「共有名義の固定資産税、誰がいくら払うの?」
「共有名義の固定資産税を支払わないと、どうなる?」
このように考えていませんか?
このページでは、共有名義の固定資産税について、プロが分かりやすくご案内しています。
目次
共有名義の固定資産税は誰が支払うの?など基本を解説
- 法律上の納税義務者
- 共有者が負担する金額
- 納税額が確定するタイミング
- 実際に支払う人
- 代表者は変更可能
- 支払時期
- 支払わない人への対処
❶法律上の納税義務者
法律上は、共有者全員が納税義務者(連帯納税義務)です。
例えば、夫婦でお金を出し合って購入した共有名義のマンションの納税者は、夫と妻です。
相続で母と3人の兄弟の共有名義で相続した戸建の納税者は、母と兄弟全員です。
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共有物、共同使用物、共同事業、共同事業により生じた物件又は共同行為に対する地方団体の徴収金は、納税者が連帯して納付する義務を負う。
❷共有者が負担する金額
持分の割合によって負担する金額が異なります。
例えば、固定資産税が年間30万円で共有者が3名いて、持分割合が均等(3分の1ずつ)の場合は、各共有者が10万円ずつ負担するということです。
固定資産税の金額は納税通知書に記載されています。
基本的に「固定資産税評価額×1.4%」という計算式で算出されます。
「計算が合わないな…」と思われたら、自治体にご確認ください。
❸納税額が確定するタイミング
固定資産税の負担額が確定するタイミングは、持分割合が決まった時点です。
具体的には次のタイミングです。
- 相続の遺産分割協議で持分割合が決まったタイミング
- 夫婦で住み家を購入する場合は負担額が決まったタイミング
❶相続の遺産分割協議で持分割合が決まったタイミング
遺産分割協議で持分割合が決まったら、その時点で、翌年からの固定資産税の負担義務が確定します。
例えば、2026年3月に父親が亡くなり、2026年4月に遺産分割協議で「長男の持分が3分の2、次男は3分の1」と決めた場合、翌年(2027年)の1月1日以降の固定資産税はその割合で負担することになります。
❷夫婦で住み家を購入する場合は負担額
購入時点で、登記した持分割合がそのまま固定資産税の負担割合になります。
例えば、夫が2,000万円、妻が1,000万円を出資して3,000万円の住宅を購入した場合、持分は夫3分の2、妻3分の1で登記し、固定資産税もその割合で負担します。
❹実際に支払う人
納税通知書は、共有者全員の中から選ばれた代表者に送付されます。
通知書を受け取った代表者がまとめて支払った後、他の共有者から回収します。
❺代表者は変更可能
変更する場合は、市区町村の税務課に「固定資産税納税義務者代表者変更届」を提出します。
- 現在の代表者が亡くなった
- 代表者が納税を拒否している
- その他の理由で代表者を交代したい
❻支払時期
年4回の分割払いか一括払いをします。
年4回の時期は自治体によって異なりますが、例えば東京23区の場合は、次の通りです。
- 第1期が6月
- 第2期が9月
- 第3期が12月
- 第4期が翌年2月
納税通知書は毎年4月~6月頃に届きますが、届いた時点で一括払いを選択することもできます。
❼支払わない人への対処
代わりに支払った共有者は「求償権」を行使できます。
求償権とは、代わりに支払った税金を相手に請求する権利のことです。
具体的な手続きは次の通りです。
- 内容証明郵便で支払いを請求する
- それでも支払われない場合は少額訴訟か通常の訴訟をする
少額訴訟とは60万円以下の請求のことです。
より詳しくはこちらの「固定資産税を共有者が払わない理由と対策」でご案内していますので、ご覧になってみてください。
共有者が固定資産税を払わないと財産が差し押さえられる!
