了までに数週間かかることがあります。

発生する費用

費用 概要
登録免許税 不動産の固定資産評価額の0.4%
各種書類の取得費用 5,000~10,000円程度になることが多い

共有名義での相続登記を自力で行う場合の費用は上記の通りです。

相続登記の手続を司法書士に依頼する場合、登録免許税・書類取得費用に加えて、5~15万円程度の依頼費用がかかります。

共有名義で相続登記することによる4つのメリット

4つのメリット
  1. 話合いを先送りできる
  2. 手続きが比較的スムーズに進
  3. 公平に遺産を分割できる
  4. 相続登記の期限に間に合わせられる

それぞれ詳しくご案内します。

【メリット①】話合いを先送りできる

先送りにできる内容は、相続不動産の売却・運用・処分です。

先送りできる理由は、一旦相続登記をするので、罰則を気にせずにじっくりと不動産の活用についての話し合いができるからです。

【メリット②】手続が比較的スムーズに進む

単独名義での登記と比べると、全員を登記の名義人として一度で申請できるからです。

手続や必要書類はすでにご案内した通りです。

例えば、遺産分割協議書の作成の際にも、各相続人の持分割合を記載するだけで済み、手続きがスムーズに進みます。

【メリット③】公平に遺産を分割できる

公平にできる理由は、不動産ごとに単独名義とするよりも、所有持分が数字で明確になり平等感があるからです。

例えば、すべての不動産について、4人の相続人でそれぞれ4分の1の持分とすると公平な遺産分割ができます。

【メリット④】相続登記の期限に間に合わせられる

相続登記の期限は、相続人が相続開始を知ってから3年以内です。

期限に間に合わせられる理由は、遺産分割や処分方法を話し合わずに先送りにして相続登記を行うことができるからです。

例えば、共有持分を一旦平等に設定して相続登記をすると、3年以内という期限を気にせずに話し合えます。

共有名義で相続登記することによる6つのデメリット

6つのデメリット
  1. 不動産の活用に制限がある
  2. 持分を勝手に売却されることがある
  3. 不動産担保融資を断られることがある
  4. 各種負担を巡ってトラブルになりやすい
  5. 相続が重なると共有者が増える
  6. 共有関係の解消に費用がかかる

詳しくご案内します。

【デメリット①】不動産の活用に制限がある

共有不動産を貸す・売るなどの活用するには、共有者の同意が必要になることがあるからです。

例えば、共有者の1人でも売却などに反対すると、不動産全体の売却はできません。

対策は、活用方法を話し合いであらかじめ決めておき、合意書を作成することです。

相続人同士の話し合いが進まない場合は、弁護士などの専門家にご相談ください。

【デメリット②】持分を勝手に売却されることがある

自分の持分だけなら、他の共有者の同意が不要で自由に売却できるからです。

勝手に売却されると、将来的に活用しようと計画していてもできなくなってしまいます。

対策は、相続人同士で話し合って、その内容を合意書にまとめておくことです。

【デメリット③】不動産担保融資を断られることがある

自分が持っている持分だけでは、銀行の不動産担保ローンの審査に非常に通りづらいです。

理由は、持分だけだと資産としての価値が低いからです。

対策は、持分だけの融資に対応している会社を見つけることです。

【デメリット④】各種負担を巡ってトラブルになりやすい

不動産を所有すると、固定資産税や修繕などの負担が発生します。

「自分は利用していないのに負担したくない」といった理由で負担を拒否する人が出てくることがあります。

対策は、共有持分の割合に応じて負担するなどといったルールを決め、書面にしておくことです。

【デメリット⑤】相続が重なると共有者が増える

理由は、共有名義の不動産で相続が発生すると、相続する人数分、共有者が増えるからです。

すると次のようなことが起こります

  • 各者への連絡に時間や手間がかかる
  • 連絡が付かない人が出てくる
  • 揉めごとが起こりやすくなる

対策は、遺産分割協議で単独名義に変更しておくことです。

【デメリット⑥】共有関係の解消に費用がかかる

最初から単独名義にしておけば発生しなかったお金が発生するからです。

解消方法は、5つあります。

方法 概要 必要になる費用
①自分の持分だけを売却する 持分を第三者に売る方法 不動産の仲介手数料など
②代償分割を行う 1人が単独相続し他に現金を払う方法 登録免許税など
③換価分割を行う 不動産を現金化して分ける方法 仲介手数料など
④分筆(現物分割)する 土地を分けて単独名義で登記する 測量費用など
⑤共有物分割請求訴訟 裁判所が分割方法を決める 訴訟費用・弁護士費用など

対策はこの後ご案内します。

相続登記で共有名義になった不動産を解消する5つの方法

5つの方法
  1. 自分の持分だけを売却する
  2. 代償分割を行う
  3. 換価分割を行う
  4. 分筆(現物分割)する
  5. 共有物分割請求訴訟

詳しくご案内します。

【方法①】自分の持分だけを売却する

相続人の1人が自分の持分を、他の相続人や第三者に売却する方法です。

例えば、持分を買い取ってくれる会社に依頼して、土地の4分の1を売却します。

メリットは、他の相続人の合意なしで自分の持分を速やかに現金化できることです。

デメリットは、売却額が相場より安くなってしまうことです。

【方法②】代償分割を行う

共有する不動産を特定の相続人が単独で取得をして、その代わりに代償金(現金)を支払う方法です。

例えば、長男が土地・建物を単独で相続登記して、他の相続人に相続分に応じたお金を支払います。

メリットは、1人が単独所有するので管理・利用がしやすいことです。

デメリットは、代償金を準備できる人がいないとできないことです。

【方法③】換価分割を行う

共有する不動産を売却して現金化して、売買代金を持分の割合に応じて分ける方法です。

例えば、4人の相続人全員が合意のもとで、土地を1000万円で売り、1人250万円ずつ分配します。

メリットは、相続人全員に平等に分割しやすいことです。

デメリットは、相続不動産に住んでいる人が不利益を被ってしまうことです。

【方法④】分筆(現物分割)する

土地を分けて各相続人が単独名義で切り分けられた不動産を所有する方法です。

例えば、土地を4等分して、4人の相続人がそれぞれ単独登記を行います。

メリットは、将来の共有者同士のトラブルなどを防げることです。

デメリットは、分筆の費用が100万円以上かかってしまいかねないことです。

【方法⑤】共有物分割請求訴訟

裁判所が「代償分割」「換価分割」「現物分割」のどれかの分割方法を決める方法です。

例えば、裁判所が換価分割が適当だと判断して、不動産を売却して代金を各相続人に割り振ります。

メリットは、相続人間で合意できなくても、裁判所が強制的に解決ができることです。

デメリットは、訴訟費用・弁護士費用などが高額になってしまうことです。

共有名義での相続登記についてのまとめ

実際に共有名義の相続登記をする場合に、お役立てください。

共有名義にはデメリットがありますので、事前にどうするかをご検討ください。