「共有不動産を売却するのに委任状が必要と言われた」
「委任状の正しい書き方を知りたい」
「ひな形があればほしい」
このように考えていませんか?
この記事では、共有名義不動産の売却で必要な委任状について、プロが分かりやすく解説しています。
目次
共有名義不動産の売却で使う委任状とは?必要なケースは?
委任状とは、特定の法律行為を代理人に任せることを証明する書面のことのことです。
- 共有者が遠方(海外含む)に住んでいる
- 共有者が高齢・病気・障害などで外出が難しい
- 仕事の都合でスケジュール>共有者が調整できない
委任状が必要な理由は、民法251条で共有名義の不動産を売却するには、共有者全員の同意が必要と規定されているからです。
-
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
そのため、売買契約の締結や決済といった重要な手続きには、原則として共有者全員が立ち会うことになります。

ですが、現実には立ち会えない人もいますので、その場合は代理人への委任状で対応できるということです。
もし、病気や障害などで自分で作成できない場合は、代筆で作成することができます。
代筆についてはこちらの「委任状を作成するときの5つの注意点」でご確認いただけます。
共有不動産の売却で利用する委任状の書き方【ひな形付】
委任状には決まった書式はありませんが、記載が必要な項目はおおよそ決まっています。
項目に漏れや曖昧な表現があると、売却手続きが進まない可能性がありますので、次の項目を順番にご確認ください。
- タイトルと前文
- 受任者(代理人)の住所・氏名
- 売買代金・違約金等
- 不動産の表示
- 委任する事項
- 委任状の有効期限
- 委任した日付・署名・押印
順番にご案内します。
タイトルと前文
書類の冒頭中央に「委任状」と明記します。

タイトルで、何の書類か判別するためです。
その直下に、前文を書きます。

- 冒頭文
- 委任の趣旨
- 趣旨文
とも言います。
受任者(代理人)の住所・氏名
続いて手続きを代行する受任者の情報を記載します。

住所は住民票と同一のもの、氏名は戸籍上の正確な表記でご記載ください。
不動産の表示

対象物件の情報を、登記事項証明書の記載通りに転記します。
登記事項証明書とは、法務局が発行する不動産の登記内容を証明する書類のことです。
必ず原本を手元に置き、確認しながらご記載ください。
記載内容が登記簿と一致していない場合、登記申請が受理されません。

売買条件

売却条件を具体的に記載します。
理由は、代理人が独断で売却価格を変更するリスクがあるからです。
引渡日が公租公課の起算日ですので、わざわざ記載する必要はありません。
委任する事項

受任者に委任する権限の範囲を、具体的に記載します。
範囲が曖昧だと、代理人が手続きを進められないケースがあるからです。
- 売買契約の締結
- 売買代金の受領
- 所有権移転登記
委任状の有効期限

委任状の有効期限を記載する理由は、売却完了後も委任状が有効な状態になり、不正使用されるリスクがあるからです。
目安は、売却手続きの完了予定日から数カ月程度です。
委任した日付・委任者の署名・押印

最後に、委任した日付と委任者(代理を依頼する本人)を記載します。
押印は市区町村に登録した印鑑実印を使用し、印鑑登録証明書を添付します。
認印では委任状の効力が認められない可能性があります。
こちらをベースに自作してもお使いいただけます。
共有名義不動産の売却で委任状を作成するときの5つの注意点
- 共有者の関係性による違いは無い
- 安易に捨印を押さない
- 「以下余白」と記載する
- 委任状は認知症だと無効になる
- 病気や障害の場合は代筆OK
順番にご案内します。
【注意点①】共有者の関係性による違いは無い
共有者の関係性(兄弟・親子・夫婦)によって、委任状の記載内容に違いはありません。
関係者によって次の個所が変わるだけです。
- 受任者(代理人)の住所・氏名

- 委任者の住所・氏名

不動産の情報や権限の範囲・売却金額などの項目は、関係性に関わらず同じ内容を記載します。
【注意点②】安易に捨印を押さない
捨印とは、書類の余白に事前に押印しておくことで、後から訂正印として使えるようにするものです。

代理人が委任者に無断で内容を書き換えられる状態になりますので、安易に押さないようにしてください。
不安な場合は弁護士や司法書士にご相談ください。
【注意点③】「以下余白」と記載する
委任状の記載が終わったら、文末に「以下余白」と書き加えてください。