差し押さえとは、納税者が税金を支払わない場合に、自治体が強制的に財産を確保し、その財産を売却して税金に充てる手続きのことです。
固定資産税を滞納すると、最終的には財産が差し押さえられます。
そのステップは次の通りです。
- 督促状が送られる
- 延滞金が発生する
- 納付の催告が行われる
- 差し押さえられる
❶督促状が送られる
督促状とは、納期限を過ぎても納税されていない場合に、自治体から送付される、支払いを促す通知書のことです。
期限までに支払わないと、納期限から20日以内に送付されます。
❷延滞金が発生する
督促状が届いた時点で、すでに延滞金の計算が始まっています。
2024年の税率金の税率は次の通りです。
- 納期限の翌日から1ヶ月以内は年2.4%程度
- 1ヶ月を超えると年8.7%程度
❸納付の催告が行われる
催告とは、督促状でも納税しない人に対して、自治体が固定資産税の支払いを促すことです。
催告の方法は次の通りです。
- 催告書が送られる
- 電話で納付を促される
- 自宅を訪問される
❹財産の差し押さえ
差し押さえとは、納税者が税金を支払わない場合に、自治体が強制的に財産を確保する手続きのことです。
差し押さえられた財産は、換金されて滞納している税金に充てられます。
督促状の発送から10日を経過した後、自治体は差し押さえができるようになります。
差し押さえの対象となる財産は次の通りです。
- 不動産(共有持分)
- 給与
- 預金口座
不動産は公売(オークションによる落札)されます。
給与は全額ではなく、生活に必要な最低限の金額は保護されます。
銀行の口座が差し押さえられると、生活費の引き出しができなくなります。
場合によっては住んでいる家から出て行かなければいけなくなります。
厳しいかもしれませんが、必ずお支払いください。
なお、公売後は、買主が、他の共有者の持分を買取る交渉をします。
新たな共有者の目的は、全ての持分を購入してリフォームして売却することだからです。
詳しくはこちらの「共有持分の買取業者の目的はなんですか?」でご確認ください。
トラブルを避けるために、合わせて「共有持分が競売にかけられるとどうなる?」もご覧ください。
共有者が固定資産税に関する8つのトラブル事例と対処法
- かたくなに支払わない
- 支払う人が使ってしまった
- 支払う人が持ち逃げした
- 差し押さえられた
- 共有者が行方不明
- 共有者が死亡
- 共有者が認知症
- 共有者が変わっていた
❶かたくなに支払わない
「住んでいないから払わない」「不動産を使っていないから関係ない」といった理由で支払いを拒むケースです
例えば、3人兄弟で相続した実家に長男だけが住んでいる場合、次男と三男が「自分は住んでいないから払わない」と言い出し、催促しても対応しないといったことです。
長男は求償権を行使して次男と三男に請求できますが、実際には回収はできないことがほとんどです。
有効な対策は次の通りです。
- 自分の持分だけを売却する
- 不動産全体を売却して売却益を分配する
詳しくはこちらの「共有持分の売却方法は5つ!」をご覧ください。
❷支払う人が使ってしまった
納税資金を預かっていた代表者が支払わずに、私的に使い込んでしまうことがあります。
例えば、4人兄弟で相続した不動産の代表者の長男が、次男・三男・四男から固定資産税の負担分を集めたが、納付せずに自分の生活費に使ってしまったというケースです。
督促状や催告は代表者である長男に送られるため、他の3人は使い込みに気づかず、気づいたときには差し押さえ寸前ということがあります。
対処法は、まずは自治体に連絡し、滞納分を支払って差し押さえを回避した後、代表者を変更することです。
先ほどもご案内した通り、公売後は競売と同様に、買主(買取業者など)が、他の共有者の持分を買取る交渉を持ちかけてきます。
詳しくはこちらの「共有持分が競売にかけられるとどうなる?」でご確認ください。
❸支払う人が持ち逃げした
納税資金を預かっていた代表者が支払わずに持ち逃げすることがあります。
例えば、共有者3人がそれぞれ10万円ずつ代表者に預け、代表者が30万円をまとめて納付する予定だったところ、代表者が音信不通になるといったことです。
この場合も、気づいたときには差し押さえ寸前ということがあります。
❹差し押さえられた
固定資産税を滞納すると、共有不動産全体が差し押さえられ、公売にかけられることがあります。
例えば、代表者が一括で支払うと思っていたのに、行方不明になり、督促や催告が来ているのに気づかないといった場合です。
不動産が知らぬ間に公売にかけられ、落札されて、いつの間にか所有権を失っているといったことが起こりえます。
代表者が行方不明になった時点で、すぐに警察に連絡し、自治体に相談して、代表者変更の手続きをして、お支払いください。
❺共有者が行方不明
例えば、親から相続した不動産を3人兄弟で共有していたところ、三男が突然音信不通になり、三男の負担分(年10万円)が徴収できなくなるといったことです。
共有者の一人が行方不明の場合、残りの共有者で負担をします。
❻共有者が死亡
共有者の一人が亡くなった場合は、その相続人が新たな納税義務者になります。
相続人が納税に協力的でない場合、問題が複雑化します。
例えば、3人兄弟の共有名義の実家があり、住んでいた長男が亡くなったら、2人の兄弟と相続をした長男の家族(配偶者や子供)が納税者になるのですが、長男の家族は「引越しをしますので、支払いません」というケースです。
この場合、まずは自治体に連絡をして、代表者を変更して支払うか、2人の兄弟で支払いをします。
その後の対処法は次の通りです。
- 遺産分割協議をして持分を決定する
- 不動産全体を売却して売却益を分配する
- 自分の持分だけを売却する
より詳しくはこちらの「共有物分割請求訴訟とは?」でご案内しています。
❼共有者が認知症
認知症になり、判断能力が低下すると本人の預金口座から引き出すこともできず、手続きが滞ります。
例えば、高齢の母と娘が共有している不動産で、母が認知症を発症し、母の負担分(年15万円)を母の口座から引き出せなくなるといったことです。
母の財産から回収するには成年後見人を選任する必要があり、その手続きに数ヶ月かかります。
利用するには、本人の住所を管轄する家庭裁判所に申立てます。
この場合の対策は次の通りです。
- 一時的に立て替えて支払う
- 成年後見制度を利用する
- 自治体に分割納付を相談する
❽共有者が変わっていた
知らない間に共有者の一人が自分の持分を第三者に売却しており、見知らぬ買主(買取業者など)が突然共有者になることがあります。
例えば、兄弟2人で共有していた不動産があったが、弟が自分の持分2分の1を買取業者に知らない間に売却してしまったというケースです。
新たな共有者の目的は、全ての持分を購入してリフォームして売却することです。
対処法は次の通りです。
- 固定資産税の支払いについて共有者と話し合う
- 自分の持分を買取業者に売却する
交渉が手間なら自分の持分を売却することをご検討ください。
共有名義の固定資産税を払いたくない場合の6つの解決策
- 共有持分の専門買取業者に売る
- 不動産全体を売却する
- 賃貸に出して収益を得る
- 共有者に持分を売る
- 共有物分割協議をする
- 共有物分割請求訴訟をする
❶共有持分の専門買取業者に売る
自分の持分だけを専門の買取業者に売却する方法です。
他の共有者の同意なく売却できるため、最も早く解決できます。
ただし、持分のみの売却の場合、相場は市場価格の30%~50%です。
例えば、5,000万円の共有名義の不動産の持分2分の1を売却する場合、2,500万円ではなく、750万円~1,250万円になるということです。
❷不動産全体を売却する
共有者全員の同意を得て不動産全体を売却し、売却代金を持分割合に応じて分配する方法です。
全員が固定資産税の負担から解放され、現金を得られます。
ただし、売却に反対する人が1人でもいる場合は売却できません。
❸賃貸に出して収益を得る
共有者の同意を得て不動産を賃貸に出し、賃料収入から固定資産税を支払う方法です。
固定資産税を賃料収入で相殺できます。
この場合、賃貸管理の手間や空室リスク、修繕などの、賃貸経営のリスクが発生します。
❹共有者に持分を売る
他の共有者に自分の持分を買い取ってもらう方法です。
市場価格に近い金額で売却できます。
ただし、共有者に相応の資金がある必要がありますし、価格交渉で揉めることがあります。
❺共有物分割協議をする
共有物分割協議とは、共有者全員で話し合い、共有状態を解消する方法を決める協議のことです。
分割方法は、次の3つです。
- 現物分割…土地を物理的に分ける
- 代償分割…一人が取得して他の共有者に金銭を支払う
- 換価分割(かんかぶんかつ)…不動産を売却して代金を分ける
共有者全員の合意が必要です。
訴訟については、この後ご眼内します。
❻共有物分割請求訴訟をする
共有物分割請求訴訟とは、裁判所に共有物分割を請求してもらうことです。
共有者間での話し合い(共有物分割協議)が決裂した場合の最終手段です。
裁判所は、先ほどご案内した3つの分割方法(現物分割、代償分割、換価分割)の中から、状況に応じた判決を下します。
この場合は、弁護士費用や時間がかかります。
より詳しくはこちらの「共有物分割請求訴訟とは?」でご確認ください。
当協会でも買取りをしております。
ご相談は無料ですので、お気軽にご相談ください。
共有名義の固定資産税についてのQ&A
- Q.夫婦共有名義の固定資産税はどうなりますか?
- Q.固定資産税の共有名義で代表者を変更するには?
- Q.支払いの負担を軽くする方法はありますか?
Q.夫婦共有名義の固定資産税はどうなりますか?
代表者(通常は筆頭名義人)に納税通知書が送られます。
こちらの「共有名義の固定資産税は誰が支払うの?など基本を解説」で、基本的な内容をご確認いただけます。
Q.固定資産税の共有名義で代表者を変更するには?
変更手続きは無料で、通常1〜2週間程度で完了します。
Q.支払いの負担を軽くする方法はありますか?
- 共有者間の話し合いで負担割合を変える
- 軽減措置を活用する
- 不動産を賃貸に出して賃料収入で賄う
法律上は持分割合に応じた負担が原則ですが、共有者間の話し合い(特約)で、持分割合とは異なる負担割合を決めることができます。
軽減措置とは、住宅用地の特例や新築住宅の減額などのことです。
申請が必要な軽減措置もあるため、市区町村の税務課にお問い合わせください。
まとめ
共有名義の固定資産税について、基本とトラブル事例などをご案内しました。
不動産を所有している限り、固定資産税の納税は必須ですので、適切な対処をなさってください。