第三者が後から文章を追記・改ざんすることを防ぐためです。
【注意点④】委任状は認知症だと無効になる
認知症が進行した状態ではて意思能力がないと判断されるからです。
意思能力とは、自分がしている行為の内容を理解・判断できる力のことです。
この場合は、家庭裁判所で成年後見人を選任し、後見人が代理で手続きを進める必要があります。
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判断能力が低下した人に代わって、財産管理や法律行為を行う代理人のこと
成年後見制度の申立てから選任まで数カ月かかることがありますので、それを踏まえて契約をお進めください。
- 1人でも売却に反対する共有者がいる
- 委任者が途中で売却の意思を撤回した
- 手続きの途中で共有者が死亡し、相続が発生した
【注意点⑤】病気や障害の場合は代筆OK
代筆する場合は次の内容を委任状に明記してください。
- 自署できない理由
- 作成した文書を依頼人に読み聞かせた旨
- 代筆者の住所・氏名・押印
- 依頼人の押印

代筆用の委任状のひな形は「委任状_代筆用」からDL(ダウンロード)していただけます。
本人確認が厳格で、司法書士による本人面談や公正証書化が必要になることがあります。
委任状を利用して共有名義不動産を売却する7つの流れ
- 共有名義人と持分割合を確認・整理する
- 共有名義人全員から売却の同意を得る
- 他の共有者から委任状を取得する
- 不動産会社を選び媒介契約を締結する
- 買主との売買契約を結ぶ
- 決済・物件引き渡しを完了させる
- 確定申告・納税を行う
順番にご案内します。
【流れ①】共有名義人と持分割合を確認・整理する
登記事項証明書を取得し、共有名義人と持分割合をご確認ください。
持分の割合は、登記事項証明書の「権利部(甲区)(所有権に関する事項)」に記載されています。
相続が重なっているケースでは、知らない間に共有者が変わっていることがあります。
登記事項証明書は委任状の作成でも必要になるため、この段階で取得しておくとスムーズです。
登記事項証明書は法務局で取得できます。

最寄りの法務局はこちらの法務局の公式サイト「管轄のご案内」でご確認いただけます。
【流れ②】共有名義人全員から売却の同意を得る
共有名義不動産を売却するには、共有者全員の同意が必要です。
1人でも反対する共有者がいると、物件全体の売却は成立しません。
同意が取れたら、口頭だけでなく書面(同意書)で残しておいてください。
【流れ③】他の共有者から委任状を取得する
売却手続きに立ち会えない共有者がいる場合、代表者に渡す委任状を作成します。
次の流れで進めます。
- 代理人(代表者)を決める
- 委任する内容・権限の範囲・売却条件を決める
- 必要書類を集める
- 委任状を作成し、委任者が署名・実印で押印する
必要な書類は次の通りです。
| 書類 | ポイント |
|---|---|
| 委任者の印鑑登録証明書 | 発行から3カ月以内のもの |
| 委任者の本人確認書類 | 運転免許証・マイナンバーカードなど |
| 対象不動産の登記済権利証または登記識別情報 | 法務局で取得 |
| 固定資産税納税通知書 | 毎年4月〜6月に届く ※無い場合は市町村の窓口で取得 |
なお、登記手続き用と売買契約用で委任状が別々に必要な場合がありますので、不動産会社や司法書士に事前にご確認ください。
【流れ④】不動産会社を選び媒介契約を締結する
不動産会社に査定を依頼します。
なお、媒介契約は3種類あります。
| 種類 | 概要 |
|---|---|
| 一般媒介契約 | 複数の不動産会社と同時に契約できる |
| 専任媒介契約 | ・1社のみと契約 ・自分で買主を探すことは可能 |
| 専属専任媒介契約 | ・1社のみと契約 ・その会社が仲介した買主にしか売却できない |
不動産会社ごとに全員の署名と押印が必要ですので、手間の面から、専任媒介契約を検討するのが一般的です。
【流れ⑤】買主との売買契約を結ぶ
買主が決まり、売却条件に双方が合意したら売買契約を締結します。
代理人を立てている場合、代理人が契約の場に立ち会い、委任状の原本を提示します。
【流れ⑥】決済・物件引き渡しを完了させる
売買契約から通常1〜3カ月後に、残代金の受け取りと物件の引き渡しを行います。
決済の場には司法書士が同席し、買主への所有権移転登記の手続きを同日に行います。
抵当権抹消登記は司法書士に依頼することが多いです。
費用は1〜2万円程度です。
【流れ⑦】確定申告・納税を行う
売却で利益が出た場合、翌年に確定申告を行い、納税する必要があります。
次の計算式でご確認ください。
- 譲渡所得=売却価格 - 取得費用(購入価格-減価償却費) - 売却費用
各共有者が個別に計算し、申告をします。
計算結果がゼロまたはマイナスで、控除の特例を使わない場合、確定申告は不要です。
納税義務は代理人ではなく委任者本人にあります。
確定申告の期間は、売却した翌年の2月16日〜3月15日です。
まとめ
共有名義不動産の売却で委任状を作成する際は、権限の範囲や売却条件を具体的に記載し、捨印や改ざん対策など注意点を守って作成してください。
作成に不安がある場合や、共有者に認知症の方がいる場合は、司法書士や弁護士などの専門家にご相談ください。


